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きんのまなざし ぎんのささやき

追慕(2)

ちょっとお花を摘むだけのつもりが、ゴンザさんとカオルのやりとりが
長引いてしまいました。 (反省、反省…)

さぁ、鋼牙は? カオルは?
どんなふうに亡き人を想うのでしょうか?
ろうそくとお線香を持って、お墓参り?
そんなことするんでしょうか?




:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

コンコンコン

カオルの部屋のドアがノックされ、中からカオルの返事があった。

「入るぞ。」

そう言いながらドアを開けた鋼牙は、部屋にいるカオルの表情を確かめ、
それから素早く室内を確認した。
いつもなら、雑多なもので埋め尽くされているはずのベッドサイドの
ミニテーブルの上が片付けられ、ゴンザの話にあった、庭の花の入った
グラスがあった。

「お帰りなさい。
 見回りは終わったの?」

いつもと変わらない調子で、鋼牙に笑顔を向けるカオル。

「あぁ…」

何かまだ言いたそうな鋼牙の言葉を、カオルは首を傾(かし)げて待った。

「ゴンザが気にしていたんだが…
 墓参りには行かなくていいのか?」

「墓参り?
 …
 そういう鋼牙は行かないの?」

鋼牙からの問いへの回答を避け、少し間を開けてから、カオルは鋼牙に
逆に尋ねた。

「死んだ者を想うのに、時や場所を決めつける必要はないと思っている。
 今の俺は、死んだ者より生きている者のために時間を割(さ)きたいんだ。

 お前から見れば、それは冷たいことに思えるかもしれんがな…」

「冷たいなんて…」

そう言ったきり言葉を続けようとしないカオルに対し、ミニテーブルの方を
見ながら、鋼牙は話を変えた。

「これは?」

「あぁ、庭から摘んできたのよ。
 きれいでしょ?」

「いや、花ではなく、そっちのほうだ。」

ミニテーブルには、花のグラスの他に、大振りな筆とブラシがきれいに
並べて置かれていたのだった。

「あぁ、これ… ?」

鋼牙は、言い淀むカオルの次の言葉をひたすら待った。
観念したカオルが、小さく息を吐いてから口を開いた。
鋼牙に聞かせることを意識していないようで、鋼牙からは視線を外し、
道標として落としていく小石のように、ぽとりぽとりと言葉を落としていった。

「ブラシはあたしのお母さん、筆はお父さん… の、つもりなの…」

「つもり?」

「そう、つもり…

 あたし、お父さんのものもお母さんのものも、実は何も持っていないのね。

 どこかにちゃんと保管してあるかもしれないけど、全部処分されてしまった
 のかもしれない…
 それすらも知らないの。
 あたし、まだ小さかったから…

 だからね、お父さんの位牌もお母さんのも、あたしの手元にはないの。

 …ううん、位牌があったからといって、それをお父さんやお母さんと
 思えるかって言ったら、無理なんだろうけどね。
 あたしにとっては、多分、ただの板切れだもの…

 だから…
 この筆とブラシを勝手に位牌の代わりにしているんだ…

 御月(みつき)の家のお墓には、きっとふたりが眠っているんだろうけど、
 あたしにとっては、多分、そこは意味がない場所なの。

 あたしには、この筆とブラシだけで十分。
 だから…」

そこまで言うと、カオルはようやく鋼牙に視線を向けた。

「鋼牙のこと冷たいだなんて思わないよ。
 あたしのほうが、よっぽど冷たい娘だもんね。」

そういうと寂しそうに笑った。

鋼牙はそんなカオルをじっと見ていたが、やがて、カオルの頭をくしゃくしゃと
撫でた。

「カオル…
 俺も、お前の親父とお袋に手を合わせていいか?」

「えっ?
 あ、うん、いいよ。
 っていうか、ぜひお願いします。」

「あぁ。」

そう言うと、鋼牙はミニテーブルに近づき、膝を折り、頭を垂れた。
鋼牙が何を祈っているのかは、カオルには判らなかった。
いつまでも動かない鋼牙の姿を見ながら、カオルは父と母に呼びかけた。

(お父さん、お母さん、いつまでも見守っていてね。

 そして、できれば…
 鋼牙のことも守ってあげてください。)

そのとき、開け放たれた部屋の窓から、涼やかで心地よい風が吹いてきた。
その風は、カオルの髪をとかすように撫で、そっと通り抜けていった。



fin
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


牙狼の世界に、やっぱり、お盆という行事はミスマッチですね。 (苦笑)

あんまり暗くしたくなかったのですが、大丈夫ですか?

湿っぽくなるのを嫌ったので、飲み物を持ってくるはずだったゴンザは
再登場させませんでした。
今頃、ゴンザは、ドアの外でそっと目頭を押さえてたりするかな?

カオルの父や母に祈る鋼牙と、その鋼牙を見つめるカオル、そして、
吹き抜ける風。
(生きていても死んでいても)誰かが誰かを想う時間というのは、
穏やかで優しい時間だなぁ、と思うのですが、いかがでしょうか?

拍手[22回]

コメント
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無題
良いお話です……
ってゆーか、鋼牙がカオルの両親(と見立てたもの)に向かって頭を下げるだけでもうhitoriは胸アツです。
娘さんを頂きます、とか言ってほしい!!
hitori 2012/08/30(Thu)18:24:02 編集
Re:無題
ありがとうございます。
素直にとっても嬉しいです。

「娘さんを頂きます」は、某サイト様ですでにありますよね?
そちらのお話がとても素晴らしいでの、同じことを、ココではとてもとても書けませんって…
自分のヤツが、ものすごく見劣りしてしまいますもん…

鋼牙が何を祈ったのか、どうぞ、hitori様のお好きなように妄想していただければと思います! (うふっ)

どうしてだか、selfish が書くカオル嬢は、なんでもひとりでこっそりやるクセがあるみたいで…
鋼牙と共有できるようになるのに、まだ時間がいるのかな~
…なんて、書いている本人もよくわかりません。 (苦笑)
【2012/08/30 21:24】
無題
>鋼牙が何を祈ったのか、どうぞ、hitori様のお好きなように妄想していただければと思います!

わかりました。それでは

「娘さんを美味しく頂きます」……え……っ

カオル嬢が一人でこっそりやるって言うの、わかります。芯が強いというか、それはきっと幼い頃に両親と相次いで別れ、自立せざるを得なかったんでしょうね。甘えベタって言うか。でもそんなカオルちゃんだからこそ鋼牙も心ひかれたんだと思います。カオル、カッコイイヨ!カオル!!
hitori 2012/08/31(Fri)19:13:09 編集
Re:無題
鋼牙がカオルのどこに惹かれたか?
じゃあ、カオルが鋼牙に惹かれたのはどこ?
あんまり考えたことなかったです…
おぉ~、なんかワクワクしてきました。

「甘えベタ」なところに注目して妄想したいなぁ~とも思うし、まだまだ妄想ポイントいっぱいありますねぇ~

困ったなぁ~ (と言いつつ、顔がニヤけてしまいます~)
【2012/08/31 21:00】
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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