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きんのまなざし ぎんのささやき

めぐる季節の中で(1)

レオくん、あなたは一体、何を見つけるだろう?

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「布道レオ。
 話があるんだが、ちょっといいか?」

山刀翼が、レオにそう声を掛けてきたのは、’約束の地’ に旅立つという鋼牙を
みんなで囲んだ直後のことだった。



屋敷で待っているはずのカオルやゴンザたちの元へと急ぐ鋼牙は、レオに

「先に行っている…」

という言葉を残し、一足先にその場を引き上げることにした。

「あっ、はい、鋼牙さん。  すぐに追いつきますから…」

すでに歩き出している鋼牙の背中に、レオをそう声を掛けてから、翼のほうに
振り向いた。



零や烈花たちから少し離れた場所で、翼とレオは対峙した。

「なんでしょうか…」

そう尋ねながら、レオは自分が少しばかり緊張していることを感じていた。
山刀翼には、少々苦手意識を感じていたからだ。
それは、四十万ワタルが闇に堕ちかけたとき、ワタルを庇おうとしたレオに、
翼が理不尽ともいえる言葉を吐いたことに由来している。
あのときの印象が強烈過ぎて、厳格なこの騎士とふたりきりで話をするのが
レオはなんだか怖かった。

(兄さんのことで、また何か言われるんだろうか?
 …まぁ、それも仕方がない。

 あるいは、僕自身のことだろうか?)

どきどきしながら少し身構えて、翼の言葉を待った。
すると…



「すまなかった…」

翼の第一声は、穏やかな謝罪の言葉だった。
てっきり怒声なり罵声なりを浴びるだろうと思っていたレオは、予想外の
ことに、ひどく驚いた。

「あ、あの…  どういうことでしょうか?
 いったいなぜ謝るんです?」

慌てて尋ね返すレオに、翼は、

「君が魔戒騎士とも知らず、無礼な口をきいた。
 謝ってすむとは思わないが…  このとおりだ、許してくれ」

そう言って、折り目正しく頭を下げた。
だが、レオのほうは、翼の言葉を聞いて、正直、鼻白んだ。

(あぁ、僕が騎士だったからか…)

そう思うと、ついつい翼を見る目が冷めたものになった。



「おまえに魔戒騎士の何が解る!」

あのとき、翼からそう言われたレオは、

「魔戒法師などにわかるものか」

という魔戒法師を蔑(さげす)むような気持ちを、翼の言動から受け取った。
だが、今や、レオの本当の姿が魔戒騎士だということが翼にも知れ、
騎士でもないくせに騎士の何がわかる、と言った無礼を詫びているのだと、
レオは思った。
裏を返せば、自分が騎士でなければ、このように謝罪することもなかったの
ではないかと。


「いえ、いいんです。
 気にしないでください」

口ではそういったものの、レオの顔は能面のように表情に乏しく、その声に
抑揚はなかった。
さすがの翼も、レオのその態度から、レオが本心から許していないだろう
ことを感じ取っていた。
だが、この状況をどう取り繕えばいいものか、判断もできずに、気まずい
雰囲気がふたりを包んだ。



そこへ、邪美が背後から声を掛けてきた。

「お~い。
 みんな、もう帰るってさ…」

邪美の声にふたりが振り向くと、零たちが手を振りながら、思い思いの
道へと歩き出していた。
それを見て、ふたりの表情も少し緩み、翼は片手をちょっと上げ、レオは
頭を下げた。
邪美もひらひらと手を振り、自分の管轄に帰っていく友の姿を見送った。
後ろ姿が小さくなったのを確かめた後、邪美はふたりに振り返って聞いた。

「ところで…  珍しい組合せだね?
 いったい何の話をしていたんだい?」

聞かれた翼は少し慌てて、

「なんでもないっ」

と、話をそらそうとした。
翼のぎこちない態度は、邪美でなくても、これは何かある、と感じ取れるほど
だった。
こんなとき、これ以上翼から何かを聞き出そうとしても、頑(がん)として
聞き出せないことを経験上知っている邪美は、ターゲットを翼からレオに
切り替えた。

「レオ、あんた、翼に何を言われたんだい?」

翼は、慌てて何かを言おうとしたが、渋い顔を作ると、ふたりのやりとりを
無言で見守っていた。
邪美に尋ねられたレオは、

「ほ、ほんとに何でもありませんよ、邪美さん」

と、翼に話を合わせた。

「ふ~ん」

邪美は探るような目つきでレオをじっとりと見たが、レオはできるだけ
邪美から目をそらさないようにした。
なんとかやり過ごせたかに見えた次の瞬間、邪美は翼を振り返り、婉然と
笑った。

「なんにもないってことで、ほんとにいいのかい? 翼?」

厳しく問い詰められるより、こうして穏やかに聞かれる方が、翼にとっては
(恐らく、誰にとっても)威力がある。
このまま白(しら)を切り通すことは、誰の目にも難しく思った。

「ふーっ」

大きくひとつ息を吐くと、翼は重い口を開いた。

「実は…」


傷の手当をしてもらっていたときのことや、この場でそれを謝罪していた
ことが、翼の口から話された。


「…というわけで、遅くなってしまったが、レオに詫びを入れていたところ
 なのだ」

そこまで離すと、翼は再び、レオに向かって、

「レオ、もう一度謝らせてくれ!
 先日の無礼、ほんとうにすまなかった」

と、頭を下げた。

「…もう、いいですよ、翼さん。
 許すとか、許さないとか… 今の僕には何も言えませんから」

レオはそう言うと、暗い表情で俯(うつむ)いた。
そのやりとりを黙って見ていた邪美は、

(ふーん、なるほどね…)

と、ふたりを代わる代わる見た。



to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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