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きんのまなざし ぎんのささやき

夢見たことは

今日も暑かった!
でも、空の表情は少し秋めいていて、爽やかな風も吹いていました。

本日の妄想は、今日だから書きたいな、今日にしか書けないな、っていう感覚が強いものになりました。
それでは今宵も、拙いものではありますが、お楽しみください。どうぞ…



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北側の窓から柔らかく差し込む光の中。
イーゼルに立てかけたキャンバスに向かい、厳しい表情で絵筆を走らせていたカオルの手が止まった。
角度を変えながら描きかけの作品を何度か確認した後、少しばかり手ごたえを感じたカオルは、フッと息を吐いて筆を置いた。
時刻を確認してみると午後のお茶の時間には少し早い。
けれども、昼食後からずっと没頭していたので、一休みするにはちょうどいい頃合いだ。

(そういえば、今日は鋼牙もいるんだった…)

昼食時に、午後から書斎で何か調べ物をする、と彼が言っていたのを思い出す。
執事のゴンザが淹れてくれるおいしいお茶を、今日は一緒に楽しめるのだ。
そう考えたカオルは、思わず顔がほころぶと、軽い足取りで部屋を出ていった。



リビングに向かう前にキッチンを覗く。
広くはないが、数々ある調理器具が整然と並び、ピカピカに磨き上げられたグラスや食器が食器棚の中で、出番はまだかと待っている。
だが、そこにはゴンザの姿はなかった。

(あれ? いないなぁ…)

少し落胆したカオルは気を取り直してリビングに向かった。

「ゴ~ン~ザ~さ…
 んっ!?」

明るい調子でゴンザの名を呼びながらリビングのドアを開けたカオルは、そこで見た光景に慌てて口を閉じた。

リビングは、華美で無駄な装飾は一切なく、選び抜かれた重厚な家具たちはダークカラーで揃えられて、部屋全体に落ち着いた雰囲気を醸し出している。
昼下がりの明るい日差しを程よく遮るレースのカーテンは、秋を感じさせるような気持ちのよい風にふわりふわりと揺れていた。
カオルの目は、そのカーテンのそばにある、しっとりとした手触りの本革のソファーを凝視していた。
というのも、ソファーの隅っこにゴンザがちょこんと座って眠っているのを見たからだった。
足を揃え、手もお腹の上で組まれていてとてもお行儀がよいのに、口はだらしなく半開きになっている。

毎日毎日、鋼牙とカオルのために屋敷内を居心地よくするように努め、冴島家が有する何万冊もの書籍や品々を管理し、人間社会の中で表向きに営んでいる事業のほうにも目を光らせているこのスーパー執事の束の間の休息。
無警戒に晒されている寝顔に偶然遭遇したカオルは、ゴンザに対してグッと親近感を感じるとともに、何とも言えない幸福感を感じるのだった。

(あっ、そうだ!)

カオルは、とあることを思いつくと、ゴンザの眠りを邪魔しないようにそぉ~っとそぉ~っとドアを閉めた。



その頃…
書斎ではひときわ涼やかな風が窓から吹き込んだ。
それを機に、大きくて分厚い古めかしい書物を熱心に読んでいた鋼牙は、書籍から目を上げた。

『目的のものは見つかったか?』

鋼牙の呼吸を呼んでザルバが声を掛ける。

「まあな。
 肝心のところにはまだだが、どこを探ればいいか見当はついた。
 あとは、そこを突き詰めていけばなんとかなりそうだ」

『そうか… では、そろそろ一息いれるか?
 このところ出ずっぱりでお茶の時間を何度もすっぽかしていたからな。
 久々の家族の団欒とやらをゆっくり楽しんではどうだ?』

何やら含みを感じるザルバの様子に、言われなくてもそうする、と答えそうになった鋼牙だったが、フッと小さく吐息をつくと、

「そうだな」

と素直に返事をした。
結局のところ、鋼牙自身もカオルとのお茶の時間が楽しみでないわけでないのだ。



鋼牙が書斎を出てリビングに向かい、リビングのドアに手を伸ばしたところで、横からカオルの声がかかった。

「あっ、鋼牙! 静かに入って! そっとだよ!」

声を潜めてそう言うカオルは、お茶の用意をしたワゴンを押して足早に近づいてくる。

「ん?」

訝(いぶか)し気な鋼牙は、そばまで来たカオルに

「あのね、ゴンザさんが中でうたた寝してるの。
 だから…」

とドアの向こうを指さされて言われ、合点(がてん)がいった。



リビングのソファで、いまだ気持ちよさそうに寝ているゴンザ。
その顔にフニャ~と笑顔が広がった。もちろん、眠ったままで、だ。
きっと何かいい夢でも見ているのだろう。
鋼牙とカオルはそんなゴンザを見て、目を合わせて微笑みあった。



  カチャカチャ

食器が触れ合うような音にゴンザはハッと目を覚ました。
一番に目に入ってきたのは、ニコニコと笑顔を浮かべてこちらを見ているカオルだった。
そして、次は、こちらも穏やかな表情の鋼牙…
さぁーっとゴンザの顔から血の気が引いた。

「これは鋼牙様!
 わたくしとしたことがなんという失態を…」

慌てて立ち上がったゴンザに

「気にするな、ゴンザ…」

と鋼牙が、そしてカオルも

「そうだよ、ゴンザさん。
 お茶ならあたしが用意したんだし…」

と思いやった。
料理に関してはどう頑張っても上達しないカオルだったが、さすがに紅茶やコーヒーの類(たぐい)だけは、ゴンザの特訓のお陰でフツーに(←ここ重要!)淹れることができるようになっていた。

「ねぇ? それより、なんだかいい夢を見てたみたいだね?」

カオルはティーソーサーにカップをセットしながらゴンザに訊いた。

「え? ええ、わたくし夢を見ておりました。とてもいい夢を…」

そう言いながらゴンザはほんの少し、さっきまで見ていた夢に意識を戻した。



今、目の前にあるのと同じような冴島家の午後のひととき。
テーブルを囲んで仲良くお茶を飲む、鋼牙とカオルがいる。
そして、同じように席についている自分の膝には、小さくて温かくとても柔らかい感触の…
その小さな手に頬をペチペチと打たれながら、しあわせそうに微笑む自分の姿が思い出された。

思わず顔がほころぶゴンザに、カオルは注いだ紅茶を差し出しながら訊いてみた。

「どんな夢だったの?」

「どんな夢って。それは…」

まだ夢見心地のまま夢の内容を話しだそうとしたゴンザは、ハッと我に返って首を振った。

「いえ、駄目です。駄目です!
 ここで喋ってしまっては夢が正夢にならなくなるかもしれません!」

「えーっ! そんなにいい夢見たんだぁ?
 ほんのちょっとだけ教えてくれないの?」

そう言うカオルにゴンザは断固として言い放った。

「いいえ、こればっかりはカオル様と言えども聞き入れられません!
 わたくしの念願が叶わなくなってしまうと困りますからね」

それを聞いて、いまだにカオルは残念そうにしている。
そこで、これ以上突っ込まれないようにゴンザは話をそらそうと試みる。

「そんなことよりも、せっかくカオル様が淹れてくれたお茶です。
 冷めないうちに頂きましょう!」

鋼牙とカオルとゴンザ。
三人は同時にティーカップに口をつける。
すると…

「んん!」
「ぐっ…」

盛大に眉間に皺を作る鋼牙に、目を白黒させるゴンザ。

「カオル、いったい何を入れた?」

なんとか口の中の、とても紅茶とは思えないものを飲み込んだ鋼牙はカオルに尋ねた。
ひとり涼しい顔のカオルはそれに答える。

「え? 何って… ほら、レモンティーとかあるでしょ?
 だったら酸っぱいものなら合うんじゃないかと思って…」

その答えに、鋼牙は頭痛がするのかこめかみの辺りを手で抑える。

「で、何なんだ?」

「えっと、夏バテとか熱中症とかにいいっていうし…」

鋼牙の様子に、さすがのカオルもまずいと思ったのか声のトーンが落ちる。

「…」

もはや言葉すらなくジッと睨んで、早く言うんだ! と促されたカオルは、ようやく聞き取れるほどの小さな声で言った。

「…梅干し」



fin
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実は、本日は別のものを書こうと思っていたのですが、その執筆の前に…と公式様HPを見てみたら、なんと! 本日8月27日は蛍さんのお誕生日ではありませんかぁぁぁ!
これはもう、ゴンザさんのお話を書かないと!

…とそんなわけで、急遽、ゴンザさんで書かせていただきました。
話してしまうと正夢にならない、ということで、夢の内容を自分の胸にそっとしまうゴンザさん。
そのまま、ほんわか~ とした感じで終わればいいものを、あらら… なラストにしてしまいました。

紅茶に梅干し…
身体にはよさそうな気がしますが、マズそうですね。

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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