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きんのまなざし ぎんのささやき

そんな顔(2)

邪美姐さんの少女のような顔… 見たいものですねぇ~
そう、これは、selfish の願望がつまった妄想なのです。
あ、いえ、どの妄想も、そうなんですけどね… へへへ




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邪美はいつだって涼しい顔をしていた。
我雷法師のようなはるか年上の魔戒法師の前であっても、閑岱の地を任されている翼のような名のある魔戒騎士の前であっても。
敬意は払いつつも、その毅然とした態度は崩さなかった。
そして、たまに意味ありげにニヤッと笑ったり、顎を少し上げてフフンと自信ありげな態度を見せたり…
彼女のどの表情をとっても、自信に満ち溢れ、美しかった。

そんな彼女が、どうしたことか。
翼を前にして、不貞腐れたような顔をして、それを隠そうと居心地悪そうに翼から顔を背けている。

誰にも見せないような態度を取る邪美に、翼は思わず表情が緩んだが、そんな顔をさせている原因が気になり、眉をひそめる。

「どうした?」

そう尋ねる翼の声は低かった。

「…どうもしないよ」

翼とは視線を合わせないまま、答える邪美。
頑(かたく)なな邪美の態度に、つい翼も溜息をつき、邪美の身体にも力が入る。

(どうしたものか…)

邪美の腕を掴まえたまま、翼が考えあぐねていると、ぽつりと邪美は呟いた。

「さっき…」

「ん?」

「…さっき、ここらでは見かけない魔戒法師を見たんだけど…」

翼はすぐさま思考を巡らし、つい今しがた遭った魔戒法師に思い至る。

「ああ、それは夕月(ゆうづき)のことだろう」

「夕月?」

問い返した邪美に、翼はうなずく。

「夕月は、暁の妹だ」

「へぇ、暁の…」

「夕月は今は南の管轄にいるから、おまえが知らないのも無理はない。
 だが、もともとはここの生まれだから、俺はあいつが小さい頃からよく知っている。
 負けず嫌いのじゃじゃ馬で、小さいくせに暁の後ろについてまわっては一緒になって遊びまわってたのが、昨日のことのように思い出せる…」

そう言って、何かを思い出したのか、翼はクスリと笑った。
それを見た邪美は、ツクンと胸の痛みを覚える。
邪美の知らない女を翼が知っていて、邪美の知らない翼を知っている女がいることに落ち着いていられない。
それはどうしようもないことなのだが、そんなことはわかっているのだが、どうしたって心穏やかではいられないのだ。

邪美は声が震えないように気を付けながら、

「こう言っちゃなんだけど、暁とはあんまり似てなかったような…
 すごく綺麗な子じゃないかい?」

と言った。
彼女の姿を思い出しながら、同時に、彼女の顔が翼と重なったようなあの光景がよみがえる。

「ああ、そうだな。
 昔は髪も短くて、真っ黒に日焼けして、男のような恰好だったが…
 そんなあいつでも、綺麗になるもんなんだな。 …恋をすると」

「えっ? 恋?」

目を見開いて翼を見上げた邪美に、翼は優しい顔をして言った。

「ああ。結婚するそうだ、来年の春に…」

「…けっ…こん!?」

呆けたような顔で、邪美は呟く。

「ついこのあいだまでガキだと思っていたのに、あの夕月が嫁さんにねぇ…
 さっきそのことを本人から聞いて、おまえをもらってくれる男がいるんだな、そいつはおまえのどこが好きだと言ってるんだ、と聞いたら、真っ赤になって…
 それがあんまり珍しいから、覗き込んで眺めたら、怒らせてしまってな」

その時の様子を思い出すように中空を見つめて楽しそうに話していた翼が、その視線を邪美に戻すと、そこにはすっかり力の抜けた邪美の顔があった。

「ん? 邪美?」

訝し気に顔を傾げる翼に、邪美はへにゃっと力ない笑顔を作り、また下を向いた。

「そうなんだ…」

そう言いながら、邪美は無意識に緩んでしまう顔を引き締めようと何度か試みた。
そんな邪美を見て、ここに来て初めて翼は気が付いた。

「なんだ? 様子がおかしかったのは、夕月のせいなのか?」

はっとした邪美は、

「別にそんなわけじゃ…」

と弾かれたように顔をあげたが、真っすぐな翼の視線とぶつかり、気まずそうに視線をそらす。

邪美の行動の原因も何も翼には分からなかった。
どうやら夕月のことが関係ありそうだ、そのくらいしか。
ただ、今目の前の邪美のことが、とてつもなくかわいいと思っていた。
だから…

「っ!?」

翼に腕を引かれて、その胸の中に納まった邪美は目を剥いた。

「翼?」

「なんだ?」

「どう、したんだい?」

「どうって… なんだか、こうしたくなった」

「えっ?」

しばらく戸惑いつつも抱きしめられるままになっていた邪美を、翼は腕の力を緩めて、見下ろした。
邪美も躊躇いつつも、翼を見上げる。
その顔は、何かを期待するような、でもどこか不安もあるような、そんな感じであった。

「おまえが閑岱に来た頃、そんな顔を俺に見せるようになるとは思わなかった」
そう言って、翼は、邪美の頬を優しく撫でる。
その言葉に、一瞬驚き、すぐに照れたような笑いを浮かべて俯いた邪美が、チラッと上目遣いで答える。

「あたしだって… あんたのそんな顔を見られる日が来るなんて思いもしなかったよ?」

すると、途端に翼の眉間に皺が寄る。

「そんな顔って?」

訝し気に低くなった声に、溜まらずクスクス笑いだした邪美が、いつもの余裕のある表情で顎をくいっと上に上げる。

「あたしのことが好きで好きでたまりません、って… そんな顔さ!」

それを聞いて、翼の顔は苦虫を噛んだような顔になったが、それも一瞬で、

「ああ、そうだな。
 さらさら否定する気はない」

と言い、熱を帯びたまなざしを向けたかと思うと、これ以上何もいう名とばかりに邪美の唇を塞いだ。

邪美の吐息も何もかもを吸い尽くそうとする熱いくちづけに、邪美は意識をとろかせながらも、自分から翼の首に両手を回して熱く応えた。
長い長いくちづけの後、ようやく唇を離したふたりは、視線を絡ませる。

やがて、ほぉっと吐息をついて、翼が口を開く。

「そんな顔、誰にも見せるなよ?」

すると、邪美がこれ以上もないくらい妖艶な微笑を浮かべる。

「それは、どうだか?」

邪美のわかりやすい挑発的な言葉に翼は鼻に皺を寄せて、再び邪美の腰を強く引き寄せる。
そして、鼻が触れ合うくらいの至近距離で一度止めると、

「させるものか」

と宣言してから、先程以上の執拗で刺激に満ちたキスで、邪美を飲み込んでいった。



fin
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粋な邪美姐さんも素敵なんですが、かわいい邪美姐さんも見たいのよ。
ええ、ええ、見たいのよ。

…と、そんな願望を詰め込んだ妄想でした。

邪美姐さんをかわいく書くと、どうしたってその反動で翼がかっこよくなってしまうのですが、頑固なトウヘンボク(ごめん、翼!)の彼の姿とはギャップがあり過ぎですよね…
けどまあ、たまには、そんなかっこいい翼もお楽しみいただければ、と思います!

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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