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きんのまなざし ぎんのささやき

そんな顔(1)

鋼カオの大人限定からの~
零くんの切ない話からの~
はてさて、今宵はどんな妄想でしょうか!?


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  カサ… カサ…

歩みを進める邪美の足の下で、何重にも重なった枯れ葉が軽やかな音を立てる。
ここ閑岱の地は晩秋を迎え、少し前まで燃えるような紅葉で彩られていた雑木林はあっという間に落葉して、今はセピア色の景色になっていた。

ふと、人の気配を感じて邪美は足を止めた。
それとともに、なかば無意識に自分の気配を消す。
四方をぐるりと強固な結界で守られているこの地であったが、そういう身のこなしは魔戒法師として生きてきた邪美には、自然な所作になっていた。

邪美は気配を感じたほうにそっと視線を伸ばす。
そして、ふっと少しばかり緊張を解いた。
というのも、邪美が捉えた気配の主が、山刀翼その人であったからだ。

邪美は、翼… と声を掛けようとした。
がすぐに、その声を飲み込んだ。
どうやら翼はひとりではないようだと気づいたからだった。
誰かと話をしているようだ。
けれども、翼の雰囲気がいつもとは違っていることに邪美は気付いた。

どういえばいいだろう…
いつもと違って、なんとも柔らかい感じがするのだ。
弟子たちの前で見せるような厳しさや、魔戒法師たち相手の素っ気ない感じがない。
そのことに、どこか違和感を感じていると…

(あっ、笑った…)

邪美は驚きで目を見開いた。
破顔、とまではいかないが、翼がわずかに微笑んでいる。
もともと愛想がいいとはいえない翼は、妹の鈴や邪美以外の相手にそういう顔を見せることはほとんどなかったので、邪美は少なからず驚いていた。
鈴なら、今日は我雷法師のお使いで、朝から閑岱を離れている。

(誰だろう?)

翼の相手が誰だか気になった邪美だったが、ここからでは、木立が邪魔をして誰だかわからない。
そこで邪美は、手近にあった太い大きな木を回り込んで、そっと覗いてみた。

(あっ…)

邪美の目に飛び込んできたのは、長いまっすぐな黒髪が印象的な若い美しい女の魔戒法師の姿だった。
その魔戒法師は、邪美の知らない女だった。
ぼんやりと邪美が眺めていると、何かを言った翼に、コロコロと鈴が転がるような可愛らしい笑い声が、風に運ばれてきた。
距離があるので、残念ながら、ふたりがなんの話をしているのかまでは聞こえない。
だが、しあわせそうに笑うその顔は輝くばかりにきらきらとしていて、同じ女の邪美から見ても魅力的に映っていた。

そんな光景を見て、胸の奥がじくじくと痛んできて、邪美は無意識に胸元で手を握りしめる。



するとそのとき、また翼が何か言ったのだろう。
彼の一言に彼女はぱっと頬を赤らめて恥ずかしそうに俯いてしまった。
そして、翼の次の行動に、邪美はハッと息を飲む。

翼が俯いてしまった彼女の顔を下から覗き込むようにして顔を寄せたのだ。
それは、まるで…

(…っ)

邪美は強く下唇を噛んでいた。
けれども、視線はそらすことができなかった。

次の瞬間、ぱっと顔をあげた相手の女は、文句を言っているかのように口を尖らせ、翼の肩を押していた。
けれども、彼女は本当に怒っているようではなかった。
なぜなら、その表情は、どこか甘えたようなものだったから…

プイッと背を向けて走り去る彼女を、優しい表情のまま見送った翼が、やがてふっと小さく息を吐いてからこちらの方に向かって歩き出した。
それを見た邪美は、咄嗟に木の陰に身を隠す。

  カサ… カサ…

という落ち葉を踏む軽やかな音が近づいてくる。
それを邪美はやや下を向きながら、行き過ぎるのを待った。



邪美の隠れた大きな木の向こう側を、翼の足音が通り過ぎたのを感じ、邪美は音を立てずに溜息をつく。
すると…

「邪美?」

2メートルほど行き過ぎた場所で足を止めた翼が、振り返って声を掛けた。

(っ!?)

驚きつつも邪美は固い表情のまま身動きできない。
すると、再び、

「邪美… いるんだろう?」

と翼が声を掛ける。
最初の呼びかけより、今度のほうが邪美の存在を確信しているような声色だった。
そこで、邪美は観念して、木陰から返事をする。

「ああ、いるよ…」

その声に、翼はゆっくりと近づいて、大きな木の幹を回り込もうとする。
すると、邪美は避けるように、翼とは反対側へと移動する。
そんな邪美の態度に怪訝そうに眉をひそめた翼が、今度は反対側から回り込もうとすると、邪美も逆方向に避けていく。

  はぁーっ

大きなため息をついた翼は、姿を見せようとしない邪美に言う。

「どうしたんだ?」

「…」

邪美は下を向いたまま何も答えない。

「何かあったのか?」

翼は重ねてそう尋ねた。

「…」

それでもすぐに応えられない邪美は、ややあってから

「… なにもない…」

と言い捨てるように返した。
その返事に、翼は強引に回り込んで、邪美の腕をつかまえて言う。

「なにもない、っていう態度じゃないだろ」

だが、すぐに邪美の顔を見て、ハッとした。
彼女は唇を尖らせて俯いていた。
そう、まるで、大事なお人形や大好きなおやつを妹に取られて、拗ねている少女のような、そんな子供っぽい顔をした邪美がいた。



to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も8年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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