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きんのまなざし ぎんのささやき

おまえのせい(10)

回を重ねて10話目です。
1話目、2話目の展開から、あま~い続きを期待されていた方、ごめんなさい!
気ままに書いてきた結果、鋼牙もカオルもどこ行った!? な状況になっていますね。

いや~ ははは…
(笑って誤魔化すしかない!)


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ここからの眺めは、かなり素晴らしい…

街を望む高台にある住宅地の一番奥まったところにある洒落たバー。
恋人たちが宝石箱のような夜景を眺めながら「君の瞳に乾杯」するのが定番の店だ。

そのバーを出たところから少し離れた人目につきにくい場所で、若い恋人たちが抱き合っていた。
ムード満点の中でカクテルを飲めば、酒にも雰囲気にもだいぶん酔ってしまったようだ。

「んふぅ… はぁ~」

互いの唇に貪(むさぼり)りつき、激しく舌を絡ませる。

すると、そんなふたりの姿を、闇の中からじっと窺う目があった。
見つめているその目には興奮も高ぶりもなにもなかった。むしろ悲しげにも見える目で黙って見ている。
だが、やがて、

「ふぅ」

と目を伏せて溜息をついたかと思うと、ゆらりと闇の中から動き出した。
乗り気ではないのに無理矢理従うかのような気だるい様子で、キスより少しエスカレートしているふたりのもとに近づいていく。
そいつが醸し出す不穏な気配に、さすがに夢中になっているふたりも気づいた。
足が痛むのか、心なしか右足を引きずるようにして接近する影のようなそいつは、互いに目鼻立ちがわかる距離までやってくると立ち止まった。

「な、なんだ、おまえは!」

男の方が驚きながらも強気に声をかける。相手が若い女だとわかったからだ。
艶やかな長い髪できれいな顔立ちをしたその女は、顔には何の感情も示さず、ただ冷ややかに男を見返していた。
こんな場所にたったひとりでいる女の存在を不気味に思いながら、後ろに庇う彼女の手前もあり、男はさらにすごんでみせる。

「用がないならあっちに行け!」

怖い目で睨みつけ、1~2歩、前へと踏み出した。そうすればこの奇妙な女も怖気づいてどこかに姿を消してくれるだろうと思ってのことだった。
ところが、女の方は怯える様子もなくただただ淡々としている。
たまらず、男の連れのほうの女が、少し乱れた衣服を掻き合わせながら男に声をかけた。

「ねぇ、もういいから行こう?」

先程まであんなに高揚していた気持ちは萎(しぼ)んでしまい、今は、この気味悪い女のからとにかく離れたい気持ちで一杯になっている。
そう言った女は、すでに何歩か歩きかけていて、この場を立ち去ろうとしていた。

「チッ」

軽く舌打ちした男は、邪魔をした女をジロリと見返してからその場を離れようとしたが、歩き始めてすぐにギョッとした。
2~3m離れた場所にいたはずの正体不明の女が、どういうトリックを使ったのか一瞬のうちに目の前に立っているのだ。

「うわぁっっっ」

驚いて情けない声をあげた男は、次の瞬間、さらに思いがけないことに出くわす。
女のか細い手が男の両腕を掴むと、ものすごい力で締めつけたのだ。
女の表情は先程と同じ… いや、同じように見えたが、獰猛な何かを隠し持っているようにどこか雰囲気が変わっている。

「クッ…」

男はなんとか逃れようともがくが、びくともしない。
やがて、女の目が白く濁り、ギラギラとした気を発しながら、口をゆっくりと開いていく…
夜目にも桜色に艶めいている唇が開かれると、そこには小さな闇があった。
その闇から目が離せなくなった男は、あっと思う間もなく、自分の身体が暗く恐ろしい漆黒の中へと吸い込まれていく感覚を味わった。

「ぐはぁぁぁぁ」

男の身体がゲル状に形を崩して女の口の中に吸い込まれる。
その間、数秒のこと。だが、長い数秒に思えた。
とうとう男の断末魔とともに身体がすっかり飲み込まれ、飲み込んだ方の女はクンと上を向くと喉をゴクリと鳴らした。
空腹が満たされて少しだけ満足そうな顔になった女が、ゆっくりと辺りを見回す。
すると、そこにはあまりのことに驚き過ぎて、叫ぶことも逃げ出すこともできずにいる男の連れの女がいた。

「ごめんね…
 あなたの大事な人なのに」

男を飲み込んだ女は、何とも言えない悲しげな表情で謝った。
その一言が時間を動かしたかのように、謝られた女はハッとした。

「きゃあああ」

悲鳴をあげ、転がるようにその場から駆け出す。
が、すぐに腕を掴まれて引き戻された。
ガシッと両腕を挟まれ、身動きが取れない女は、顔面を蒼白にし、ブルブルと震える。

「逃がすわけにはいかないの。
 あなたを食べたいわけじゃないけど、こうでもしないと、あたしの会いたい人に会えないから…」

獲物を掴まえた女はそう言うと、ゆっくり口を開きにかかった。

「や、やめて…」

涙で目を潤ませて懇願してみたが、その声は目の前の女に届いているようには思えなかった。

(もう駄目…)

捕えられた女は意識を失いかけた。
意識のあるうちに自分が喰われるよりも、そのほうが何倍も楽だと思ったのだろうか。



…と、そこに。

「そこまでだ」

闇を震わすような低音の声が響いた。
女を喰らおうとしていたホラーがゆっくりと口を閉じると、背後に注意を回した。
そこには、白いコートの鋭い眼光の男が剣を突きつけて立っていった。

「ひぃっ」

ホラーの腕の中の女は、とうとう気を失った。
喰われそうになりながらぎりぎりのところで保っていた意識が、さらに得体の知れない危険な男の登場で限界に達したのだろう。
くたりとした女を支える格好となったホラーは、女を食べずに済み、ホッと安堵すると、その場に女を寝かしつけた。
そして、ゆっくりと男のほうに向きなおり、尋ねた。

「あなたが、冴島鋼牙?」

小首をかしげるようにして尋ねる様子は、どこをどう見てもフツウの人間のようだ。

「ああ、そうだ」

剣をつきつけたまま、鋼牙は答えた。

「よかった。
 あなたに会いたかったの」

寂しげに笑いながらホラー セクメトは答えた。

『ほぉ~ ホラーが魔戒騎士に会いたいとは…
 おかしなことをいうヤツだ』

鋼牙の指に嵌まる魔導具ザルバが、感心したふうに言った。

「おかしなこと…
 そうね、おかしなことかもしれないわね」

自嘲するようにセクメトは笑う。
が、すぐに真剣な表情になり、鋼牙に向かって言った。

「でも、そんなことどうでもいい。

 お願い… あたしを斬って!」

その様子は冗談やお芝居ではないように見えた。
だから、言われた鋼牙も素直に驚いた。
表面上は、片方の眉が若干動いただけだったかもしれないが、内心では、過去の苦い経験が蘇っていたのだ。

(あいつも同じことを言っていたな)

鋼牙の脳裏には愛する女の笑顔が浮かんでいた。

(このホラーも、自分の身を犠牲にすることで何かを守りたいのだろうか?)

鋼牙はオリトの面影を思い起こした。
だが、それはそれ。これはこれだ。

「もちろんだ。
 ホラーは斬る… それが魔戒騎士の務めだからな」

決然と言い放った鋼牙に迷いはない。
それを聞いたセクメトはどこかホッとしたような笑みを浮かべて、

「そう…
 なら、さっさと斬ってちょうだい。
 あたしはこうしているから…」

と、両手を少し広げるようにして目を瞑(つむ)った。

『まったくおかしなホラーだぜ。
 自分から斬られたい、だなんて…』

呆れるように呟くザルバ。
鋼牙もいつもと違うホラーの殊勝な態度にどこか居心地の悪さのようなものを感じたが、仕事は仕事だ。
すぐさま気持ちをフラットにし、目の前の敵に集中して剣を握る手に力を込める。
腰を落として、

「はぁぁぁ」

と力を溜めると、振り上げた剣を無抵抗のホラーに目がけて振り下ろそうとした。
ところが、あと10数cmでホラーに届く… というところで

「やめろっ!」

と横手から声がかかったかと思うと、細身の長い剣によって、鋼牙の剣が弾かれた。



to be continued(11へ)
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拍手[18回]

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すみません!
本日の妄想アップはできそうにありません。
どんなふうに展開しようかまだ迷ってまして…
うまくしたら明日にでも、とは思うのですが、
きちんとお約束するのも難しく…
どうか、どうか気長にお待ちくださいませ!

2017/11/19
selfish

selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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