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きんのまなざし ぎんのささやき

ここから(1)

朝夕、めっきり涼しくなりました。
読書の秋、芸術の秋、妄想の秋も、もうそろそろかな?
あれっ? 妄想の秋なんて、そんな秋、あるんかーい!? という声も聞こえますが…

そうですよね、妄想は一年中いつでも、でした!

まぁ、秋には全く関係ありませんが、こんな妄想はいかがでしょうか?


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炎のようにゆらゆらと黒く波打つ邪気を刀身に纏(まと)わせた剣。
ホラーはその禍々(まがまが)しい剣を自在に操り、烈花に遅いかかってきた。
流れるようなホラーの攻撃を、烈花はバツグンの反射神経と運動能力で右に左に躱(かわ)し、時には後ろに蹴り上げた靴の踵(かかと)で跳ね返し、魔導筆で受け流したりもした。

だが、いつの間にか烈花はじりじりと追い詰められていたようだ。
崩れかけた外塀まで追い詰められ、背中にドンという衝撃を感じてそれ以上下がることができなくなってしまった。

(くっ…)

烈花の顔が微かに歪む。



確かに、烈花は相手の力を甘く見ていたふしはあった。
最初のうち、ホラーは逃げ回ってばかりいたからだ。
だが、こちらの放った渾身の攻撃を何度となく躱されていくうちに、これはおかしい、と気付き始めた。

朽ちかけた洋館の庭先に追い詰めたと思ったとき、どうやら誘い込まれたのはこちらのほうだと気付いた。
野生に近い形で蔓延(はびこ)った蔓バラを背に、そのホラーは逃げるのをやめ、烈花の方にくるりと振り返った。
もう逃げ回るフリはやめたのだ。

さっきまでは低級の素体ホラーと同じ姿だった身体が変化し始める。
肩の辺りと腿(もも)の辺りの皮膚の表面に亀裂が入ったかと思うと、卵の殻でも剥がれ落ちるように皮膚が剥(む)けていく。
肩から腕にかけて筋肉が大きく隆起していった。
また、腰から腿にかけての筋肉も、まるでカンガルーの足のように、見ただけでその跳躍力の凄さが解るほどにムクムクと膨れ上がり、大きく脈打っていた。
そのくせ、ウエストや足首はギリギリまでに細く絞られていき、その様子を冷静に観察しながら、

(どうやら、こいつはパワーだけでなく俊敏性もかなりありそうだ…)

と烈花は思っていた。

案の定、その形態に変化した後の攻防は、烈花がやや不利に進められていった。
そして、今。
烈花は壁を背にして追い詰められている状況だ。
この状況は、正直言ってまずかった。
そう思っている烈花の心の内を気付いてか、ホラーのほうはあざ笑ってでもいるかのように顎をクイッと上げた。
そして、余裕たっぷりに黒い邪気を纏う剣を頭の上にかざすと無造作に振り下ろした。
それはまるで、手の中にあって逃げられない弱者をいたぶるかのように、一撃で仕留める殺気が感じられず、無造作に、何度も、何度も…

烈花はなんとかその攻撃を躱していたが、このまま壁を背にしていた体勢では自分に勝機がないこともわかっていた。

(なんとか体勢を変えないと…)

烈花は壁際からなんとかして離れようとして、自分から激しく切り込みつつホラーの攻撃の隙を突いて、大きく斜め前方に飛び込んだ。
その勢いでくるりと一回転し、ホラーの右側に躍り出る。
が、ホラーのほうもすぐさま変化に対応し、烈花の動きに合わせて剣を閃(ひらめ)かせる。
それはあわやのところで烈花の脇を掠(かす)め、返す刀で頭上へと振り下ろされた。

  ガシッ

烈花はそれを躱しきれないと判断し、筆を盾にして受け止めた。
恐らく刀身の重さだけでも相当なものなのであろう。
ホラーは少しも力を込めているようには見えなかったが、筆にはかなりの圧が加わっていた。

烈花を筆を両手でしっかりと握りしめ、その重圧に堪えていた。
が、ホラーは片方の眉を器用にも釣り上げると、やがて、じわりじわりと力を込め始めた。

「くっ…」

ブルブルと烈花の両手が震える。
額に噴きだしていた汗がツツツッと頬を流れていくのを感じる。
どんどん加えられる力に押されて、烈花は片膝をついた。
その膝に小石が食い込み、血が滲む。

(何か… 何か手はないのか…)

焦る心を必死に押し込めて、この場面を瓦解する手を懸命に考える烈花。

すると…

  ひゅんっ

風を切るような音が聞こえた。
そして、それとほぼ同時にホラーの剣が大きく揺らいだ。

どこかから飛んできた石礫(いしつぶて)が、剣の柄(つか)の先端に当たったのだ。

(今だっ!)

何が起こったのかわからずに動揺しているホラーの脇腹に目がけて、烈花は筆を突きつけ素早く小さな円を描く。

「はっ!」

威力は小さなものだが、術が発動された。

確かに、それは、術の効果としては大した効き目はないが、ホラーの動揺をさらに助長させ、隙を作るには十分なものだった。
その隙に、烈花はすっくと立ち上がると片足で立ち、筆でホラーに狙いを定める。
清らかな水飛沫が地上から一気に湧き上がって烈花を覆い隠すと、烈花の白い足がその水飛沫を大きく蹴散らすようにして円を描く。

「はぁっ!」

気合いもろとも、烈花は筆を前に勢いよく突きだす。
すると、烈花の放った波動に遅れまいとして、多数の魔戒竜の稚魚がホラーに向かって一直線に突進していく。

それに気づいたホラーは慌てて躱そうと身を翻す。だが、その頃にはもう後の祭りだ。
無数の光のようになった稚魚たちがホラーの身体を次々と突き破り、その光に焼き尽くされるようにホラーの身体は消し飛んでしまっていた。
少し離れたところにホラーの手から離れた真っ黒い剣が落ちていたが、主(あるじ)の消滅を見送った後、跡を追うようにジジジッと消えていった。

最後の一筋の黒い邪気が音もなく消えていったのを見送って、ようやく烈花はホッと息をついた。



だが、そこで安心するのは少し早かったようだ。

  ジャリ…

と背後で小石を踏む小さな音が鳴ったことで、烈花はサッと緊張し、キッと横目で睨んだ。
しかし、しばらくの間、背後の気配に集中していた烈花は、じきにその警戒を解いた。
なぜなら、そこに見知った男の気を感じたからだ。

ゆっくりと振り返る烈花。

その烈花に、ひとりの男がゆっくりと近づいてきた。



to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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