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静かな夜に響くのは
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
指令のない夜の食後のひととき。
温かみのあるオレンジ色の明かりに包まれたリビングには、ゆるやかな時間が流れていた。
一言で「明かり」と言ってしまえばそれまでだが、この家の優秀な執事であるゴンザはこういったところにも決して手を抜かない。
食事の時間には料理がおいしそうに見える明かりを、そして、食後には心落ち着かせるような明かりを選んでいるのだ。
そうすることで、日々闘いに明け暮れる主人が少しでも寛げるようにと心を配っているのである。
その気配りのお陰だろう。
ソファに座る鋼牙は長い足をゆったりと組み、ひじ掛けに肘を預けて、とてもリラックスした様子で革の表紙の古めかしい書物を読んでいた。
ふんわりとした光がつくる睫の影が鋼牙の顔に柔らかい陰影をつけ、なんとも美しい絵のようだった。
空調を切って開けられた窓からは涼やかな風が流れ込み、レースのカーテンを揺らしている。
そして、B.G.M.には秋の虫の声。
その音色に混じって、サラサラと何かがこすれるような軽やかな音が聞こえていた。
その出処(でどころ)は、というと… 鋼牙のいる場所から少し離れたところに陣取ったカオルが、スケッチブックに鉛筆を走らせている音だった。
カオルが
「ちょっとスケッチさせてもらってもいい?」
と聞くときには、決まって
「俺はいいモデルにはなれんぞ」
と言う鋼牙だったが、
「いいから、いいから…
鋼牙は気にしないでフツウにしていてくれればいいんだよ」
とカオルは笑っていた。
そんなことが何度もあるうちに、次第に鋼牙のほうも気にしないようになって現在に至っているのだ。
今夜もそんな、ふたりにとっては何の変哲もない夜だった。
さて。
とあるページを読み終わった鋼牙が、ページを1枚めくろうとしたとき、
ヒック…
と、急に奇妙な音が聞こえてきた。
(ん?)
思わず鋼牙は眉をひそめる。
気を取り直して書物に集中しようとするのだが、
…ヒック …ヒック
と規則的にその音が聞こえて続けるではないか。
さすがに、これでは書物に集中できない。
鋼牙は書物を膝に置いてカオルのほうに顔を向けてみると、カオルは口元を手で押さえて申し訳なさそうな顔をしている。
「大丈夫か?」
溜め息交じりにそう問われて、それに答えようとしたカオルが、
「うん、ちょっと、しゃっくりが出ちゃ …ヒック!」
と、しゃっくりで答えを遮られてしまった。
ちょうどそのときリビングに入ってきたゴンザが、
「おや? カオル様、しゃっくりですか?」
と声をかけた。
「そうなの。急に出るよ… ック… になっちゃって…」
困り顔のカオルはしゃっくりをしながら答える。
「それでは、こういうのはどうでしょう。
しゃっくりが出るのに合わせて、こう、唾を飲み込むのは?」
ゴンザは唾を飲み込むフリをしながら言った。
「唾を飲み込むのね?」
カオルはしゃっくりが出るのを見計らうようにして、大仰に唾を飲んでみた。
そうして、しゃっくりが止まったのかじっと様子を窺う。
しばらく何事もなく時間が過ぎて、カオルとゴンザは笑顔で顔を見合った瞬間!
ヒック!
止まったと思ったしゃっくりでカオルの身体はビクンと跳ね上がり、結果的にはゴンザとは落胆の表情を交わすことになってしまった。
すると、ゴンザがまた何かを思い出したように表情を明るくさせた。
「確かお水を飲むのも、しゃっくりを止めるにはよかったかと…
ただいま、すぐにお持ちいたしますね?」
と言うと、あたふたとリビングを出ていった。
(ゴンザさんが水を取りに行くより、あたしがキッチンまで行った方がいいかも…)
そう思ったカオルが、
「ゴンザさん、待っ…ック…」
と椅子から立ち上がり、ドアのほうへ2~3歩行きかけたが、すでにゴンザの姿がドアの向こうに消えてしまっていた。
足を止めたカオルは、溜め息をつきながら、
(それじゃ、ここで待ってよう…)
と振り返ってみたところ、カオルは驚いて立ち止まった。
目の前に鋼牙が迫っていたのだ。
「ど、どうしたの?」
戸惑うカオル。
だが、そんな彼女にお構いなしに鋼牙はカオルに迫り続け、とうとう壁際まで追い詰められてしまった。
トンッ
カオルの背中は壁に当たって、これ以上後ろには下がれない。
そうこうするうちにも、鋼牙の顔がどんどんカオルに近づいてきた。
(なに、なに? なんなの?)
ドキドキしながらカオルは鋼牙の出方を窺う。
すると、鋼牙の両手が、カオルの両頬を挟むようにして添えられた。
(キ、キスされちゃう!)
驚きつつも期待でカオルの胸がドキドキする。
…と、そのとき、信じられないことが起こった。
スポッ
耳に妙な感触を感じたと思ったら、急に周囲の音が聴き取りづらくなった。
それもそのはずで、鋼牙の指がカオルの両耳に突っ込まれていたのだ。
(えっ? ええっ?)
驚きのあまり目を大きく見開いたカオルだったが、目の前の鋼牙がひどく真剣な表情をしているので、抵抗することなく(仮に、抵抗しようにも、力の差は歴然だったが)されるままにしていた。
そのまま、何をすることもなく1分ほど経った後、ようやくカオルの耳から指が抜かれ、カオルは解放された。
「どうしたの? 今のは何?」
訳が判らず、尋ねるカオル。
すると、鋼牙は質問には答えずに
「止まっただろう?」
と逆に問い返した。
「え、何が? あーっ! しゃっくり!」
思わず大声をあげたカオルだったが、しゃっくりがまったく出なくなっていることに気付いたのだった。
「なに? どういうこと?
…あ、もしかして、脅かしたってこと?」
今度は鋼牙に詰め寄るようにしてカオルが尋ねた。
女性の耳に指を突っ込むなんて、あまりに奇抜すぎて、確かにカオルは驚いたのだった。
だが、そんなカオルの勢いに少したじろぎ気味の鋼牙は、
「耳に指を入れると止まるらしい…」
とだけ言った。
(ほんとに?)
鋼牙の返事に拍子抜けしたようなカオルだったが、みるみる面白いことを見つけた子どものように嬉々として言った。
「ね、それってなんかすごくない?
しゃっくりって、耳に指を突っ込むだけで止まるの? へ~っ、初めて知っちゃったぁ~!
不思議ねぇ~ どうして止まるんだろう?」
すると、そこに、水を入れたコップを手にしてゴンザが戻ってきた。
「カオル様、お水です。さあ、これを…」
そう言ってコップを差し出そうとするゴンザに、カオルは飛びつかんばかりの勢いで近寄った。
「ね、ね、ゴンザさん! しゃっくり、止まったんだよぉ~」
ゴンザは水を手にしたまま、目をきょときょとさせている。
「あのね、鋼牙がね…」
リビングの戸口で、カオルがゴンザを捕まえて勢い込んで話しているのを尻目に、鋼牙はソファに戻ってきた。
ソファの上に置かれた書物を手に取り、ソファに腰かける。
(やれやれ、これでようやく専念できるか…)
そう言うと、読みかけだったページを開いて、静かに文字を目で追い始めた。
fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
賑やかなカオルちゃんとは対照的に、寡黙で落ち着いている鋼牙さん。
ぜひぜひかっこよく想像してくださいませ。
でもねぇ~ そのカッコいい鋼牙さんが耳に指を突っ込むんですから、何とも言えず滑稽ですよね?
このしゃっくりの止め方は、selfish 自身は試したことがないのですが、今度しゃっくりが出たらやってみたいと思ってます。
できたら、鋼牙さんが指を突っ込んでくれると嬉しいんだけどな~♡
コメント
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
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