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きんのまなざし ぎんのささやき

ずるいヤツ

「いまはただ、あなたのそばに」に、たくさん拍手をありがとうございます!
こんなに拍手もらったのだから、お礼しなければなるまい… ということで
急遽、 ’おまけ’ を書いてみました。

夜の部は、みなさん、お好きに妄想していただいて…
「翌朝」を妄想しました。

甘いだけにしなかったつもりですが…
どうぞ、その眼でお確かめくださいませ。



:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

鋼牙の部屋に、朝の気配は少しもなかった。
いや、ただ一筋、カーテンの隙間から差し込む光の糸が、カオルの目元に
伸びていた。

(う、ううん…)

カオルが静かに眼を覚ます。
広いベッド。
見慣れない家具。
それに、落ち着くようでいて、ドキドキするこの香りは…

(…思い出した…
 ここは… 鋼牙の部屋…)

目の前に鋼牙の姿はなく、少し慌てて、身体を起こそうとする。
だが、すぐにその姿勢から力を抜き、頭をベッドに戻す。

鋼牙はいた。
長身の鋼牙が小さくなり、長い手足を縮めて、カオルの懐に潜り込むような
格好で寝ていた。
鋼牙の表情を垣間見ようと、カオルは身体をそっと動かした。
穏やかな顔で、規則正しい呼吸を刻んでいた。

(ふふっ)

カオルは思わず微笑みを浮かべる。
そのとき、ふいに、昨晩の鋼牙が蘇(よみがえ)る。

「カオル、今だけでいい。
 俺のそばにいてくれ。」

(きゃ~)

カオルの頬は見る間に赤く染まり… そして、急に、色を失った。

(そうだ。
 鋼牙は、ザルバを失ったんだった…)

つらく悲しい記憶もまた蘇った。
小さくなって眠る鋼牙の姿を見つめる。

(ひょっとしたら、鋼牙は、耐えきれない孤独や傷の痛みや憎しみなんかを
 こんなふうにひとりで耐えてきたのかな?
 これまで、ずっとひとりで…

 「そばにいてくれ」ってあたしに言ったけど、やっぱり、心の傷は自分の力で
 押さえ込もうとしていたのかもしれない…
 あたしだったら、そばにいる誰かに共有したいって思うけど、鋼牙は…

 う~ん、男ってそんなものなのかなぁ?
 そうだとしたら、男ってツラいね…)

カオルは、無意識に鋼牙の髪を撫でていた。

野生の狼の子が、風雨に晒(さら)されるように、鋼牙もまた、いろいろなものに
晒され、身も心もボロボロに傷ついたこともあっただろう。
幼い頃に両親を亡くした鋼牙には、自分の傷を遠慮なくさらけ出し、それを
優しく受け止め、慰めてくれるような存在はなかったのではないか?
こうして、つらく長い夜を、ひとりで身を丸めて耐えてきたのかもしれない…
そう、カオルは思った。
それは、カオルにも身に覚えがあったから…

そんなふうに考えると、カオルは切なくなり、鋼牙への愛(いと)おしさが
募った。

(鋼牙…)

カオルは身を起こし、鋼牙のこめかみにそっと唇を押し当てた。
鋼牙の髪が、カオルの鼻をくすぐる。

「カオル…」

思いがけず、鋼牙の声がその名を呼んだ。

「えっ!」

驚いて離れると、鋼牙はうっすら眼を開け、カオルを視線の先に捉えていた。
優しいまなざしだった。
だが、どきりとするような艶っぽさもあった。

「一晩中いてくれたんだな…」

頬を染めたカオルが、こくりとうなずく。

「俺はもう大丈夫だ。」

そう言うと、手を伸ばし、カオルの頬に触れた。
カオルは痺れるような感覚を覚え、身じろぎひとつできなかった。

「ずるいことを言うようだが…」

そこまで言うと、鋼牙が言葉を躊躇する。

「なに?」

カオルが優しく促す。

「俺は、おまえの近くに、ずっといてやるわけにはいかない。
 だが…  俺の心は、お前のそばにいつでもあると、そう思って欲しい…」

鋼牙のひとりよがりな言葉に嬉しい反面、カオルは軽く反発を覚えた。

「なにそれ?
 なんかずるくない?」

だが、鋼牙は軽く受け流す。

「あぁ、ずるいな。
 だから、最初にそう断ったはずだ。」

「…うぐっ…
 じゃあさ、鋼牙だって、いつもあたしのこと、感じていてくれるわけ?」

理不尽さのあまり、カオルは挑戦的に言った。
それでも、鋼牙は涼しい顔で返す。

「あたりまえだ…」

「なっ… なんの根拠があって…」

「根拠などない。」

この調子では結論など出ない。
カオルは溜息をついてから、こう言うしかなかった。

「…降参です。
 あなたがあたしを想ってくれるなら、きっとあたしは、あなたの心を
 近くに感じていられるわ。

 …これでいい?」

「あぁ、それでいい。」

諦め半分に言ったように聞こえるカオルの言葉だったが、鋼牙には、
ちゃんとカオルの本心は伝わっていた。

たとえ、ふたりが、このあと遠く離れてしまうことになったとしても、
心はずっと、そして、きっと寄り添っていられるはず…  と。



カオルはカーテンを開け、鋼牙の部屋に、朝の気配を呼び込んだ。
部屋いっぱいに光が満ちるように、ふたりの間に温かい想いが
満ちていくのを、鋼牙もカオルも確かに感じていた。



fin
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


北とイタリアに離れ離れになる前に、「いまはただ…」が思い出づくりの
妄想だとしたら、「ずるいヤツ」は約束のための妄想のつもり。
カオルに対して、鋼牙に言って欲しかったことを、はっきり、きっぱり、
鋼牙に言ってもらいました。

いやぁ、これでスッキリお盆休みに突入できますっ!!

拍手[36回]

コメント
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無題
いかにも一期、俺様鋼牙らしい発言www
しっかし そこそこいい年して 一期の二人は一度もそういった関係にならなかったのかな……
「 俺の心は、お前のそばにいつでもあると、そう思って欲しい…」って ある意味それはすんごい愛の告白ですよね。
まったくこの純愛カップルったらwww
hitori 2012/08/21(Tue)22:56:31 編集
Re:無題
俺様鋼牙、大好きなんですぅぅぅ
二期の鋼牙は、「カオルを大事にしている」っていうのがはっきりと見えてしまって、逆に妄想しづらいなぁと思うんです。
(あっ、個人的な感想としてデス。
 はっきり見せた方が安心してイイっていう人もいると思いますが。)

一期で「そういった関係」になっちゃうと、離れ離れになるとつ~ら~い~~~
selfish が、もしカオルの立場で、鋼牙と「そういった関係」になっていたら、遠いイタリアの空の下で、ぜ~ったいイタリア男に慰めてもらいたくなりますもん。

A監督が何かで、「牙狼は寸止めなんだ」と仰ってましたが、selfish の世界では、せめて、心と唇だけはしっかりくっつけてもらい、言葉をしっかり交わしてもらってから、北とイタリアに旅立ってもらうことにしました。

でもね、やっぱりね、俺様鋼牙が好きなので、「お前はどこにも行くな」って鋼牙に言って欲しかったりするんですよねぇ~
【2012/08/22 00:14】
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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