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きんのまなざし ぎんのささやき

白い花ゆれて(1)

出稼ぎ先の駐車場から、建物までの徒歩移動の間にある家の庭先に、
「白い花」が咲いてます。
以前から selfish が好きな花なのですが、10月初めは数輪しか
咲いてなかったのが、今は満開!
そろそろ散り始めています。

そんな「白い花」を登場させてみたのですが…
北の屋敷に来てからの、とある秋の日の妄想になります。

このごろ、あまり出てこなかったカオルちゃんが、ようやく少し登場!
甘くは… ないかもですが。

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路地を入ったところで、カオルはその男の姿が目に入った。

空き家らしい建物の一角で、かつては車でも置かれていたのか、
砂利が敷かれていたような空間だったが、今は、あちこちから雑草が
顔を出していた。

カオルのよく知っている、その白いコートの男は身じろぎもせず、
頭を垂れていた。

その背中が少し寂しそうに見えたため、カオルは、声を掛けようとして
上げかけた手をそっと下ろした。

(どうしたの? 鋼牙…)

そのまましばらく鋼牙の様子を伺っていたが、そっとしておいたほうが
よいように思い、カオルはそっとその場を立ち去ろうとした。
歩き出してすぐ、

「カオル」

カオルの背に、よく響く、大好きな声がかけられた。
カオルは足を止めて、ちょっとだけ気持ちを静めてから振り返った。

「…鋼牙?」

今初めて気づいたように、喜びの色を表情に添え、小走りに鋼牙の元へ
近づいた。

「こんなところで会うなんて…
 仕事で?」

「…あぁ
 だが、今から帰るところだ」

少しだけ間を空けて、短く返事をした。
先程の鋼牙を見ていなかったら、気づくはずもないくらいのほんの短い
間だった。

「ふ~ん、そうなんだ。
 じゃぁ、あたしも一緒に… いいかな?」

「あぁ」

今度は、少しの間もおかずに即答した。
歩き出そうとした鋼牙を、

「ちょっと待って…」

とカオルが制して

「ここ、誰もいないみたいだよね?
 あの花、一輪だけ分けてもらってもいいかなぁ」

そう言うと、鋼牙の答えも聞かずに、その建物の敷地ぎりぎりのところに
咲いていた花の前に立った。
1mほども伸びた花茎の先に花が咲いていた。
秋風にそよそよと白い花が揺れている。
カオルは、その花を手折ると鋼牙に見せた。

「ほら、きれいじゃない?」

遠くから見ると、その立ち姿は楚々とした中にも凛とした風情をたたえていたが、
花を間近で見ると、可愛らしい印象に変わる。

「そうだな」

カオルは、鋼牙の返事を嬉しそうに聞き、差し出していた手を引っ込めると、
つまんだ指を捻るようにして、花をくるりと回してみた。

鋼牙が無言で歩き始めると、それに気づいてカオルも歩調を合わせて
歩き出した。
しばらくは、カオルも無言で歩いた。
だが、隣を歩く鋼牙に、いつもと違う何かを感じがして、カオルは思い切って
尋ねてみた。

「鋼牙?
 なんだかちょっと元気がない… かな?」

そんなことはない、と言われれば黙って引き下がろうと思っていた。
それならそれでもいいと。

「…」

だが、鋼牙はどう返事をするか迷っていた。

そこへ…

『カオル
 鋼牙はちょっと引きずってるだけだ。
 心配しなくていいぞ』

「引きずってる?
 何を?」

ザルバが鋼牙に代わって返事をした。
だが、その答えをよく理解できなかったため、カオルはザルバに聞き返した。

『もう1年近く前になるか…
 この近くでホラーに喰われた人間がいたんだ。
 鋼牙は、それを…』

「ザルバっ」

鋼牙が短く制した。

『人の死を悼む行為を、何も恥じることはないじゃないか? そうだろ?
 魔戒騎士だからといって、人の死に慣れるようじゃ強くはなれないぜ』

それだけ言うと、ザルバは口を閉じた。

カオルはハッとした。
多くの死に立ち会ったからと言って、人の死に慣れるわけなどないのだ。
簡単なことなのに、ザルバに言われるまで、カオルは気づかなかった。

魔戒騎士は、人の死に触れる機会が多い。
それも、安らかな死とはとても言えないような死に方に遭遇することが
ほとんどだ。

人が死ぬということは、想像以上の ’想い’ が残される。
例え、それが身内ではなくても、その場にいた者は、とてつもなく大きな
喪失感に襲われるだろう。
その人が残す悲しく、つらく、無念な気持ちがダイレクトに伝わるのだから、
自分の身が切られるくらいの痛みすら伴うかもしれない。

鋼牙はいったい何度、そんな場面を経験してきたことなのか…

人の死の重さを感じるからこそ、魔戒騎士は ’守りし者’ としての使命を
持ち続け、強くあり続けるのだろう。
その重さを忘れてしまうようでは、強い魔戒騎士にはなれない… ザルバは
そう言いたかったのだろう。
鋼牙は、以前、救えなかった命を忘れず、そればかりか、今でも責任を感じ、
呵責に苛(さいな)まれているのかもしれなかった。

強い魔戒騎士は、ひょっとしたら、誰よりも優しいのかもしれない。

そんなふうに思いながらも、カオルは鋼牙にかける言葉が見つからず、
俯(うつむ)きがちに足を運んでいたが、そっと、鋼牙の腕に自分の腕を
絡ませた。
鋼牙は、カオルの体温を感じながら、黙って歩いた。

(カオル…
 お前がそばにいてくれることで、俺はどれだけ救われているか…)

救えなかった命を偲び、心が重く沈んだ鋼牙だったが、鋼牙には
いつも ’光’ があった。
鋼牙によって救われた命… カオルの存在が、いかに鋼牙の心を
照らしてくれているか。
そのことを、鋼牙は改めて感じていた。



to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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