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きんのまなざし ぎんのささやき

大事なことは先に言え!

魔戒烈伝も残りあと1回!
ラス前にして初めて魔戒騎士がメインのお話キタ~♪

というわけで、今回は、第11話「影日向」をネタに、楽しく楽しく妄想させていただきました!




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ここは閑岱。
路傍の石に腰を降ろしている邪美の、はるか頭上から軽やかな雲雀(ひばり)の声が聞こえている。
しかし、どうしたわけか、よく晴れた青空が広がっているというのに、邪美の表情は曇っていた。

「おまえは来なくていい」

と言われていた。

「留守の間、閑岱のことを頼む」

とも。
出会った頃よりは幾分険しさの取れた男の顔が、邪美の脳裏に浮かぶ。
だけど…

「よし!」

邪美は勢いよく立ち上がると、目的地を目指してまっすぐ歩き出した。

(待ってるだけなんて、あたしの性(しょう)じゃないからねぇ)

緑濃い閑岱の森の中を、邪美は法衣の裾を翻しながら歩いている。
その目は、きらきらと輝き、口元には笑みが浮かんでいた。





ガヤガヤとした雑踏。
どこかぎすぎすとした張り詰めた空気を孕(はら)みながら、たくさんの人が行き交っている。
邪美は、これまでにあちこちの街を訪れている。この街もそんな中のひとつだ。
だから、それなりに街の歩き方や楽しみ方といったものもわかってはいたが…

コンクリートと鉄とプラスチック…、少しもぬくもりが感じられない人工物に囲まれた中で、邪美は小さく溜め息をついた。

「はぁ…
 やっぱり緑豊かな閑岱が一番いいねぇ」

そう独り言をつぶやいて、思わずクスリと笑った。

閑岱は、邪美の生まれ故郷でもなんでもない。
ふとした縁がきっかけで、しばらくの間だけ滞在するつもりだったのだが、どうしたわけかそれ以後ずっと暮らす地となってしまった。
師であった阿門法師の亡き後、寄る辺(べ)のない浮き草のような自分にとって、これほど愛着を感じる場所ができたことに、今更ながら驚きと言いようのない喜びを感じる。

(このあたしでさえこんなふうに思うんだから、あいつの方はもっと…)

邪美は、視線の先にいる魔戒騎士に同情の目を向けた。
歩道脇の石の上に腕組みして渋い顔をしている魔戒騎士… 
そこには、およそ都会の喧騒の似合わない、山刀翼の姿があった。





翼が閑岱を離れるとき、どこに行くのか、なんの用があるのか、邪美には詳しい話を何一つしなかった。
けれども、蛇(じゃ)の道は蛇…
邪美が本気になれば、情報などはすぐに集まるものだ。
いつになく深刻な顔をしている翼のことが気になり、「翼の後を追おう」と邪美が決めたとき、翼の向かった街の名と、誰か人を探しているらしいということを掴むのに、そう大して時間はかからなかった。
それさえ掴めれば、翼と合流することも、そして、その地でより詳しい情報を集めることもそう難しくないように思えた。
果たして邪美の読み通り、この街での翼の動きはすぐに掴めたのだった。
しばらく翼を追いかけることで、翼の探している男の背格好や身体的特徴なども知ることができた。どうやら、名はカズマというらしい。
ところが、「やはり」というかなんというか、翼はどうも人探しが苦手なようで、思ったように成果があがらない。

(このまま一緒に行動していても埒があかないね…)

そう考えた邪美は、翼とは別行動を取り、独自に探りを入れてみることにした。
邪美は気の向くまま足を運び、一本の路地を無作為に選ぶと、ふと目についたガールズバーのドアをくぐった。





「いい加減にしろ!
 助けは必要ないと言ったはずだ!」

翼が苛立たし気に邪美に言い放った。思うように情報が集まらないことへの焦りもあるのだろう。
だが、不思議と邪美は腹が立たなかった。
長い付き合いの中で、生真面目過ぎてすぐにカッとなる翼に対して、ブレーキを掛ける役割が邪美には自然と身に着いてきたのだろう。

何をどこまで言えば、翼は怒るのか…
共闘の際、いつどういうふうに手を出せば、翼が闘いやすいのか…
そして、どういう言葉をかければ、翼の心が癒せるのか…

そういったことが、頭で考えるよりも邪美の感覚の中にいつの間にか根付いていた。
そして、同じことが翼にも言えた。

お互いの力を認め合い、信頼し合うことでふたりの攻撃は、防御は何倍もの威力となる。
そして、ついにホラーを倒すことができたのだった。





目的を果たした今となっては、この街に留まる理由はもうない。

「なぜついてくる。さっさと閑岱へ帰れ!」

横断歩道を渡りながら、少し後ろを歩く邪美に、翼は尖った声を掛ける。
そこには、昨夜、邪美の前で涙を流したことへの照れも含まれていただろう。
勿論そういったこともすべて理解したうえで、邪美はすべてを受け止める。

「おまえのためならいつでも力を貸してやるさ。
 今日も… あ・し・た・も。あさっても…」

「邪美…」

込み上げる感情に、翼の表情は切なげに歪む。

「…なんだい?」

一瞬、街の喧騒も、横断を急(せ)かせるような信号の音も、何もかもが消えた気がした。

「おい、信号が赤になっちまう!」

ゴルバの無粋な一言でハッと我に返ったふたりが、翼に手を取られて横断歩道を渡っていく。
ところが、道を渡り切った後もどうしたわけか手を放そうとしない翼に、邪美は戸惑いを覚えて「どうして?」と問いかけようとした。が、ふっと微笑んでそのまま翼に任せることにした。

「邪美…」

後ろを振り向かないまま翼が声を掛ける。

「身体の具合がよくないと言っていただろう?
 もう、いいのか?」

確かに、閑岱にいるとき、邪美は珍しいことに体調を崩していてすっきりしない状態が続いていたのだ。
そんなこともあって、心配した翼は邪美に閑岱でおとなしくしていろ、と言い含めるようにして留守を頼んだのだ。

「ああ、あれね…」

顔が自然とほころんでしまうのを、邪美は感じていた。

「大丈夫だ。病気なんかじゃないよ。
 あれは… ただの ’つわり’ だからね」

そう答えて、邪美は興味深そうに翼の反応を待った。
その顔はまるで悪戯を仕掛けて結果をわくわくしながら待つ少女のようだ。

 ピタッ

翼の足が唐突に止まる。
目の前で立ち止まった翼にぶつかりそうになった邪美は、慌ててお腹を庇いながら避(よ)けた。

「危ないじゃないか! 急に止まったりして…」

眉をしかめて抗議する邪美に向かって、翼はゆっくりと振り返った。
その顔は、怒っているような、驚いているような、信じられないような… とにかく絶妙な表情をしていた。

「邪美?」

呆けたように口を開いた翼が、ハッと正気を取り戻したようになって邪美の肩をガシッと掴んだ。

「今、なんと言った?
 おまえ… 子ができたのか?」

まるで邪美に噛みつくように翼は尋ねる。
少し驚いたように目を見開いていた邪美が、にっこりと笑った。

「ああ。
 …喜んでくれるかい?」

それを聞いた翼が、再び放心状態に陥りそうになったが、一気に怖い顔になった。

「なぜそんな大事なことを黙っていた!」

それが事実なら、翼は絶対に邪美の助けなど求めなかった。
自分が3度挑んで3度とも敗れた相手なのだ。
邪美を… いや、お腹の子どもを危険に晒すような真似は、どんなことがあろうとも避けねばならない。

「だって… はっきりわかったのはつい最近のことだしさ。
 伝えようにも、翼は閑岱を出た後で、いなかったし…
 それに、おまえが知ったら、あたしの助けなんかいらないと言うだろう?」

「あたりまえだ!
 たとえ、そうじゃなくても、おまえの助けはいらんと最初から言っていただろうが!」

眉間に深い深~い皺を刻ませて翼は怒鳴った。
そのあまりの大声に街行く人が怪訝そうな視線を向けるため、いたたまれなくなった邪美は翼を引っ張って、脇の方へと場所を移した。

「落ち着いておくれよ、翼…」

「これが落ち着いていられるか!」

まだ気の立っている翼は、頭から湯気の出そうな憤怒の形相だ。

「悪かったよ、あんたに黙っていて… でも、あたしは…
 翼、あんたのそばにいたかったんだよ」

少し萎(しお)れた様子で邪美は謝った。
とは言え、表向きは謝っているものの、内心、不満に思っているのだろう。口を少し尖らしている。

 ふぅーっ

目を伏せて大きな大きな溜め息をついた翼。
そして、ものすごく心配そうに言った。

「身体は? 腹の子は大丈夫なのか?」

「ああ… 多分」

「多分って、おまえ…」

気遣わし気に邪美と、邪美のお腹とを交互に見た翼は決然と言った。

「閑岱に帰るぞ!
 そして、大事ないかどうかちゃんと診てもらうんだ!」

その語気は、口答えなど決して許さない迫力があった。
邪美は一瞬反論しようと口を開きかけたが、すぐに思い直して、

「…はい」

としおらしく返事した。
そして、どちらともなく、ふたりの身体がすり寄ると、翼が優しく邪美の肩を抱くと、邪美はとてつもなくしあわせそうに目を閉じるのであった。





その後、帰途についたふたりだが、

「翼のやつは、閑岱に帰りつくまで邪美の手をしっかりと握って放さんかったわい」

と、ゴルバが教えてくれた。



fin
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正直なこと言っていいですか?
「陰日向」という話は、あんまり心が躍りませんでした。

翼って、こんな人でしたっけ?
こんなに複雑なこと考える人でした?
それに、なんだか女々しくないですか?
あと、ホラー斬った後も邪美に「さっさと帰れ!」と言いますが、「あんたはどうするの? 帰らないの?」とよくわからんことを仰る…
(ひょっとして、これは最終話へつながる展開なのか?)

…というわけで、勝手に「心躍る方向」へと妄想させていただきました。
この後、翼と邪美で閑岱へは帰らず、どこかに向かうとしたら「まったくもってナンセンスなお話」となってしまいますが… まぁ、そのときはそのときということで。

それと、本編中で、邪美さんが昼間っからお酒を飲んでいますが、あの中身は水ってことで!
妊娠中の邪美さんに気を利かせて、中身をすり替えておいたということにしてくださいね。(^▽^;)


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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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