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きんのまなざし ぎんのささやき

あの人の背中(2)

頑張って書いているのですが、雷牙も媚空も(ついでにマユリも)まだまだぎこちない感じです。 (>_<)
ゴンザさんだけが心のよりどころ!
出てきてくれると、ホッとします。 (^▽^)

あ、今回、ちょっとだけ流血シーンがあります。
あんまりグロくならないように表現したつもりですが、血に弱い方はご注意ください!




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緑色の光に導かれて雷牙が訪れたのは、大きな公園に隣接する神社の敷地内だった。
玉砂利がきれいに敷かれた広い参道に街灯などはなく、虫の音(ね)がかすかに聞こえるだけの闇が広がっていた。
雷牙をここまで導いてきた光は、参道をひらりひらりと進んでいったが、やがて脇の小道へと方向を変えて進んだ。
その小道は左右に鬱蒼とした木々が茂っており、たとえ昼間まであっても若い女性ならひとりでは歩きたがらないような場所だろうな、などと雷牙は思った。
やがて、若葉の形にぽぉっと輝く光は、とある木立の根元の上をクルクルと何回か回ったかと思うとふいにスッと跡形もなく消えてしまった。

『雷牙、結界だ。
 ちょうどその木の根元に媚空はいるぞ!』

ザルバが彼女の居場所を雷牙に教えた。
なるほど、そう思って目を凝らすと、確かに空間が微妙に歪んでいるのがわかる。

『ホラーから姿を隠すために結界を張ったのか?
 いや、あの媚空が、そんなことで結界を張ったりするだろうか?

 理由はどうあれ、目の前に雷牙が来ているにも関わらず反応がないということは…

 雷牙! 結界を破るんだ! 力づくで叩き壊せ!』

慌てたようなザルバの様子に、雷牙も只事ではないと感じ取ってすぐさま赤鞘から剣を抜き放った。
静かに構え、目を閉じて心を瞬時に落ち着ける。
カッと目が見開くとともに、剣を目の前の空間に振り下ろした。
何もないように見えた空間からパチッパチッと火花が弾け飛んだ。
雷牙は、同じ場所に目がけて、2度3度と剣を振るい続けた。
やがてわずかな隙間ができたところに剣先をねじ込むと、力任せにグイッと捻った。
すると、ガラスのドームが破裂したようにキラキラとした欠片が霧散し、何もなかった空間に媚空の姿が突如現れた。

だが、当の媚空はひどく青ざめた顔で目を固く閉じ、はぁはぁと荒い息をして木にもたれかかっていた。
どうやら背中に怪我を負っているらしく、厚く降り積もった落ち葉の上には赤黒く血溜まりができていた。

「媚空!
 おい! しっかりしろ!」

肩に手をかけて声を掛けると、媚空の目がわずかに開いた。

「ああ、冴島雷牙… 来てくれたのか…
 すまないな。 わざわざ呼びつけたりして…」

普段は感情を表に出さない彼女が、珍しくほっと安堵したような顔を見せた。

「話は後だ。
 とにかく、安全な場所で怪我の手当てをしないと…」

雷牙は、木にもたれかかっていた媚空の身体をそっと自分のほうに引き寄せて、背中の怪我の様子を見てみた。
斜めに大きく服が裂けていたが、傷自体はあまり深くはないようだ。

「媚空、俺の屋敷に行こう。
 立ち上がれるか?」

雷牙は手を貸して媚空を立たせると、彼女の身体を肩にかついだ。
普通に抱きかかえるより、この姿勢のほうが背中への負担が少ないだろうと考えてのことだった。

『媚空、もう少しの辛抱だぞ』

ザルバがそう言葉をかけると、

「すまない…」

もう一度、詫びの言葉がかすかに聞こえた。
雷牙は、それを合図に踵(きびす)を返すと、屋敷へと向かい急いで歩き出した。



ぐったりとした媚空を屋敷に運び込むと、それを迎えたゴンザもマユリも驚いた。
媚空が怪我をしていると知ると、ゴンザはすぐさま傷口をきれいに洗浄した。
幅にして10cm程度、深さは最も深いところでも1cm余りで、出血はしているものの骨にも異常がなく、傷口さえ塞いでしまえばよいようだ、とゴンザは見立てた。

「いかがいたしますか?
 わたくしが縫合いたしましょうか?」

ゴンザが遠慮がちにそう提案すると、媚空は血の気のない青ざめた顔で、

「申し出には感謝する。
 だが、この札さえ貼ってもらえれば、傷は塞ぐことができる」

そう言うと、一枚の札(ふだ)を差し出した。
その札は、ひどく薄く、シルクのような光沢があり、光の加減によって虹色に光って見えた。
媚空から札を受け取った雷牙は、まじまじとそれを見つめると、

「これは、瑠璃光の札?
 これで傷口を覆えばいいんだな?」

と媚空に聞き返した。

「そうだ…」

媚空の答えを聞いて、雷牙は改めて媚空の背中の傷を見た。
彼女の真っ白な背中の中央が、斜めに赤くパックリと割れていた。
雷牙は、札の上下を両手で持ち、傷口にそっと貼りつけた。

「貼れたよ、媚空」

雷牙が言うと、媚空はかすかにうなずいて、筆を取り出し、ブツブツと口の中で何やら唱え始めた。
媚空は筆先が青白く光り出したのを確かめると、雷牙を物憂げにゆらりと見て、その筆を差し出した。

「すまない。
 この筆で、札の上から傷口をなぞってくれ」

雷牙に媚空から筆を受け取ると、媚空の手がパタリと力を失くして落ちていった。
そのとき、今までそばでじっと見ているだけだったマユリが、その手を取って両手で握りしめた、。
心配そうに媚空を見つめるマユリに、媚空は、大丈夫だ、と言いたげにうっすらと微笑んだ。

一方、雷牙は、媚空から託された筆を強く握りしめて、静かに息を吐き、心を落ち着けた。
すでに青白くぽぉっと光っていた筆先だったが、不思議なことにその光がさらに強くなったように見えた。
雷牙は、ゆっくりと札の上から下に向かって筆を撫で下ろした。
すると、札全体が光り出し、札の下で虫でも蠢(うごめ)くようにゴニョゴニョとした動きが見られた。

「くっ…」

痛みを感じるのか媚空の顔が歪み、マユリに握られていた手に力が込められた。
だがすぐに、スッと波でも引くように、札の下がきれいに平らになっていくのがわかった。
それと同時に痛みの方も消えたのか、媚空の口からほぉっと息を吐かれると、呼吸を落ち着けるように何回か深く呼吸をした。

「大丈夫か?」

マユリが心配そうに声をかけた。

「大丈夫だ。 どうやら、傷のほうは塞がったようだ。
 だが、まだ完全には回復したわけではない。
 この札は、傷が治れば自然に消える。
 だから、このまま何日か、札の消えるのをただ待てばいいのだ」

媚空はマユリに向かってそう言うと、雷牙は筆を媚空に返した。

「あなたがこの札を持っているとは…
 俺も、実物は初めて見たよ」

雷牙の言葉に、媚空は答えた。

「瑠璃光の札はとても貴重な札だ。
 だが、私には必要なものだから常に携帯している。

 ただ、私ひとりでは背中の傷に貼ることができずに難儀していたのだ。
 札が貼れぬ以上、このまま動けなくなるかもしれないとは思ったが、じっとしているしかなかった。

 けれど、それでは私の血がホラーを呼び寄せてしまう。
 だから、ああして結界を張ったのだが…
 おまえが来てくれなかったら、あのまま誰にも気づかれずにいただろうな」

そう淡々と話す媚空の言葉を聞きながら、この人には頼れる仲間がひとりもいないのだ、と雷牙は媚空の孤独な境遇を改めて感じていた。
だが、雷牙は素知らぬふりをして、ずっと気掛かりだったことを尋ねることにした。

「媚空、今夜のあなたの相手は?
 仕留めたのか? それとも…」

媚空が仕損じているのであれば、今からでも雷牙が出掛けて始末をつけなければならない。
誰の獲物とか、誰の管轄とか、そういうことに雷牙は頓着しない。
父から継承したのは鎧だけではないのだ。
「ホラーを狩るのが魔戒騎士の使命」
その教えは、雷牙の中に脈々と受け継がれていた。

「それは大丈夫だ。
 この傷と引き換えに、奴にはきっちりと引導を渡してやった」

媚空はにこりともせずに言った。
それを聞いて、雷牙は笑顔になった。

「さすがだね。 それで安心したよ。

 それにしても…
 あなたが助けを求めてくるとは、正直言って、驚いたよ」

雷牙が率直に告げると、媚空も誘われるようにフッと笑った。

「ひょっとしたら、おまえなら来てくれるかもしれないと思ってな。
 まさか、ほんとに来るとは… とにかく助かったよ」

だが、よく見ると、媚空の顔はいまだに青ざめ、疲労も随分溜まっているようだった。
それに気づいたマユリが、

「雷牙、媚空はまだ体力も回復していない。
 だから、身体が元に戻るまでここにいてもいいだろう?」

と聞いてきた。
それを聞いて、媚空は驚いたように目を見開いた。

「そうだな。
 ゴンザ、構わないだろう?」

どうということもないかのように、軽い調子で雷牙はゴンザに念を押した。

「えぇ、それはもう!

 傷が塞がったとは言え、まだ安心はできません。
 ここなら、わたくしでもマユリ様でも、媚空様の必要なときにすぐにお世話することもできますし…

 しばらくゆっくり静養して、栄養のあるものをたくさん召し上がれば、じきによくなります。

 おお、そうだ!
 さっそく、何か消化のよさそうなものをご用意してまいりましょう」

ゴンザはそう言うと、いそいそと台所へと向かって出ていった。
当人を除いて勝手に話が進んでいることに戸惑っていた媚空は、ようやく口を挟んだ。

「わたしはおまえたちの申し出を受け入れていいのだろうか?
 こんなふうにされるのは初めてのことだから、どうすべきなのか、よくわからないのだが…」

そう言って雷牙を見ると、雷牙はにっこり笑って言った。

「いいんだよ。

 あなたは怪我をしている。
 俺たちはあなたに手を貸したい。
 それだけだ。

 傷が癒えるまで、好きなだけここにいるといい」

それを聞いた媚空は、感に堪えないような微妙な表情を浮かべていたが、

「…ありがとう」

そう呟くように言うと、安心したように目を閉じた。


to be continued(3へ)
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すみません!
本日の妄想アップはできそうにありません。
どんなふうに展開しようかまだ迷ってまして…
うまくしたら明日にでも、とは思うのですが、
きちんとお約束するのも難しく…
どうか、どうか気長にお待ちくださいませ!

2017/11/19
selfish

selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



夕月 様[07/15]
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