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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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あの人の背中(3)

怪我をした媚空に何を食べさせよう?

現実世界での夕食のメニューを考えるのは憂鬱ですが、妄想の中なら気分的にラクですね。
(だって、ゴンザさんが作るんだも~ん♪)

とは言え、
  鉄分の多い食材は何か?
  この季節の旬のものでは何か?
  怪我人が食べやすいメニューは?
と考えると、やっぱり、あれこれ迷います…

いやぁ、3行を考えるのにかなり時間を使っちゃいました (≧▽≦)
実際には、何気なく読み飛ばされちゃうところなんですけどねぇ~

拍手[13回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

背中の怪我から血を失った媚空のために、ゴンザは鉄分の多い食材を集め、食べやすいように工夫して調理したものを用意した。

 鮭とほうれんそうのリゾット
   ブロッコリとひじきの卵とじ
     サツマイモのバター煮

さすがに食事の量こそ少なかったものの、それでも、どれもおいしい、と言って媚空は食べた。
ゴンザの心のこもった温かい食事のお蔭で媚空の顔に少し赤みが戻ってきたため、雷牙たちは一様にほっと安堵したものだった。
食後には、心地よいようにと設(しつ)えられた客室へと案内されたので、媚空は今頃、清潔でフカフカな布団に包(くる)まり、ゆっくりと身体を休めていることだろう。



さて、いつもの時間よりも少し遅くなったが、風呂を浴びた雷牙は自室に引き上げることにした。
きれいにベッドメイクされたベッドに入ると、ごそごそと落ち着ける姿勢を探す。
布団に自分の体温が少し馴染んだ頃に、ようやく、ふぅ~と息をついた。

天井を見つめながら、雷牙はフッと思い出し笑いをした。
雷牙が思い出していたのは、媚空の世話を甲斐甲斐しくするマユリの姿だった。
媚空に食事が運ばれると、それを食べさせようとしてみたり(媚空は、自分で食べられるから、とすぐに断ったが)、料理は熱くないか? 飲み物はいらないか? などとあれこれ尋ねてみたり(どちらも、大丈夫だ、と媚空は答えた)、客室に向かう際にも肩を貸そうと申し出たり(結局、支えきれずに雷牙が代わってやったが)、と、実際には、そのほとんどが空振りに終わっていた。
だが、そのマユリの様子が、雷牙やゴンザの目にはとても微笑ましく映っていたのだ。

恐らく、マユリにとっての媚空は、他人とは思えないような存在なのかもしれなかった。
もちろん、これまでさほど親密な交流をしてきたわけではなかったが、お互いにどこか自分と似ている部分を感じ取っていたようで、何がしかの親近感を覚えているように思えた。
マユリからすると媚空は、’姉のような存在’ とでも思えるのかもしれない。



(それにしても…)

雷牙はベッドの上で思い起こしていた。
媚空と初めて会った時のことを。

決して友好的には見えない出会いだったが、すぐにお互いの能力の高さを認め合うことになった。
そして、’闇の狩師’ という孤独な境遇と、実の弟を葬らなければならなかった運命をすべて飲み込んで泰然といられる彼女に、雷牙は ’尊敬’ にも近い感情を抱くのだった。

(あの日、立ち去る媚空の背中を、俺はどんな気持ちで見送っていただろうか…)

雷牙は、半年前の自分の気持ちがどんなだったのか、ぼんやりと思い出そうとしてみた。


そして、今日、再び媚空に出会い、その背中を見た。
黒い衣服が無残にも破け、背中に傷を負っているのを確かめたとき、どす黒く変色して固まりかけた血の色と、それより鮮やかな傷口の赤、そして、それらに引き立てられるようにして白い背中が見えた。
その背が、媚空の荒い息遣いのため上下に蠢(うごめ)く様子に、雷牙は少しドキリとしていた。
動揺を悟られないようにして、すぐさま閉じ込める。
だが、またすぐに心が騒ぐ。
それは、媚空を屋敷に運ぶために肩に担いだときだった。
彼女の鍛え上げられた肉体は、硬く重いものだと雷牙は無意識のうちに想像していた。
雷牙の中にある彼女のイメージは、魔戒騎士を相手にしても動じない神経の図太さと、騎士と対等に渡り合える戦闘能力、そしていつでも的確な判断力を持つ冷静沈着さだった。
何者をも阻(はば)み、何者にも屈しない存在…
例えるなら、彼女は、不動の巌(いわお)のようなものだった。

だが、実際に彼女を担いでみると、予想に反してその身体は柔らかくしなやかで、おまけに華奢なうえにひどく軽く感じられた。
それに気づいたとき、なぜだろう、雷牙は ’悲しい気持ち’ になった。

(なぜ?
 どうして悲しくなったんだ?)

自分のことなのに、雷牙にはその理由が思いつかなかった。
なんともすっきりしない気持ちのまま、雷牙は引き込まれるようにして眠りに落ちていった。



翌朝。
雷牙がリビングに向かうと、マユリが、待ってました! とばかりに話しかけてきた。

「雷牙!」

表情が飛び切り明るく、何かに興奮しているらしい。
この頃のマユリはほんとうに表情が豊かになってきた。
そして、好奇心も旺盛で、雷牙やゴンザにくっついてはいろいろなことを覚えよう、知ろうと意欲的だった。

「おはよう、マユリ。
 どうしたの? 何か嬉しいことでもあった?」

いつものように笑顔でマユリに挨拶すると、マユリは飛びつかんばかりに言った。

「おはよう、雷牙!
 ねぇ、聞いてくれ。 媚空の背中の札が、今朝見たら、もう半分くらい消えかかってたんだ!」

自分のことを自慢でもするようにニコニコしているマユリを見て、もしもマユリに犬のような尻尾があったら千切れんばかりに振られてるんだろうな、などと雷牙は想像した。

「へぇ、それはすごいなぁ。
 札(ふだ)の力があるとは言え、彼女の回復力は並みじゃないね」

そこに朝食のスープを運んできたゴンザが言葉を添えた。

「雷牙様、おはようございます。
 媚空様はぐっすりとお休みになられたそうですよ。
 今朝はすっきりとした、とてもよいお顔をなさっておいででした」

「おはよう、ゴンザ。

 それはよかった。
 ゴンザの作ってくれた食事のお蔭でもあるね。
 とにかく、一安心だね?」

「はい、もう心配はないでしょう」

そんなふうに雷牙とゴンザが会話しているのを、ジリジリと待ちきれない様子で聞いていたマユリだったが、会話に一区切りついたところでゴンザに向かって勢い込んで尋ねた。

「ねぇ、ゴンザ。
 媚空の食事の用意はもうできてるのか?
 さっき約束しただろう? 媚空の朝食は、私が持っていくんだからな?」

ゴンザはマユリに向かって穏やかに笑いかけると、

「はいはい、マユリ様。
 雷牙様のお食事をご用意したら、すぐに…」

と答え、手に持っていたスープ皿を雷牙の食卓に優雅に置いた。
優雅、といえば聞こえはいいが、それはマユリの目からみるとひどくもったいぶった行為に見えたのだろう。

「もう、ゴンザったら、早く、早く!
 媚空がお腹をすかせて待っているぞ」

そう言うと、マユリはゴンザの背に回り、背中を押すようにして急がせた。

「ほっほっほ… わかりました、わかりました。
 そう慌てなくとも、すぐにご用意できますよ」

と、笑いながら、ゴンザは物言いたげに雷牙を見た。
それを受けた雷牙もフッと笑って応え、

「俺のことはいいから、すぐに媚空の食事を用意してあげてくれ」

と言うと、少し声を小さくして、

「…マユリのためにな」

と言い添えた。
ゴンザも思わずニヤリと笑い、

「はい、かしこまりました。

 …では、マユリ様、少しお手伝いいただけますか?」

と、背中を押すマユリを見返りながら言うと、

「ああ、なんでもやるぞ。
 私は何をやればいいんだ?」

と、マユリは俄然張り切って答え、ゴンザの背中を押す手にも力がこもった。
ゴンザとマユリが、やいのやいの言いながらリビングを出ていくのを見送り、雷牙はクスクス笑った。
そして、ゴンザの用意したスープを飲むために、食事の席についたのだった。


to be continued(4へ)
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コメント
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無題
こんばんは!いつも私の妄想への誘いに連れてって下さりありがとうございます。今日は娘たちと温泉なのにここまで来てもつい覗いてしまいました。本当に楽しみにしています。
パン 2014/11/24(Mon)23:57:53 編集
あらあら、旅行先にまで!
こちらこそ、拙い妄想にお付き合いくださり、ありがとうございます。
せっかくの温泉旅行なのに、お邪魔しちゃってるみたいですいません! (^▽^;)
お嬢さん達は呆れてらっしゃるんじゃないんでしょうか?
「こんな素人作文のどこが面白いのよ」なんて…
とはいえ、selfish の勝手気ままな妄想を少しでも楽しんでいただけたら、こんな嬉しいことはありません!
また、いつでも遊びに来てくださいませ。
ご感想も(一言で構いませんので)お待ちしていま~す! (^_-)-☆
【2014/11/25 23:33】
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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