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きんのまなざし ぎんのささやき

惑わされて(4)

カオルちゃんの奔放な妄想に、selfish も振り回されておりますが、
少しずつ方向を修正していこうかと…

いや、でもやっぱり、カオル嬢の妄想も捨てがたいですねぇ。

う~む。
…流れるに任せます、か。


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不安なまま、また何日かたったある日。

「大変です!」

その日、屋敷に飛び込んできたレオくんは、慌てた様子で叫んだ。

「どうしたの、レオくん!」

レオくんの様子になんだかイヤな予感がして、あたしも慌てて
聞き返した。

「まさか、鋼牙様に何かあったのでは!」

それはどうやらゴンザさんも同じみたいで、レオくんに掴みかからん
ばかりに尋ねた。

「はい…
 実は鋼牙さんが怪我をしたらしいのです」

「なんですって!」

あたしは一瞬にして顔が青ざめた。
ゴンザさんのほうは、あたしよりは少し落ち着いていて、

「それで、怪我の具合は?」

と、レオくんに尋ねた。

「はい、とりあえず、命には別条ないそうです。
 蒼穹さんがいち早く手当てをしてくれたので…」

「よかった…」

あたし達はそれを聞いて、心の底からホッとした。

「鋼牙さんは、どうやら、蒼穹さんを庇って怪我をしたみたいなんです。

 蒼穹さんが、いきなり伸びてきた蔓(つる)にからまれてしまって、
 鋼牙さんはすぐにそれを切ったそうなんです。
 でも、その蔓の汁には、強い幻覚作用を持つ物質が含まれていたので、
 鋼牙さんは激しい幻覚を見たようで…

 それで、その…」

レオくんがあたしの顔を見ながら、その先を言おうかどうしようか
迷っているみたいだった。

「なに? 言って、レオくん。
 あたしは大丈夫だから」

そう言いながら、あたしは、自分の心臓の鼓動を強く早く感じていた。
レオくんは、あたしの言葉にうなずいてから、話のその先を続けた。

「はい…

 その幻覚のせいで、鋼牙さんは、自分の左腕を切り落とそうと
 したらしいんです」

「!」

あたしはショックのあまり、言葉を失い、唇を噛みしめた。
強く握りしめた手が、小刻みに震える。
そんなあたしを気遣って、レオくんが、優しい声で語りかけてくれる。

「安心してください、カオルさん。

 蒼穹さんが、すぐにその幻覚作用を解く処置をしたそうです。
 そのお蔭で、鋼牙さんは左肩を少し怪我しましたが、そう深くは
 切っていないということです。

 今回は、ほんとに人選がよかったんですよ。
 蒼穹さんでなければ、素早く的確な処置が取れたかどうか…
 鋼牙さんは命拾いしました」

魔戒法師の持つ知識が鋼牙を救ったことに、レオくんはまるで自分の
ことみたいに誇らしく語った。
でも、すぐに真面目な顔をして、

「ただ、出血が多かったらしく、大事をとって出発を遅らせるみたい
 です」

と言った。
その言葉であたしの顔が再び曇ったのを見て、レオくんは慌てて
謝った。

「不安にさせるようなことばかり言ってすみません、カオルさん!
 けど、大丈夫ですよ!

 蒼穹さんも、鋼牙さんが怪我をしたことにずいぶん責任を感じて
 いるみたいで、献身的に治療しているされているそうですから、
 きっとすぐによくなりますよ」


(献身的に… か)

レオくんの話を聞きながら、あたしはイヤな予感がしていた。
案の定、頭の中では、また例の勝手な想像が始まったのだった。




上半身脱いだ鋼牙の左肩に、蒼穹が包帯を巻いている。
巻き終ると同時に、

「鋼牙さん、私のためにこんな怪我をさせてごめんなさい…」

と、蒼穹が涙を浮かべ、鋼牙にすがりついた。
鋼牙は、蒼穹の震えるか細い背中に手をやり、

「気にするな。
 それより、おまえに怪我がなくてよかった…」

と、優しいまなざしを向ける。
顔をあげた蒼穹の視線と鋼牙の視線がぶつかる。

「鋼牙さん…」

蒼穹はうっとりするようなまなざしになっている。

「蒼穹、少し寒いんだ… 暖めてくれないか?」

蒼穹は少し赤くなりながら、鋼牙の背中に覆いかぶさるようにして、

「これで、いいですか?」

と聞いた。
鋼牙の背中に、蒼穹の身体が柔らかくのしかかる。

「ああ… 蒼穹の身体はあったかいな…」

心底ほっとしたように、鋼牙は言う。
だが、

「もっと暖めてはくれないのか?」

と、意味深な視線を肩越しに蒼穹に向ける。
蒼穹は戸惑いながら、

「でも、それじゃ…
 鋼牙さんの傷に障(さわ)ります」

と、鋼牙の視線から逃れるようにして必死に返答した。
すると、そのささやかな抵抗を、鋼牙はあっさりと蹴散らした。

「こんな怪我などすぐによくなる。
 おまえがすべてを委ねてくれたら…」

そう言うと、鋼牙は蒼穹のほうへ向き直り、真っ直ぐ見つめて、再度
こう言った。

「暖めてくれ… 蒼穹…」

こんな熱い眼で見られたら、蒼穹はひとたまりもない。

「鋼牙さん… 私で、よければ…」

そう言うと、蒼穹は立ち上がり、着ているものを脱ぎ始め…





(もういや… やめて…)

きっと、あたしは半分泣きそうな顔をしていたんじゃないかと思う。
そんなあたしを見て、

「大丈夫でございますか? カオル様?」

と、ゴンザさん達が心配そうに覗き込んできた。

「あ、ごめんなさい。

 なんだか、ちょっと具合が悪くて…」

あたしは、弱々しい微笑みをつくって、ようやくそれだけ言った。

「無理もありません、鋼牙様のことがご心配なのですな…
 なぁに、鋼牙様は大丈夫でございますとも。

 カオル様が倒れられたのでは、逆に鋼牙様が心配なさいます。
 少し横になられて、お休みください」

親切にそう言ってくれるゴンザさんに、

「ありがとう… そうします」

と答えて、あたしは自分の部屋に下がった。





このごろのあたしはどうかしている。
何かと言えば、鋼牙と蒼穹ちゃんとの変な妄想をしてしまう。
でも、それが、

「ありえない!」

と強く否定できずにいる。
鋼牙を疑うようなことはしたくないのに…



(苦しいよ… 鋼牙…)

ベッドに横になったあたしは、身体を小さく丸めて、ぎゅっと目を
つむった。



to be continued(5へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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