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きんのまなざし ぎんのささやき

惑わされて(5)

強くて、スタイル抜群で、かっこいい彼が、若くてきれいな女性と
24時間一緒にいて、同じ目的のため協力し合っているのは不安なもの。

しかも、その彼が女性を庇って怪我を!

それとは別に、仕事が自分の力が及ばないところでストップが
かかっているもどかしさ。

さらに、自分の身体に起こった兆候への戸惑い。


カオルちゃんをどれだけ苦しめりゃすむんでしょうね。
よくも、こんなひどい状況を作ったもんだ…
ごめんよぉ、カオルちゃ~ん




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暖かい室内から、厚い雲が立ち込める冬の空をぼんやりと眺める。

(病院… 行かなきゃなぁ…)

そう考えては、小さな溜息をつく日々が続いた。

生まれつき体は丈夫なほうで、健康には自信のあるあたしは、
病院なんて、誰かのお見舞いのときしか行ったことがない。
バイト、バイトに明け暮れていた頃には、’お金’ はもちろん、
病院に行くための ’時間’ もなかった。
だから、’病院に受診に行く’ ということには、いまだに抵抗を
感じていしまう。
ましてや、それが産婦人科ともなると、できればこのまま行かずに
すませたい… という気持ちになるのだった。
一応、健康保険証も準備して、その気になれば、いつでも行けるはず
なんだけど、今日は寒いとか、天気が悪いとか、とにかくなんだ
かんだと理由をつけて、病院に行くことを先延ばしにしていた。



仕事のほうはというと、こちらも相変わらずで、クライアントからは
何も言ってこない。

(こっちの問題を先に片付けないとね…)

病院に行かない理由として、そんな優先順位をつけてみた。

わかっている!
その順位のつけ方は間違ってるとは、あたしだって十分わかっては
いるが、とにかくひとつひとつクリアしていこうと思い、こちらから
クライアントに連絡を取ってみた。
ところが、相手の態度がなんとも煮え切らない。

(いいの?
 駄目なの?
 んもう、はっきりしてよ!)

電話の相手の態度に加えて、日頃、溜まっていたイライラも手伝って、

「とにかく、返事は今週いっぱいまでお待ちます。
 それ以上は、とても…

 ええ… はい…

 こちらも仕事をしないと食べていけませんので、なんとかそれまでに
 お願いします!」

と、少し強気に話を進めて、電話を切った。

これで、仕事のほうは(クライアントの返事がどうなるかはともかく)
今週末までに事態が進展するはずだ。


そうなると、残る問題は…

(んー、今週末を待って、行くしかない… よね)

いつまでグダグダしていても、どうなるものでもない。
あたしもそろそろ覚悟を決めて、しっかり向き合わないとね。

(もし、鋼牙の気持ちがあたしに向いていなかったら、そのときは…)

不安を感じたまま、あたしは、窓の外に視線をやった。
厚い雲に覆われた空にいつの間にか亀裂ができ、そこから、うっすらと
神々しい光が降り注いでいた。
その美しい光景を見ているうちに、あたしの気持ちに何かスイッチの
ようなものが入った。

(えーい、そのときは、そのときよ!)

昔から、母は強し、というじゃないか。
一流のシングルマザー画家を目指すまでだ。
目標がちょっとばかり変わっただけ…
あたしは、自分を鼓舞するように握りこぶしにグッと力を込めると、
少しだけすっきりした気持ちで、冬の空を眺め続けた。



さて、その日の夕方。
今日はもう来ないものだと思っていたレオくんが、少し興奮気味に、
屋敷に飛び込んできた。

「カオルさん!
 大ニュースです!」

「どうしたの、レオくん?」

「やりましたよ、カオルさん!
 鋼牙さん達が、とうとう ’ダルクアロンのタネ’ を手に入れました!」

レオくんは、それはもうキラキラと輝くばかりの笑顔で、そう教えて
くれた。

「それはようございました」

ゴンザさんはあたしとレオくんと代わる代わる見て、にこにこしながら
そう言った。
あたしもすごくほっとして、笑顔を見せた。

「で、鋼牙達は元気なの?」

「はい。
 鋼牙さんの怪我も順調に回復しているようで、問題はないとのこと
 です。

 カオルさん。
 これで、あとは、鋼牙さん達が帰ってくるのを待つばかりですよ」

安心してください、とばかりに力強い口調でレオくんが断言した。
あたしも、それに応えてうなずいた。
すると、ゴンザさんが、

「帰ってくるには、行きと同じだけの日数がかかるのでしたね?」

と、レオくんに尋ねた。

「そうですね…

 まず、’菩提の森’ を抜けて、それからここまで帰ってこないと
 いけません。
 魔戒道は使えませんから、行きと同じくらいだとしたら… あと
 1週間ほどはかかるんじゃないでしょうか。

 でも、森さえ抜ければ、あとは危険なことはないはずです。
 少し時間がかかってしまいますが、まぁ、ゆっくりと鋼牙さんの
 帰りを待っていればいいでしょう」


鋼牙がもうじき帰ってくる!
それはほんとに嬉しい知らせだった。

でも、再会した鋼牙は、あたしの知っている鋼牙と変わりがない
だろうか?

受診した結果を伝えたら、どんな反応をするのだろうか?

そして、そのときの鋼牙のリアクションを、あたしは、冷静に
受け止められるだろうか?

不安がないと言えば嘘になる。
でも、時の流れは待ってはくれない。
あたしだけじゃなく、みんなに平等に時は流れるんだ。
立ち止まってはいられない。 あたしも、鋼牙も…



to be continued(6へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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