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きんのまなざし ぎんのささやき

もしもの話(10)

いよいよ決戦の火ぶたが切って落とされる!
そうだ、剣を取れ、コーガ! レイ!

あれっ? アクション、どこいった!?



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薄暗い洞窟の中で、バルコニーのように突き出した大岩の上にぼぉっと翡翠色の光が浮かんだかと思うと、妖しいほどの美貌の女が姿を現しました。

「「はっ」」

コーガとレイは息を飲みました。
それは、女に腕を引かれて歩いてくる人物がカオルンだったからです。
素肌も透けてしまいそうなほど薄い白いシンプルなワンピースを身に着け、まるで魂を抜かれたかのように無表情のまま、無抵抗で機械的に足を進める彼女の姿を見て、コーガもレイも大きく顔を歪めました。

「サエジーマ国の王よ、よく来たねぇ」

不敵な笑みを浮かべるハーリーティーに、

「おまえに会いたくて来たわけではない!
 我が妃を返してもらおうか!」

ととがった声でコーガが言い放ちます。

「まあまあ、そう慌てずともよいではないか。
 おまえの愛しい妃は、子どもがどうしてもほしいと、わざわざわたしに会いに来てくれたんだよ?
 ならば、手ぶらで返すわけにも行くまい?
 ぜひとも、かわいいかわいい赤子を腹に宿して帰ってもらわねば…」

そう言いながら、ハーリーティーは、黒く長い爪の先でくいっとカオルンの顎を持ち上げ、カオルンの顔をねっとりとした視線で眺めます。

「おまえの妃は、本当にきれいな顔をしているねぇ
 だけど、身体のほうは少しやせすぎで残念だ…」

そう言いながら、顎の下にあった黒い爪が移動して、カオルンの喉をつつつっと通り過ぎ、彼女の胸の先端で止まりました。
カオルンは無表情のまま、身体だけがビクンと反応しています。
それを見て、コーガは唇をぎりりと強く噛みしめました。

「だが、まあ、さほど問題ではあるまい。
 わたしの息子たちの中には、こういう慎ましい身体を好む子もいるだろうからね。

 王よ、孕ませることができなかったおまえの代わりに、わたしのかわいい息子たちが妃の相手をするから、安心するがいい。
 なんなら、その間、そこにいる見目麗しい騎士もひっくるめて、わたしがおまえたちの相手をしてあげてもいいぞ?」

ハーリーティーの言葉を憤怒の形相で聞いていたコーガたちは、

「その必要はないっ!」

「誰がおまえなんかに相手をしてもらおうと思うかよっ!
 さっさとカオルンを返せっ!」

と口々に叫んだ。
それを聞いても、ハーリーティーの顔から余裕は消えませんでした。

「おやおや、そうかい?」

そう答えたハーリーティーは、コーガたちから息子たちに視線を移すと、

「どうする?
 この娘(こ)をあいつらに返してもいいかい?」

と訊いた。
すると、案の定、「いやだ」とか「返すもんか」とか「早くそいつをくれ」とかいった声が返ってきました。

「そうかい、そうかい…
 あ、いいことを思いついた!」

ふいに、ハーリーティーがにたりと笑いました。

「よくお聞き、息子たちよ!
 赤子の父親はこの娘に決めさせようと思う。
 この娘が自分から手を取り、その身を委ねた者に、この身体を好きにする権利を与えよう」

「何言ってやがるっ!」

レイが怒りをむき出しにして叫びました。
ですが、素知らぬ顔でハーリーティーは言葉を続けます。

「いいかい? くれぐれも大事に扱うんだよ?
 間違っても無理矢理引っ張ったりするんじゃないからね?
 人間なんて脆(もろ)いからね。すぐに腕が取れたり、足がもげたり、あっけなく壊れてしまうんだから… いいかい、わかったね?」

そう言うと、ハーリーティーはカオルンの耳元で何かを囁きました。
カオルンは、わかった、とでもいうように小さくうなずくと、ゆっくり歩きだし、大岩の先端のほうへと足を進めました。

「カオルンっ!」

「だめだ、止まれ!」

けれども、コーガたちの静止の声が聞こえていないかのように歩調を変えない彼女を見て、コーガとレイは剣に手をかけながら走り出しました。

『急げ! コーガ! レイ!』

バルザが叱咤するように声をあげたときには、彼らが近づくのを阻止しようとして襲いかかる素体ホラーの何体かが、コーガとレイによって斬られていました。

コーガはレイを振り返ります。
すると、レイの手には、ソウルメタルの双剣が握られていました。

「やはりな…」

薄々そんな気はしていましたが、やはりレイもホラーを斬ることができるソウルメタルを扱えるようになっていたのでした。

「へへへ、バレてた?
 コーガばかりにいいかっこさせたかないんでね。この国に来てから猛特訓したぜ!」

そう言って、レイは剣を肩に担ぐようにしてポーズを決めました。
持つ者の心の持ちようによっては、重くてとても持ち上げられないようになるソウルメタルを、彼はいともやすやすを扱っています。
が、すぐに険しい顔をしてレイは言いました。

「だから、おまえはカオルンの元に急げ!
 雑魚は俺が片づける!」

そう言って、レイはまた一体、手近なホラーを斬りました。

「すまない!
 だが無茶はするなよ?」

「わかってる! いいから、行け!」

そう叫びながら、ホラーの群れに飛び込んでいくレイの背中に、コーガは、

「頼んだ!」

と短く言うと、するどく前方を睨みつけて、カオルンの元へとひた走りに走りました。

カオルンはというと、すでに大岩の先端まで来ていました。
彼女のつま先がもう、先端から先に出ています。
ですが、彼女は操られているからか、その顔にはなんの恐怖も浮かべずにぽーんと弾みをつけて前方にジャンプしたではありませんか!
鳥の翼をかたどるように両手を広げていますが、まぎれもなく人間である彼女は中空にとどまることなどできずに、それなりのスピードで落下していきました。
その様子を見て、青くなるコーガ。

(カオルンっ!)

ところが、次に目にした光景に、コーガはほっと胸を撫でおろしました。

カオルンの落下地点辺りにいた、貴公子然としていた何人かの男たちが、背に黒い羽をにょきにょきと出現させて、カオルのほうへと飛びたったのです。
そして、彼らの手によってカオルンの身体は四方から支えられ、ゆっくりと地面に降り立つのが見えたからでした。

けれども、安心したのもつかの間、カオルンが誰かの手を取れば、あっという間に彼女の身体はホラーによって弄ばれてしまうのです。
それを思うとコーガは焦らずにはいられません。

カオルンのいる位置までは、まだ何10メートルかありました。
しかも、コーガの行く手を阻もうと、ホラーたちが何体もコーガに襲いかかってくるのです。

(カオルン! 誰の手も取るな! 頼むっ!)

走っていて感じるのとは別の息苦しさを感じながらも、コーガはひたすら前だけを見て、ホラーたちを薙ぎ払いながら進んでいきました。


to be continued
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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