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きんのまなざし ぎんのささやき

月の光を集めて(2)

零くん、そして、花を題材にした今回の妄想

涼邑零と言えば、K田監督。
そして、花と言えば、selfishの中では、K田監督なのです。

闇を照らす者の第7話「住 Dining」では、向日葵
魔戒ノ花の第10話「食卓」では、サンダーソニア
を使ってたな、と。

K田監督だったら、この話はどんな映像になるのかなあ… などと、恐れ多いことを思いつつ、今夜も妄想に耽ります。



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サヤという名のその女性に会ったのは3年前のことだった。
今、目の前で満開に咲き誇っている花の名を教えてくれたのは彼女だ。
花の名は、ルピナス。
彼女が丹精込めて育て、増やしている花だった。
その花を目にしながら、零は彼女に会ったときのことを思い出していた。





「シルヴァ!
 ホラーの気配は確かにこっちのほうで間違いないんだな!」

月の弱々しい光の届かない林の中を走りながら、零は、自分の進むべき道を魔道具に確かめていた。

『えぇ、間違いないわ! 何とも言えない嫌な臭いがするもの…』

シルヴァの自信たっぷりなその返事に、零の目がギラリと光る。

「OK! 今度こそ追い詰めて、きっちり斬ってやらないとなぁ」

僅かに笑みを見せて緩んだ顔が、次の瞬間には温度を失くし、すっと引き締まった。
闇に紛れ逃げるホラーを追う彼もまた、闇を纏(まと)い、闇に生きる魔戒騎士。
闇の中を静かに蠢(うごめ)く追う者と追われる者の姿を、月光すら見届けることは難しかった。



地を蹴る音と自分の息遣いだけが聞こえる中を走り続けていた零は、いつの間にか林を抜け、開けたところに出て足を止めた。
それまでの林の中の湿ったような澱(よど)んだ空気から解放され、サワサワと吹き渡る緑の匂いのする優しい風に髪を吹かれると、一瞬だけホラーのことを忘れてほっと息を吐いた。
が、すぐに剣の柄を握る手に力が入ると、油断なく辺りを窺う。
開けているとは言っても、そこには70~80cmほどの草丈の植物が生えていて、地に伏せれば身を隠せないことはない。
だが、それ以外は大きな木もなく見通しはいい。
素早く2往復ほど見渡したところで、零はシルヴァに尋ねた。

「どうだ? 何か感じるか?」

零に訊かれるまでもなく、先程からずっと神経を研ぎ澄ましてホラーの気配を追っていたシルヴァは、すぐに

『おかしいわ。ホラーの気配が消えている…』

と答えた。

「どこかでヤツを追い越したんだろうか?」

そう言って零は林を振り返ったが、

『見て、零!』

というシルヴァの声に、零は視線を元に戻し、注意深く見るよう目をすがめた。すると、草原の向こう側に小さな家が見えた。
窓の向こうに小さな明かりがひとつあるだけで、ひっそりと息を殺すように存在していた。

「こんな場所に誰か住んでるのか?」

『おかしな気配は感じないんだけど…
 とにかく、行ってみましょう?』

シルヴァの言葉に零はうなずき、気配を殺して近づいていった。
窓のそばまで来ると壁に背を張り付けるようにしてから、そっと中の様子を覗いてみた。
中には、こちらに背を向けて座る髪の長い女がひとり、小さなランプの光のもとで何か繕い物をしているようだった。

零がシルヴァに目を向けると、シルヴァは

『彼女は人間よ』

と小さな声で返した。
それを聞いて怪訝な顔をした零だったが、少しだけ考えると、玄関のほうに足を進めた。

  コンコンコン

古びた木のドアを2度ほどノックすると、しばらくして、細くドアが開けられた。
すかさず、零がぐいっと力づくでドアを押し広げると、「きゃ」っと小さく悲鳴をあげて驚く女の顔の前で、カチッと魔導火を灯した。
揺らめく青い炎を見つめる怯えたような女の瞳の中には、ホラーに憑依された者にだけ浮かび上がる印はなかった。
零はそれを確認すると、あっという間に魔導火を消し去り、人懐っこい笑顔を浮かべてかがむようにして彼女に顔を見せた。

「こんな夜更けに驚かせてごめんね? ちょっと道に迷ってしまって…
 ちょっと道を教えてくれないかなぁ。そしたら、すぐに立ち去るから」

あまりに一瞬のことで、今何があったのか把握しきれずぼぉっとしていた女がはっとして、零にぎこちない笑みを見せました。

「それは大変でしたね。
 それなら泊めてあげたいところだけど…」

そう言って申し訳なさそうに眉をハの字にした彼女に、零は慌てて手を振ります。

「いいんだ、いいんだ。
 こんな正体もわからない男は簡単に家に入れちゃいけないよ!
 ただ、町の方向だけ教えてくれればそれでいいから…」

それを聞いて少なからず安心したような女が、

「それなら、この斜面をまっすぐ降りたらじきに道に出るわ。
 その道を右に行けば町に下りられるから…」

「そっか、ありがとう。ところで…
 さっき林の中を歩いてたら、何かが潜んでいるような気配がしたんだけど、ここには何か危険な獣でもいるのかな?」

そう訊きながら、零は注意深く彼女を見ていた。
そんなことには気にも留めず、女はうーん、と考え、

「この辺に熊が出た、という話は聞いたことないけど…
 ひょっとしたら猪かもしれないわ? 猪も怖いのよ、気をつけて!」

と心配そうな目をして言った。
どうやら彼女には不審な点はなさそうだ。
そう思った零は、

「ふうん、猪ねぇ… わかったよ。
 じゃあ、俺、行くから…
 ごめんね、ありがとう」

そう言うと、ひらひらと手を振ってドアから離れていった。
その姿はすぐに闇の中に溶け込んでしまい、

「あっ、せめてランタンを!」

と女が気づいたときには、零の姿は見えなくなっていた。
女は大丈夫かな、と心配そうに闇の中に目を凝らしていましたが、やがて諦め、ドアを閉めて錠を下ろした。



彼女の家から離れた後、零はシルヴァに尋ねた。

「ホラーの気配は?」

『…だめね、今夜はこれ以上は無理そうだわ』

それを聞いた零は大きく息を吐き、

「逃がしたか…」

と悔しそうに顔を歪めた。


to be continued(3へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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