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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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永遠のテーマ(1)

すいません、ちょっと壮大なタイトルをつけちゃいました。
…が、ほんと、ひょいっ、と思いついたことなので、そんな大層なモンじゃありません。

お気楽に楽しんでいただければ、ありがたいです~


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古代ギリシアの宮殿を思わせるような白亜の円柱が延々と連なっている。
向かう先は白く霞(かす)み、無事に目的地にたどり着けるかどうか、時に不安にさせるほどの長い廊下を鋼牙は歩いていた。

ここは元老院。
すべての番犬所を統(す)べる絶対的にして、崇高なこの組織の深層部に出入りが許されるのは、神官がその実力を認めた魔戒法師と魔戒騎士だけであった。

’約束の地’ から帰りついた後の鋼牙は、旅立つ前となんら変わりなく、ゲートの封印やホラー討伐に勤(いそ)しんでいた。
今日も、昨夜の成果について、その詳細をグレスに報告してきたところだった。

無限に続くかと思われた廊下を抜けて廊下を曲がると、鋼牙の目に、廊下の隅で親しげに話をしているふたりの男の姿が映った。
男たちのうち、鋼牙のほうを向いていた男が彼に気が付いた。
顔をあげて、

「よっ!」

と笑顔を見せると、背を向けているほうの男も気づいて、振り返ると人懐こい笑顔を浮かべた。

「鋼牙さん!」

鋼牙はふたりの元まで来ると立ち止まり、少しだけ相好を崩した。

「零、レオ…」

どうやらふたりもたまたまここでバッタリ会ったところのようだったが、鋼牙も交えて、しばし歓談することになった。





「鋼牙さん!
 鋼牙さんが約束の地に行っている間、零さんは凄いホラーと闘ったんですよ。
 ね、零さん?」

零はニコニコするだけで何も言わない。
そこで、レオが知っている限りのことを鋼牙に話し出した。

「なんでも、リングとかいうホラーで、ちょっと変わった思想を持ってたそうです。
 人間とホラーが共存するためのコミュニティー… リングが目指したものはそんな奇抜なものだと聞きました」

「人間とホラーの共存?」

険しい顔をした鋼牙が、視線をレオから零に移した。
零の顔からも笑顔が消えた。

「あぁ。
 無闇に人を襲わせないようにホラーたちを統率したコミュニティーだ。
 ホラーたちはリングの言うことを聞いて、決められた人間だけ喰らうよう我慢すれば、結界の張られたコミュニティーの中で俺たち魔戒騎士や魔戒法師から守ってもらえる、という寸法さ。

 そこにはもちろん、人間もいて、定期的に何らかの方法で喰われる者を決めていたらしい…」

「…」

鋼牙の顔がさらに険しくなった。

「なぜだ…」

思わず呻いたのはレオだ。
鋼牙と零の視線を集めたレオは、自分の感じた疑問を口にした。

「そのコミュニティーにいれば、いつかホラーに喰われるかもしれないんですよ?
 どうして ’そんなところにいよう’ なんて思う人間がいるんですか?」

「確かに…
 フツウに考えたら、そんな人間なんて ’いない’ と思っちまうんだが…」

零はすぐさまレオの疑問に同調してみせて、腕組みをしながら、吹き抜けになっている開口部から階下を見下ろし、ふたりから視線を外した。
レオと鋼牙は黙ったまま、零の動きを目で追った。

「コミュニティーにいたのは、犯罪に絡んだり、誰かに虐げられていたり… と、まぁ、そういった連中ばかりだ。
 人間社会にいるよりコミュニティーのほうが、ずっとリスクは少ないと考えるような人間を選んで、リンクは誘っていた」

「そんなぁ…」

レオは痛ましげな表情で言った。
それを見て、零は少し意地悪な顔を見せて、追い打ちをかけるように言った。

「リングに言われたよ。
 なぜ、身勝手な人間を守るのか?
 争いのない世界を目指す自分を斬るんだ、とね」

「…」

レオは黙るしかできなかった。

「おまえはどう思う、鋼牙?」

片眉をあげた零は、試すようでいて、でも、目の奥には信頼の光が宿っていた。
鋼牙は静かに零の視線を受け止めていたが、やがて口を開いた。

「ホラーは斬る…」

一言そう言うと、そのまま平然として黙った。
鋼牙が他にも何か言うのかとレオは待ったが、鋼牙は何も言う気はないようだった。

「ハッハッハ~ やっぱりね!
 お前らしいや」

高らかに笑う零と静かに微笑むような鋼牙を、レオは交互に見ていたが、やがて自然と笑顔になっていた。
ひとしきり笑顔を見交わした三人だったが、

「ひとつ思いついたんだが…」

と鋼牙がら声がかかり、零とレオは鋼牙を見た。

「数にしてはわずかかもしれないが、ホラーを斬らずに人間を喰うホラーを減らす方法は… ある!」

鋼牙は真剣な顔で言った。
怪訝な顔で首を捻った零の代わりに、レオが尋ねた。

「ホラーを斬らずにそんなことができるんですか? 鋼牙さん!」

「あぁ」


人間が襲われる心配のないままホラーを生かせることが、果たしてできるのか?
訝しげな零とレオは、鋼牙の言葉を待った。
注目されている鋼牙は、なんでもないことのようにしれっと言った。

「魔戒騎士の数を増やせばいい」

「…」

鋼牙の言葉に一瞬の沈黙の後、

「はぁ~っ?」
「えぇ~っ!」

言葉の真意が掴めないふたりは盛大に聞き返した。


to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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