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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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ほんとのところは(2)

嗚呼!
見直しする暇がないけど、ひとまずアップします。

誤字脱字、その他言い回しなどでおかしなところがあるかもしれませんが、あしからず…

拍手[25回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

カオルは夢を見ていた。
蒸し暑くてねっとりとした汗を掻きながら、見知らぬ混沌とした地を手探りで進む夢。
息苦しくて、はあはあという自分の息遣いだけがこだまのように耳にこびりつく。
怖くて不安で泣き出したくなるような中を闇雲に進もうとして、それでもどうしてもそこから抜け出せない絶望的なものだった。





「カオル、おい! 大丈夫か?」

枕元に跪(ひざまず)いた鋼牙が、額に手を置いてカオルに呼びかけた。

夢の世界にいたカオルは、ぼんやりと目を開けて、

「こ… が…」

と名を呼んだ。

「悪い夢でも見ていたのか?
 まだ熱があるな…
 何も食べていないのだろう? 何か欲しいものはあるか?」

カオルの顔を覗き込むようにして尋ねる鋼牙。

「水を…」

そう言ってカオルはふらつきながら身体を起こそうとした。
鋼牙はすぐに背中に手を添えて助け起こすと、ベッドサイドへと視線をやった。
そこには、カオルが何を必要としてもいいように、水や果物、軽食などがゴンザによって用意されていた。
鋼牙はコップをひとつ取り上げると、水を注ぎ入れてからカオルの口元にそっと押し当てた。
彼女を支える鋼牙に身体を預け、コップを持つ鋼牙の手に重ねるように手を添えて、カオルは水を飲んだ。

  んく… んく…

ごくりごくりとカオルの喉が鳴る。
コップの半分くらいの水を一気に飲み干したカオルが、ホッとしたように息をつき、鋼牙に弱々しい笑顔を向けた。

「ありがとう… もういいわ」

鋼牙もまた少し安心したように表情を緩めた。

「何か食べられそうか?
 薬を飲まねばならんだろう?」

「そうね…

 あっ、指令のほうはどうしたの?」

心配そうな瞳で鋼牙を見る。
確か、今晩は指令が来たと言っていた。

「終わったよ。だから何も心配しなくていい」

暖かいまなざしがカオルを見つめる。

「そう… よかった…」

心底安心したカオルは、それじゃあ、とゴンザの用意したものの中から食べられそうなものを探し出すことにした。

「あ、これにする…」

そう言ってカオルが選んだのは、カスタードクリームがたっぷり詰まったクリームパン。
普段ならペロリと食べてしまえるところだが、様子を見ながら一口一口を味わうようにして少しずつ食べた。
半分くらい食べたところで、カオルは気が付いた。
鋼牙はホラー狩りで疲れているに違いない、と。

「あとはあたしひとりで大丈夫だから、鋼牙ももう休んで」

健気(けなげ)にそう言うカオルに、鋼牙は、

「いいから、気にせず食べろ」

と答えて、ゆっくり食事するカオルのそばを離れようとしなかった。
素っ気ないようでいて、カオルのことを心配している鋼牙の優しさに触れ、カオルは素直に嬉しいと感じた。
ようやく最後の一口を飲み込み、風邪薬も飲み終えたカオルは、鋼牙に手伝ってもらいながら再び布団の中へと横になる。
すると、今度は急に寂しさが襲う。
今度こそ、鋼牙は身体を休めるために自室に引き返してしまうだろう。

「鋼牙、あの… 体温計を取ってくれる?」

少し引き止めたい気持ちが、カオルにそう言わせた。
鋼牙から手渡された体温計のスイッチを入れ、脇の下に挟んだ。

「…」

ピピピッという電子音が鳴るまでの時間が長く感じる。

(ああ、このままずっと鳴らなければいいのに…)

切ない想いが胸をよぎる。
いつもはホラー相手に闘い続ける鋼牙を思いやり、待つ身の自分の寂しさをじっと我慢しているカオルだが、こんなときくらいは鋼牙にずっと… ううん、もう少しくらいそばにいて欲しいと思うのだ。
なかなか鳴りださない体温計に、ひょっとしたら、この体温計は壊れているのかもしれない、とそう思った矢先…

  ピピピッ

静寂の中に無情な音が響き渡る。
カオルはゆるゆると脇から取り出した体温計をチラリと見てから、鋼牙に手渡す。

「37.7℃か…」

少し熱が上がっている。
目にしてみると、より身体にこたえるものがある。
それに薬が効いてきたようでもある。
カオルの身体はどんどん重たくなっていくように感じた。
瞼も開けていられない。

「鋼牙…」

カオルは鋼牙の名を呼んでいた。
目尻に涙を浮かばせて、カオルは再び夢へと堕ちていく。



to be continued(3へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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