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きんのまなざし ぎんのささやき

甘やかな香りに包まれて

頭の中を駆け抜けた妄想です。
ひょいと捕まえて書いてみました。
いかがでしょうか?




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冴島邸のリビングのサイドボードにある、曲線と木目の美しいクラシカルな
置時計が、3時をだいぶん過ぎた時間を指していた。

その日、鋼牙は昼食後から書斎に籠り、何やら難しい顔で調べ物をしていた。

つい先ほど屋敷に顔を覗かせたカオル、そしてそれを迎えたゴンザは、
そんな鋼牙の邪魔をしないよう、屋敷の主人抜きで、午後の穏やかな
時間をリビングで過ごしていた。

そんなところに、ふいに鋼牙が顔を覗かせた。
リビングに入るなり、ソファで寛ぐカオルに気づき、声を掛ける。

「来ていたのか」

「あっ、鋼牙。
 一足お先に、お茶をいただいてるよ」

穏やかな表情でカオルを迎える鋼牙に対して、カオルが輝くような笑顔を
見せて答えた。

そんなふたりをほほえましく眺めていたゴンザが、頃合いを見て声を
掛けた。

「鋼牙様もお茶を召し上がりますか?」

その声にゴンザを振り返った鋼牙は、

「もう少し調べてしまいたいことがあるから、すまないが、コーヒーを
 書斎に届けてくれないか」

と答えた。

「コーヒーでございますね。
 かしこまりました」

ゴンザは主(あるじ)に一礼すると、準備のためにキッチンに下がって
行った。
その姿を見送っているカオルに、鋼牙が言った。

「俺は書斎に籠っているが、ゆっくりしていくといい」

それだけを言うと、さっさとドアに向かって歩き出した。
その鋼牙を追いかけるように、カオルが呼びかける。

「あっ、鋼牙!」

何という用事はなかった。
だが、このまま別れるのもなんとなくつまらなかった。
カオルが鋼牙を引き止めた理由といえば、実に、その程度だった。

「ん、なんだ?」

ドアノブに手を掛けた状態で、鋼牙が振り返った。
カオルは何か話題を見つけなければと、素早く自分の身の回りを眺めた。

「あ、あのね… この葡萄、とってもおいしいんだよ?
 鋼牙はもう食べた?」

カオルが目の前のテーブルから、アイスティーの脇にあった、ガラスの器を
持ち上げた。
そこには、翡翠(ひすい)のように美しい大粒の葡萄が入っていた。

「いや、まだだ」

「じゃあ、食べてみて!
 とってもおいしいから!」

カオルは、その器を持って、そそくさと鋼牙のそばまで来た。

「書物を扱うから、手を汚したくないんだが…」

少し渋っている鋼牙に、カオルはなおも言った。

「それなら大丈夫!
 これは皮ごと食べられるから…」

そう言うと、カオルはフォークで一粒を取り上げると、ポンと自分の口の
中に放り込んだ。
食べている間、とてもしあわせそうな顔をして。

「ほらね、手を汚さないでしょ?
 甘くてとってもおいしいんだよ。

 あっ、ひとつ食べてみる?」

そう言うとカオルはフォークで大きそうな一粒を選び、鋼牙のほうへと
差し出した。

「はい」

満面の笑みで勧めるカオル。
鋼牙は渋々といった感じで、ドアから手を放すと、カオルのほうに近づいた。
そして、フォークを持つカオルの手を握ると、そのまま唇を舐め取るように
キスをした。

「えっ?」

茫然とするカオルに、

「確かに甘いな…」

と至近距離で言うと、フォークの先から葡萄を口に入れ、そのままリビングを
出て行った。

  パタン…

ドアが閉まった後も、カオルはフォークを差し出したまま、しばし動けずに
いた。



そのとき、鋼牙とは入れ違いに、キッチンの方から、ゴンザが戻ってきた。
手には、コーヒーを乗せたトレイがあった。
ゴンザはリビングに入ると、ドアの前で奇妙な恰好のまま立ち尽くしている
カオルの姿を見つけると、怪訝な表情で近付き、おずおずとカオルに尋ねた。

「カオル様、いかがなさいました?
 そのような恰好をして…」

ハッと我に返ったカオルは、

「な、なんでもないよ。
 鋼牙に葡萄を食べてもらってただけだから…」

と、ぎこちない笑顔で答えた。

「あぁ、それで、そのような恰好を…

 ですが、カオル様、何やらお顔が赤いみたいですが、大丈夫ですか?
 熱でもあるのでは?」

心配そうに顔を覗き込むゴンザに、カオルは慌てて頬を押さえると

「そ、そう?
 熱はないと思うけど…

 は、早く持っていかないと、コーヒーが冷めちゃうんじゃない?」

と、少し不自然に話をそらした。

「おっと… さようでございますね。 それでは」

鋼牙の消えたドアを開け、ゴンザもまた、その向こう側に消えていった。



後に残されたカオルは、にやける顔でソファに戻ってストンと座ると、
手の中の器から葡萄をひとつフォークに刺した。
そして、それを目の高さまで持ち上げると、チュっとキスをした。

葡萄の甘やかな香りに包まれて、カオルから、うふふと笑いがこぼれた。



fin
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えっと~、あれは誰?

鋼牙さんがなんだかキザでございます。
いやはや、一体どうしたことでしょう?

いや、でもね、きっと、ドアの向こう側で鋼牙さん、真っ赤になっている
ことだと思いますよ。 (うふふ)

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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