きんのまなざし ぎんのささやき
牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです
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ここから(2)
どこからともなく飛んできた石礫(いしつぶて)。
それを投じたのは!?
…というわけで、続きでございます。
それを投じたのは!?
…というわけで、続きでございます。
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長身の黒い影が烈花の前で立ち止まった。
だが、月が雲に隠れていて男の表情は見えない。
「お久し振りです、烈花さん」
男の声が闇を伝わり烈花の耳に届く。
その一言だけでも、こちらの気持ちを和ませるような穏やかな雰囲気が漂ってくる。そんな柔らかい声だった。
相変わらず男の表情は見えず、首が痛くなるほど見上げなければならない身長差だったのに、不思議なくらい威圧感が感じられないのは、生来、この男が持つ穏やかな気性のせいなのだろう。
「ああ。久し振りだな、レオ…」
烈花がそう返したとき、雲が切れ、月の光がふたりの立つ場所まで届いた。
その柔らかな光が照らしだしたレオの顔には、想像通りのふんわりと優しい笑顔が浮かんでいた。
「さっきの石礫(いしつぶて)だが…」
と烈花が切り出したところで、
「あぁ、あれっ!
すいませんっ、余計なことでしたよね?
なんていうか、気付いたら、こうつい手が動いちゃってて…」
レオは激しく動揺しながら、頭を掻き掻き、そう言った。
その慌てぶりに烈花は思わずフッと表情を緩めたが、すぐに引き締めて
「いや… そんなことはない。
あれのお陰で助かった。礼を言う…」
と頭を下げた。
「そんなっ、やめてください! 大したことなんかしてないんですから。
僕があんなことしなくても、きっと烈花さんならうまく対応していたと思うし…」
「いや、あのホラーは強かった。
お前の石礫でヤツの気をそらせなかったら、きっと始末するのに手こずっていただろう。
下手をしたら大怪我を負っていたか、あるいは命も…」
「そ、そんなことはないですって!
確かに頭も良さそうだったし、動きもかなり俊敏なヤツだったけど、烈花さんだって十分相手の攻撃に対応できてたし…」
「それはそう見えただけだ。
実際のところ、躱(かわ)すのもギリギリだった」
「でも…」
「レオ!」
あれこれと言葉を尽くして烈花を気遣ってくれるレオを、仁王立ちとなった烈花が一喝して寸断した。
身長差をものともせずレオを睨んでいた烈花が、肩の力をフッと解いた。
「いったいオレたちはなんの言い争いをしているんだ?」
なかば呆れた調子で烈花が言うと、
「ほんとですね。なんだかバカなことをしてたみたいです…」
とレオも申し訳なさそうに答えた。
そうして、目を見合わせたふたりは、一呼吸置いた後、同時にプッと吹き出して笑い合った。
笑顔を交わしながら、レオは思い出していた。
烈花と初めて会ったときのことを…
あれは、レオの双子の兄シグマのためにギャノンの体内に取り込まれた鋼牙を、涼邑零とともに助け出そうとしていたときのことだった。
結局のところ、シグマの前ではふたりとも歯が立たなかった。
そんな彼らの前に表れた烈花は、魔戒騎士がふたりも揃っていて情けない、と咎(とが)めた。
(あのときの烈花さん、怖かったなぁ…)
なにせ、魔戒法師が魔戒騎士を、女が男を、年下が年上を非難したのだから、レオも驚いた。
確かに、自分は魔戒騎士としての力も経験も十分とは言えないが、黄金騎士 牙狼である鋼牙と並び称されるほどの零までをも真っ向から堂々と非難できる烈花に対して、レオは感嘆のような気持ちさえ持ったものだ。
実際のところ、かねてから魔戒騎士に比べて魔戒法師は格下に思われる節(ふし)はあった。
直接、ホラーを消滅させることのできるソウルメタル製の剣を振るえるのは魔戒騎士だけだから。
けれども、魔戒騎士の誕生よりもはるか昔からホラーと対峙していたのは、魔戒法師だ。
魔戒騎士が相棒として頼りにしている魔導具たちを作っているのもまた、魔戒法師。
そうした気概が歪んだ卑屈さを生み、時として騎士と法師との間に軋轢(あつれき)として現れることもあった。
だが、レオの場合はより一層複雑だ。
レオ自身、父からは狼怒(ロード)の鎧を継いだが、魔戒法師としての道も捨てきれていない。
魔戒騎士としても異質、魔戒法師としても異質な存在であることを自分でも認識していて、それに心を掻き乱されることもあった。
いや、現在に至ってもいまだその想いは存在する。
それに、兄のこともある。
魔戒騎士すべてを消滅させ、人間を糧(かて)としてホラーを殲滅することを策謀したシグマ。
そんなシグマを止めることができなかったことが、消えない楔(くさび)として今も心に突き刺さっている。
それでも、今、自分にできることを精一杯やろうと歯を食いしばって生き続けることができるのは、鋼牙を始め、零や、カオル、ゴンザといった人たちが、レオを案じ、信じていてくれるからこそだ。
とは言え、優しい言葉をかけてくれる、とか、そういう単純なことではない。
彼ら自身が、今出せる力を、今できることを、闘いの中や生活の中で発揮し、自(みずか)ら体現しているのを目(ま)の当たりにしているからだった。
今だってそうだ。
烈花に、レオは頭を下げられたのだ。
数年前、初めて会ったときは厳しく叱咤された、あの烈花に、だ。
魔戒法師崩れの魔戒騎士
魔戒騎士になり切れなかった魔戒法師
大罪人シグマの弟
今も囁かれる心無い中傷の的(まと)である自分に、
「おまえのお陰で助かった」
と素直に頭を下げ、礼を言う烈花の潔(いさぎよ)さにレオは救われている。
(こんな俺でも、烈花さんの役に立ったのだ。
まだもう少し、自分にもできる何かがあるのかもしれない。
俺にも… 俺にも…)
to be continued(3へ)
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長身の黒い影が烈花の前で立ち止まった。
だが、月が雲に隠れていて男の表情は見えない。
「お久し振りです、烈花さん」
男の声が闇を伝わり烈花の耳に届く。
その一言だけでも、こちらの気持ちを和ませるような穏やかな雰囲気が漂ってくる。そんな柔らかい声だった。
相変わらず男の表情は見えず、首が痛くなるほど見上げなければならない身長差だったのに、不思議なくらい威圧感が感じられないのは、生来、この男が持つ穏やかな気性のせいなのだろう。
「ああ。久し振りだな、レオ…」
烈花がそう返したとき、雲が切れ、月の光がふたりの立つ場所まで届いた。
その柔らかな光が照らしだしたレオの顔には、想像通りのふんわりと優しい笑顔が浮かんでいた。
「さっきの石礫(いしつぶて)だが…」
と烈花が切り出したところで、
「あぁ、あれっ!
すいませんっ、余計なことでしたよね?
なんていうか、気付いたら、こうつい手が動いちゃってて…」
レオは激しく動揺しながら、頭を掻き掻き、そう言った。
その慌てぶりに烈花は思わずフッと表情を緩めたが、すぐに引き締めて
「いや… そんなことはない。
あれのお陰で助かった。礼を言う…」
と頭を下げた。
「そんなっ、やめてください! 大したことなんかしてないんですから。
僕があんなことしなくても、きっと烈花さんならうまく対応していたと思うし…」
「いや、あのホラーは強かった。
お前の石礫でヤツの気をそらせなかったら、きっと始末するのに手こずっていただろう。
下手をしたら大怪我を負っていたか、あるいは命も…」
「そ、そんなことはないですって!
確かに頭も良さそうだったし、動きもかなり俊敏なヤツだったけど、烈花さんだって十分相手の攻撃に対応できてたし…」
「それはそう見えただけだ。
実際のところ、躱(かわ)すのもギリギリだった」
「でも…」
「レオ!」
あれこれと言葉を尽くして烈花を気遣ってくれるレオを、仁王立ちとなった烈花が一喝して寸断した。
身長差をものともせずレオを睨んでいた烈花が、肩の力をフッと解いた。
「いったいオレたちはなんの言い争いをしているんだ?」
なかば呆れた調子で烈花が言うと、
「ほんとですね。なんだかバカなことをしてたみたいです…」
とレオも申し訳なさそうに答えた。
そうして、目を見合わせたふたりは、一呼吸置いた後、同時にプッと吹き出して笑い合った。
笑顔を交わしながら、レオは思い出していた。
烈花と初めて会ったときのことを…
あれは、レオの双子の兄シグマのためにギャノンの体内に取り込まれた鋼牙を、涼邑零とともに助け出そうとしていたときのことだった。
結局のところ、シグマの前ではふたりとも歯が立たなかった。
そんな彼らの前に表れた烈花は、魔戒騎士がふたりも揃っていて情けない、と咎(とが)めた。
(あのときの烈花さん、怖かったなぁ…)
なにせ、魔戒法師が魔戒騎士を、女が男を、年下が年上を非難したのだから、レオも驚いた。
確かに、自分は魔戒騎士としての力も経験も十分とは言えないが、黄金騎士 牙狼である鋼牙と並び称されるほどの零までをも真っ向から堂々と非難できる烈花に対して、レオは感嘆のような気持ちさえ持ったものだ。
実際のところ、かねてから魔戒騎士に比べて魔戒法師は格下に思われる節(ふし)はあった。
直接、ホラーを消滅させることのできるソウルメタル製の剣を振るえるのは魔戒騎士だけだから。
けれども、魔戒騎士の誕生よりもはるか昔からホラーと対峙していたのは、魔戒法師だ。
魔戒騎士が相棒として頼りにしている魔導具たちを作っているのもまた、魔戒法師。
そうした気概が歪んだ卑屈さを生み、時として騎士と法師との間に軋轢(あつれき)として現れることもあった。
だが、レオの場合はより一層複雑だ。
レオ自身、父からは狼怒(ロード)の鎧を継いだが、魔戒法師としての道も捨てきれていない。
魔戒騎士としても異質、魔戒法師としても異質な存在であることを自分でも認識していて、それに心を掻き乱されることもあった。
いや、現在に至ってもいまだその想いは存在する。
それに、兄のこともある。
魔戒騎士すべてを消滅させ、人間を糧(かて)としてホラーを殲滅することを策謀したシグマ。
そんなシグマを止めることができなかったことが、消えない楔(くさび)として今も心に突き刺さっている。
それでも、今、自分にできることを精一杯やろうと歯を食いしばって生き続けることができるのは、鋼牙を始め、零や、カオル、ゴンザといった人たちが、レオを案じ、信じていてくれるからこそだ。
とは言え、優しい言葉をかけてくれる、とか、そういう単純なことではない。
彼ら自身が、今出せる力を、今できることを、闘いの中や生活の中で発揮し、自(みずか)ら体現しているのを目(ま)の当たりにしているからだった。
今だってそうだ。
烈花に、レオは頭を下げられたのだ。
数年前、初めて会ったときは厳しく叱咤された、あの烈花に、だ。
魔戒法師崩れの魔戒騎士
魔戒騎士になり切れなかった魔戒法師
大罪人シグマの弟
今も囁かれる心無い中傷の的(まと)である自分に、
「おまえのお陰で助かった」
と素直に頭を下げ、礼を言う烈花の潔(いさぎよ)さにレオは救われている。
(こんな俺でも、烈花さんの役に立ったのだ。
まだもう少し、自分にもできる何かがあるのかもしれない。
俺にも… 俺にも…)
to be continued(3へ)
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コメント
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
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