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きんのまなざし ぎんのささやき

もしもの話(11)

カオルンが試されます。
いったい誰の手を取ってしまうのか!

メガネ男子?
スイーツ男子?

ふふふ、イケメンをいっぱい妄想しましょう!




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カオルンが地上に降り立ったのを見たハーリーティーは、大岩の上からニヤリと笑い、もったいぶった様子で手を叩きました。

  パンッ

すると、それを合図に、カオルの身体がビクンと跳ねて、死んだようだった目に光が戻ってきました。

それを見たコーガは、

「カオルンっ!」

と叫びますが、その声は聞こえていないようで、どうやら完全には解放されていないようでした。

(クッ!)

苦し気に眉根を寄せたコーガは、彼の足を止めようと襲いかかるホラーたちを一太刀のもとで撫で斬りながら、なおも彼女の元へと急ぎます。




カオルンは戸惑っていました。
意識がまだ混濁していて、自分の置かれている状況が把握しきれません。
霞みがかかったような意識の奥深いところで聞こえてくる

   さあ、選ぶがよい…
   おまえのその腹に宿るであろう赤子の父親を…
   選べ… さあ…

という囁き声には抗うことができないのです。
それでも顔を少し左右に振り、カオルンは視線をあげました。
すると、そこには、ハーリーティーの息子たちが、花道を作るように、左右に分かれてずらりと並んでいるのが見えました。
彼らはカオルンに選んでもらえるように、それぞれが実に魅力的な姿態で彼女を誘っています。

バラの花を片手に王子様風イケメンは、ウィンクしてアピールしています。
大人の色気ダダ洩れの和装男子は、少し憂いを帯びた笑みを浮かべています。
はじけるような笑顔もまぶしい年下ワンコ系男子は、ハグしたそうにうずうずしています。
何やら難しそうな本を持った知的なメガネ男子は、細く長い指でメガネを引き上げ、涼やかな流し目を送っています。
超ビキニパンツ一丁のムキムキマッチョは、これでもかとばかりにその肉体美を誇示しています。

カオルンは、そんな彼らの間を歩き出しました。赤ん坊の父親を求めて…

カオルンは彼らの ’魅力的’ なアピールに、時に赤くなったり、時にビクついたりしながらも、時に苦笑したりしながら、ひとりひとりに対して首を振ったり、手を振ったりしながら歩いていきました。



(誰の手も取るなっ! カオルンっ!)

コーガは祈るような思いでひた走ります。
が、そんな彼の目に、驚くべき光景が見えてきました。



ホラーはただ醜く、卑しく、低能なわけではないようです。
ハーリーティーの息子たちの中でも少し知恵のまわる1体のホラーが、どんなに魅力的な姿をしてもカオルンの興味が引けないことを知り、考えたのです。
そして、そのホラーは、姿を変えました。なんと、コーガの姿に、です。

コーガとそっくりな顔をしたホラーの前で、あろうことかカオルンが足を止めました。

「っ!」

それを見たコーガは血の気が引きました。

『まずいぞ、コーガっ!』

カオルンがそいつの手を取れば、たちまち、そいつによってカオルンが汚されてしまうでしょう。
こめかみが痛くなるくらいのドクドクとした鼓動を感じること、数秒…

まじまじとコーガに似たホラーを見つめていたカオルンが、小さな溜め息を吐き、首を横に降りました。

コーガは心底ほっとしました。
でも、それは長く続きません。
カオルンの様子を見たホラーが我も我もとコーガの姿を真似し始めたのです!
再び焦りを感じたコーガですが、ホラーたちの模倣はちょっとずつ残念なものだったからです。

顔はそっくりでも、コーガはあんなに足が短くありません!
あんなふうにヒョロヒョロな身体ではありません!
あんなに声は高くありません!
あんなふうに女性が喜ぶようなプレゼントはしません!
あんなふうに甘い言葉は囁きません!
あんなにヘラヘラ笑いません!

カオルンは少し悩みつつも、彼らの手を取ることはありませんでした。

けれども、とうとう、あるホラーが完璧なコピーをしました。

整った顔。
するどい視線。
固く引き結んだ唇。
長い手足。
引き締まった鋼の身体。

そのホラーに、カオルンは強い反応を示しました。
ふっと目が合ったとき、険しい表情が緩み、低い声が彼女の名前を呼びました。
「カオルン…」

そのどこか甘さを含んだ声に導かれるように、カオルンはホラーに近寄りました。
そんな彼女にコーガの姿をしたホラーが手を差し伸べます。
カオルンも手を前に出しました。
彼女の白く細い指が震えています。

  あと1メートル…
  50センチ…
  20センチ…

  残り10センチ…

ほんの少し前に差し伸べれば触れてしまうところまで近づいたとき、カオルンへと伸ばされたホラーの手が、牙狼剣によって叩ききられてしまいました。

  グギャー

恐ろしいホラーの叫び声にカオルンが歩みを止め、数秒の時間をおいて、キャーと悲鳴をあげました。
目を見開き、ガクガクと震える自分の身体を抱くようにして恐怖に耐えるカオルンの前に、息を切らし、汗まみれのコーガが立った。

「カオルン…」

気づかわしそうなコーガの声に、カオルンはこわごわと視線をあげました。
そこには、痛ましそうに眉をひそめたコーガの顔が見えました。

「…コ…ガ?」

掠れた弱々しい声がその名を呼びます。

「カオルン…」

少しだけほっとしたコーガがカオルンに歩み寄ろうとすると、空気を読まないなんとも無粋なホラーが彼の背後から襲いかかろうとしました。

『コーガ!』

バルザの警戒を促す声と同時に、その卑劣な攻撃を察知していたコーガは振り向きざまに袈裟掛けに斬り捨てました。
そして、再びカオルンのほうに向きなおります。

「安心しろ、もう…」

カオルンに再び優しいまなざしを、と思っていたコーガでしたが、自分の胸に飛び込んできたカオルンに驚いて、目を見開きます。

「コーガぁ…」

ぎゅっとしがみつくように抱きついてくるカオルンに、コーガはその背を撫で、髪に鼻をうずめます。
そして、彼女を安心させようと、耳元で

「もう大丈夫だ…」

と囁きました。
カオルンの意識は完全に戻ったようでした。




ふたりの再会を喜び合う熱い抱擁…
けれども、その背後では、ギチギチと憎しみと怒気を孕んだ邪悪な気配が空気を震わせていました。

「おのれぇ」
「そいつは俺の女だ」
「おまえは邪魔だ」

さきほどまでは虫も殺さないような見目麗しい姿をしていたホラーが、その醜い本性をチラチラと垣間見せながら1箇所に集まり、じわじわと大きな黒い塊を形成していきました。
見上げるほど大きく膨れ上がったその塊に、コーガはカオルンを背に庇いながら数歩後ろに下がりました。
ゴム人形のように縦に横に伸び縮みしていた姿が、だんだんひとつの形をつくろうとしています。
それが、逆三角形の顔に巨大な目と大顎を持ち、2箇所の関節を持つ長い前腕の先端がノコギリ状の刃を持つ姿になったとき、レイがふたりの元に追いついてきました。

「コーガ! なんなんだ、こいつは…」

『ホラーの中には複数の個体がひとつに融合するケースもあるんだが、ハーリーティーの子どもがそのタイプだとはな…』

さすがのバルザも知らなかったのか、目の前の巨大な姿に目を剥いていた。
それに対して、コーガはただ

「ホラーは斬る。それだけだ…」

と言い、

「そだな…」

と答えたレイがニヤッと笑いました。

「カオルン、下がってろ…」

背中ごしに横顔だけを見せてコーガが、背後に庇っていたカオルンに言うと、

「ふたりとも気をつけてね」

と声をかけ、岩陰に身をひそめました。
それを見届けたふたりは、

「行くぞ、レイ!」

「ああ!」

と視線を交わしてお互いにうなずきあい、目の前の巨大なホラーに向かっていきました。



to be continued
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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