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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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ゆめうつつ

何を妄想しようかな… と思い、ふと思いついたときには走り書きしておいたメモを発見!
今日はこれで妄想劇場、開演です。




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鋭いまなざしが一点を見据えている。

その魔戒騎士は手にした剣をギリリと握り直したかと思うと、頭上高くに掲げた状態から振り下ろし、大きく横に薙ぎ払う。
その一振り一振りは重く強く、迷いがない。

繊細さは微塵もない。
ただただ力で敵を退けるという、シンプルにして明快な豪の剣。
それが、彼の剣捌(さば)きを見て受ける印象だった。

ビュンビュンと空気を震(ふる)わして振り回されていた剣が、剣先を身体の左下にした状態で止まった。
そして、

「ハッ」

という気合いととも、救い上げるように大きく右上方へと振り払われる。

 ブゥゥゥゥン

渾身の一撃が作る波動が大地を揺さぶり、ビリビリと震える空気が頬に痛いくらいだ。

やがて、残心の状態から剣を引いた魔戒騎士の背後で、カサカサと茂みが揺れた。
チラッとそちらに意識を置いた彼だったが、少しも慌てず剣を鞘に納めてから、鷹揚に振り返った。
彼の目線の先の茂みがユサユサと大きく揺れたかと思うと、やがてそこから禿頭(とくとう)に髭を生やした眼光鋭い恐ろし気な魔戒法師が姿を現した。

魔戒法師と魔戒騎士の視線がバチっと交わる。
一触即発か… と思われた次の瞬間、魔戒法師は手に持っていた荒縄でぶら下げていた徳利をひょいっと持ち上げ、ニカッと破顔した。
徳利の中身は、魔戒法師の好きな赤酒であろう。
それを見た魔戒騎士も、真一文字に結ばれていた口の端がくいっと上げてから、軽く会釈を返した。

「ご無沙汰だな、阿門法師」

「元気にしておったか、大河よ」






赤い大きな野点傘が差しかけられた、緋毛氈の敷かれた縁台。
そこに、ふたりは向かい合って座った。
ふたりの間には、バルチャスの盤。
ふたりは、紅白それぞれの駒を手に取り、手早く並べていった。

「おまえさん、鋼牙のことは聞いておるか?」

ちらりと上目遣いで大河を見ながら、阿門が声を掛ける。

「牙狼として、だいぶん様(さま)になってきたようだ、と…」

大したことはないというような大河のその答えに、阿門は驚いて、

「何を言う! 鋼牙は、これまでの牙狼の中でも歴代最強と評判ではないか」
と返した。
大河はそれに苦笑した。

「いや… 鋼牙には、まだまだ強くなってもらわなければ困る」

「なんと! まだ強くなれと言うか?」

阿門の言葉に、大河は視線を上げ、しっかりと法師の目を見て言った。

「魔戒騎士が、現状に満足しているようでは駄目だろう?」

それはそうじゃが、と呻くように呟く阿門。

「じゃが、おまえさんもかつては牙狼の鎧を継承していた男だ。
 息子とはいえ、鋼牙が歴代一と称されることに、心中では複雑な思いもあるのではないか?」

それを聞いた大河は、少し寂しそうな顔をして笑った。

「阿門法師。俺はもう死んだ身だ。
 その死んだ俺がどう足掻こうが、生きている者には勝てやしないだろ?」
「ほっほっほっ」

阿門が身体を大きく揺らして笑う。

「それを言うなら、生きている者だって死んだ者には勝てやせんではないか。
 ん、違うか? 大河よ。
 鋼牙の中では、今でもおまえさんは、強くて超えられない魔戒騎士であるだろうよ」

それを聞いた大河は、ふっと穏やかな笑みを浮かべる。

「そうだろうか?」

「ああ、そうじゃとも!」

そんな会話を交わしたふたりが、わっはっはっと笑い合う…





ふと、鋼牙の目が覚めた。
うっすらと寝室を白く照らす朝の光の中、鋼牙は今の今まで見ていた夢のことを考えた。
だが、ほんの少し前のことだというのに、夢の輪郭は早くもぼやけてしまっていた。

(父さんと阿門法師の夢だった…)

詳細を思い出そうと再び目を閉じてみるが、夢の欠片は指の間から零れ落ちた砂のようで、もはや回収する手段はなかった。






「おはようございます、鋼牙様」

朝食の席を整えていたゴンザが、起きて来た鋼牙に声を掛ける。

「おはよう」

それに応えた鋼牙は、まっすぐに食卓に向かう。

いつもと同じように朝食を済ませた鋼牙が、

「元老院に行ってくる」

と言い、白いコートを着込んだ。

「帰りは遅くならない」

そう言って、リビングを出ようとした鋼牙に、ゴンザは

「承知いたしました」

と答えながら後を追う。

が、鋼牙はドアに手を掛けた状態で立ち止まった。
そして、わずかに振り返って、

「ゴンザ、夕食のときでいい。赤酒を用意できるか?」

と願った。

「赤酒… でございますか?」

「ああ」

「…」

ゴンザは視線を横にそらしてわずかに考えたが、すぐに

「かしこまりました」

と請け負った。

「では、行ってくる」

「行ってらっしゃいませ」

鋼牙の背に向かい、頭を下げて見送ったゴンザが再び顔を上げると、パタンと玄関のドアが閉まるところであった。
ゴンザはそのドアを見つめながら、

(そう言えば、阿門法師が亡くなったという知らせが届いたのは、ちょうど今頃のことでございましたか…)

と思い出していた。
あれからもう10年以上も経ってしまった。

(わたくしの髪が薄くなるのも仕方ありませんな…)

フッと寂しそうな笑みを浮かべたゴンザは、赤酒の用意に取り掛かるべく、その場を離れた。





「あ、これは… 大河よ、少し時間をくれ」

「おや? 待ったはなしのはずだったが?」

「いや、これは待ったではないぞ、うん」

「じゃあ、なんだと言う?」

「それはだな…」

赤酒にだいぶん顔を赤らめながらなんとか言いつくろおうとする阿門と、それを少し意地悪そうに見守る大河。
そんな光景がどこかで繰り広げられている… かもしれない。



fin
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「夢現(ゆめうつつ)」の意味は…
①夢と現実。
②夢とも現実とも区別がつかない状態。また、ぼんやりしている状態。

夢かもしれないけど現実かもしれない、そんな感じでタイトルをつけてみました。

今回は、今は亡きふたりが、あの世で再会してバルチャスに興じていたらいいなぁ、とそんな気持ちで妄想してみました。
夕食時、赤酒を前にして、鋼牙さんは何を想うんでしょうね?

結構、走り書きになってしまったので、わかりにくい部分があるかもしれませんが、皆様の頭ン中でうまく補完してくださることを願って…

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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