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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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ほとばしる…

ここ最近の天候不順。
このまま夏は終わるのでしょうか…

そうなると、夏のエピソードで書き残したことはないかと急に不安になってきます。
夏… 夏… 夏…

ああ!
美佳ちゃんと言えば、コレかな?




:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

セピア色に色褪せた羊皮紙。
そこには森や滝、それに道のようなものが描かれていて、どうやらどこかの地図のようだった。
その地図のところどころには、何やら文字らしきもの書き込まれている。
それは、普通の人間なら解読することはできない魔戒文字だった。

ベッドの上に長い脚を投げ出し、その地図を熱心に見ていた鋼牙は、ふと目だけをドアへと向けた。
ほどなくしてそのドアが開いたかと思うと、フローラル系の香りに、少し湿った、そして高めの温度を持った空気がふわりと入ってきた。

「ふぅ~ お風呂あがったよ~」

その言葉を聞かずとも、一目で風呂上がりだとわかる恰好のカオルが姿を見せ、鋼牙に向けて笑顔を向けた。
鋼牙は、手にしていた地図を膝の上に置いて

「ああ」

と短い返事を返し、カオルの姿に目を細めた。

洗って濡れたカオルの黒髪は頭の上にまとめられて、タオルにくるまれていた。
身に着けている淡い水色のナイトウェアは、多めにとったドレープがゆったりと身体を包み、動くたびに腰の下辺りにある裾のフリルが揺れて可愛らしい。
けれども、胸元は大きめに開いていて小さなパフスリーブからは腕が、膝上の丈のショートパンツからは脚がスラリと伸びていて、露出が多いと言えばまあ多いと言えようか…
とは言え、それでもいやらしく見えないのは、スレンダーなカオルなればこそだろう。

カオルは鋼牙の視線など気にも留めずに、真っ直ぐにドレッサーへと向かった。
鏡の前に座ると、

「あっつ~い。少しゆっくり入り過ぎちゃったかも…」

と独り言をつぶやきながら、手でパタパタと顔をあおいでいる。
確かに、こちらから丸見えになっているカオルのうなじには、うっすらと汗が浮かんでいる。
やがて、一息ついたカオルは、鏡の前に並んでいるいくつかの瓶の中から1本を選ぶと、中身を掌(てのひら)に取り、顔に押し当てた。
そうすると、カオルの二の腕の内側、つまり、普段ならあまり人目に晒(さら)されない部分が剥き出しになる。

「…」

鋼牙は無言でカオルを見つめている。

そうこうするうちに、ローションを塗り終えたカオルは、頭の上のタオルを解(ほど)いた。
ツヤツヤと濡れた黒髪が、カオルの白い肩を覆い隠す。
ワサワサと豊かな髪をタオルで拭き始めると、その動きに連動して、パフスリーブから伸びる腕の辺りがプルプルと揺れている。
そればかりではない、脇にできた隙間からは白い素肌がチラリチラリと顔を覗かせるではないか!

「…」

無言の鋼牙は、だんだん眉間に皺が寄ってくる…

カオルは鋼牙が見ていることなど気付いていない。
そして、鋼牙もまた、そんな自分をザルバが見ていることなどすっかり忘れてしまっている。

(やれやれ…)

心の中で小さく溜め息をついたザルバは、見て見ぬフリを決め込む。

「ごめん、鋼牙。
 ちょっとうるさくなるけど、いい?」

カオルはドライヤーを手にして、鏡ごしに鋼牙に視線を送った。

「…ああ、構わん」

そう言う鋼牙の返事を待って、カオルは

「うん、ごめんね」

と言うのと同時にドライヤーのスイッチをオンにする。

  ブォォォォォォォ

熱風に踊る髪…
カオルを抱き締めると香るシャンプーの匂いが部屋に充満する。

さっきまでオープンだった胸元や肩が、髪で隠された今、時折その白さを覗かせるほうがずっとずっと艶めかしく見えるのは何故だろう。





鋼牙は膝の上の地図を脇に置いた。
そして、ベッドを軋らせながらそっと立ち上がる。
一歩、一歩。
ゆっくりとした足取りだが、それははやる気持ちを落ち着かせようとする意識がそうさせていた。

ふと、カオルは近づいてきた鋼牙に気付いた。
ドライヤーを止めて振り返ろうとしたが、鋼牙に後ろから抱きすくめられてハッとする。

「…鋼牙?」

小さく名前を呼ぶと、カオルを抱く鋼牙の手にギュッと力が入った。

  きゅん♡

なんだか甘酸っぱい気持ちで一杯になるカオル。

(うん、甘酸っぱい…)

しあわせそうな笑顔を浮かべていたカオルの顔が、スッと真顔になる。

(…ん? 甘酸っぱい!?)

「甘酸っぱい」というキーワードで何かを思い出したカオルは、

「あぁぁぁぁっ!」

と絶叫するなり、ガバッと立ち上がった。
そのあまりのことに、カオルから腕を解いてしまった鋼牙はボー然とする。

「ガ◯ガリくん、買ってあるのを忘れてたぁ!」

カオルはそれだけを言うと、驚く鋼牙を置き去りにしてバタバタと部屋を出ていった。

『なんだ? どうしたんだ、カオルの奴…』

思わず呟いたザルバに、鋼牙は

「さぁ…」

と答えるしかなかった。





やがて、再び部屋に戻ってきたカオルの手にはアイスバーが握られていて、顔にはこれ以上ないと言うほどの満面の笑み。

「ねえねえ、これね、ガリ◯リ君リッチ ほとばしる青春の味っていうんだよぉ~
 初めて食べるんだけどね、どんなだろうね? 青春の味って?」

鋼牙はそれを聞いて大きな溜め息をついた。
だが、そんな鋼牙の様子も、カオルは気付かない。
なんせ、ガリガ◯君への興味、関心、期待はそれほどに強いのだ。

わくわくしながら一口ほおばると…

「いや~ん♡
 甘酸っぱいってこういうことなんだぁ~」

青リンゴのキャンディーにラムネ。
甘酸っぱいというのは、どうやらそういうことらしい。

嬉しそうにアイスをほおばるカオルを横目に、鋼牙は恨めしそうだ。

『お気の毒様、だな。
 …天下の黄金騎士がアイスごときに苦渋を舐めるとは』

くっくっくっと笑いをかみ殺しながらザルバが慰める。

「大きなお世話だ…」

鋼牙は、苦々しく、そう吐き捨てる。
こうなると、ザルバはもう楽しくて止まらない。

『ほとばしる青春の味か…
 おまえさんのほとばしるモンはどうなっちまうんだろうな? 鋼…』

ニヤニヤしながらそう言いかけたザルバが、鋼牙の顔を見てハッと言葉を飲み込む。
なぜなら、ザルバの目には、青筋が立って殺気でギラギラしている鋼牙が見えたからだった。

「ザ・ル・バぁぁぁ」


fin
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

はい、美佳ちゃんと言えば、ガリガ◯君!
…ということで、いかがでしたでしょうか?

例年、ブログにアイスを持った嬉しそうな写真が登場する夏ですが、今年はあまり見かけなかったような…
そんなわけで、ゆく夏を惜しんでアイスを絡めた妄想でした!

カオルちゃん、アイスもいいけど、鋼牙のことも… 頼むよ~

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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