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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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あの人の背中(1)

初挑戦!!
なんと雷牙(大人のね!)の妄想に初挑戦なんです!!

これがねぇ~
全然慣れなくて、口調とか仕草とかひとつひとつに迷うの迷わないのって… うん、迷いっぱなしです!

そして、そして、今回の妄想は、本家公式様の設定には忠実ではありません。
雷牙×マユリのカップリングに反旗を翻すものなので(ちょっと大袈裟か)、その点に不快感を覚える方(雷牙×マユリ、ばんざ~い、という方)は、この先には進みませんようくれぐれもお願いいたします。

いいですか?
不快感や嫌悪感を覚えたら、すぐに離脱してくださいね?


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その人とは、直(じか)に闘ったことはない。
だが、並々ならぬ強さを、雷牙は感じ取っていた。

「8手後…
 私はお前の剣を防げなかった」

思念の中での闘いの結末を彼女はそう語ったけれど、実際に手合せすれば何がどのように影響するかはわからない。
思念の中では防ぎきれなかった雷牙の剣を、彼女が辛(から)くも凌ぐことができ、反対に雷牙を打ち据える結果になっていたとしても何らおかしくないのだ。
そのくらい、彼女… 媚空の力は本物だった。

闇の狩師(かりし)。
彼女はそう呼ばれる魔戒法師だ。
魔戒法師だというのに、彼女の相手はホラーではない。
闇に堕ちた魔戒騎士や法師を探り出し、その魂が救われるよう葬り去るのが彼女の役目。
同じ世界にいながらも、その役目のために誰をも信頼せず誰にも受け入れられず、忌み嫌われる存在なのだとクロウが教えてくれた。

雷牙が初めて彼女に会ったとき、その近寄りがたい雰囲気とともに、うかつに手出しするなという拒絶の意思をひたひたと感じ取ったように思えた。
きっとそれは、いくら番犬所からの指示とは言え、実力もわからない騎士の手を借りたくないからだ、と雷牙は最初のうちはそう捉えていた。
だが、どうやらそれは少し違ったらしい。

「闇に堕ちた魔戒騎士は強い。
 力が劣る者が闘えば喰われるだけ…」

媚空を舐めてかかって無様に転がされたクロウがギラギラと憎々しげに見つめるのに対して、何の感情も交えず穏やかに媚空は言った。
どうやら、闇に堕ちた魔戒騎士に敵わない者が無駄に命を散らせないように、という、彼女なりの少々荒っぽい忠告だったようだ。

もちろん、論外に「おまえは弱い」と言われた格好になったクロウにとっては、面白くないだろう。
だが、雷牙にしてみれば、彼女のことを頭から毛嫌いする気にはなれなかった。
なぜなら、媚空がマユリに対して、

「この世界を守れるのは、貴方次第だと…」

そう言って、頭を下げたのだ。
マユリと関わりを持つようになってから、マユリをエイリスを封印するためのただの道具としてではなく、尊厳ある存在としてきちんと扱ってくれた者は、媚空が初めてかもしれなかった。
この世の平穏のために必要な存在であるにも関わらず、認められず蔑まれる境遇にあるため、マユリも媚空もお互いに感じるものがあるようだった。



彼女との別れ際に、雷牙は、ホラー、ラテルに憑依された魔戒騎士イズモが媚空の弟であることを知った。
闇に堕ちた魔戒騎士の魂を救うためとは言え、元は弟であった身体を目の前で牙狼が斬るのを見て、彼女は何を思ったのだろう。
だが、媚空は涙はおろか、哀しみという感情さえ微塵も見せずに、雷牙たちの前から去って行った。
それが ’闇の狩師’ としてひとりで生きてきた彼女が、知らず知らず身に着けた鎧なのかもしれなかったが、雑木林の中に続く小道を粛々と歩き、小さくなっていく彼女の背中を見送る間中、雷牙の心はチクチクと痛かった。



媚空と別れてから季節が2つばかり過ぎた頃。
指令のない夜のことだった。
雷牙は、書斎で書物を開いていた。
それは、魔戒法師たちが使う札について書かれたものだった。
というのも、魔戒法師の使う法術は、何も法師たちだけのものではなかったからだ。
牙狼の称号を継ぐ者は、魔導八卦の札を扱うことが出来るし、魔戒法師となる修行を積んだが魔戒騎士になった者もいれば、魔戒騎士でありながら法師としての才能も高い者もいたのだ。
それに、術の知識を持つことは、その術を実際に扱えないとしても、ホラーに対して供(とも)に闘う際には何がしか役立つはずだった。

書物を開いて1時間余りが過ぎた頃、とある章を読み終えた雷牙は、ふぅっと小さく息を吐き、書物から顔を上げた。
すると、どこからともなく緑色にぽぉっと光る1枚の若葉が現れたではないか。

『雷牙!』

ザルバが鋭く叫ぶのと、雷牙がその光に気付いたのはほぼ同時だった。
風に吹かれて舞い散るようにふわりふわりと不規則な動きで漂っていたそれは、やがて差し出された雷牙の掌に静かに着地した。
雷牙がじっと見つめていると、その若葉の先端から糸のようなものがほどけるようにして空中にスルスルと上っていき、クネクネとうねったかと思うと緑色に光る魔戒文字が現れた。

「冴島雷牙。
 わたしだ。媚空だ。
 恥ずかしいことに、ドジを踏んで動けずにいる。
 おまえの助けが欲しい。
 申し訳ないが、手を貸してくれないか…」

媚空からの知らせを雷牙が読み終えると、空中に漂っていた魔戒文字が再び1本の糸となり、今度は先程とは逆にシュルシュルと編まれていった。
そして、元の若葉の形になったかと思うと、雷牙を誘うようにして書斎を出ていく動きを見せた。

『雷牙! あれを追って行けば、媚空の居場所に行けるようだ。
 しかし、あの媚空が窮地に陥るとは…
 おまえも心してかかれよ』

「ああ。
 とにかく、急ごう!」

そう言うと、雷牙は書斎を駆けだした。



to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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