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きんのまなざし ぎんのささやき

誰も知らない(6)

そろそろオチが見えてこないといけないのですが…
どうしますかね?

う~~~ん。

…今回は、あんまりオチとか考えずにダラダラ楽しむことにしようかな?


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ごくり、ごくり、…

邪美の喉を冷たい水が通り過ぎる。
一口飲むたびに焼けるように熱かった喉の熱がじわじわと静まっていくようだった。
呼吸がラクになってくると、邪美の意識がだんだん戻ってきた。



邪美がぼんやりと目を開けてみたとき、翼の顔が至近距離にあってちょっと驚いた。
グイッと口元を袖口でぬぐった翼が邪美に気付き、表情を緩ませる。

「気づいたか?
 どうだ? もっと飲むか?」

(飲む? …あぁ、そう言えば、水を飲ませてもらっていたみたいだね?
 …ん?)

邪美の返事がないことを「Yes」と捉えたようで、翼は水を飲ませてやろうと、やかんに口をつけて自分の口に水を含んだ。

(?!)

そのまま抱き寄せるようにして近づく翼を、邪美はすんでのところで押し留めた。

「翼?
 あんたは、そうやってあたしに水を飲ませてたのかい?」

声が掠れて、うまく出ない。
邪美の問いに答えようと、翼は口に含んだ水をごくりと飲み込んだ。

「あぁ、そうだが…」

それが何か問題でもあるのか? と、でも言いた気だ。
その様子は、邪美の目にはひどく落ち着いて見えた。

「ふうん、そうかい…」

曖昧に返事する邪美を、翼は少し怪訝そうに見つめた。

(どうやら、翼のほうはなんとも思っていないようだね…)

そんなふうに見て取った邪美は、少し落ち着こうと思い、小さく深呼吸をした。

お互いに憎からず想い合っている間柄なのだから、今更、唇を奪われたことにどうこう言うつもりはない。
ただ、これまでは、邪美に対して直接的な愛情表現をすることが翼にはほとんどなかっただけに、介抱のためとは言え、邪美と唇を合わせたことで、何かしら特別な反応があるものだと思っていたのに、その予想が外れたことでなんだか少し拍子抜けした。

「なんだ? 嫌だったか?

 そう言えば、この湖に着いたばかりの時にも、そうやって水を飲ませたんだが… すまないことをしたな」

ひどく真面目な顔をして、翼は、すまん、とばかりに頭を下げた。

一度ならず二度までも… というのが、邪美をさらに驚かせた。
ついさっきまでは

(翼ったら照れてるよ、かわいいねぇ…)

などと思っていたのに、そう呑気に笑っていられない気がしてきた。

「あたしは別に…
 ただ、あんたがその… 何も思わないのかな、と思ってさ」

「思うって何をだ?
 病人に水を飲ませるには、このやり方が一番手っ取り早いだろう?」

至極当然、という顔でサラッとそう言った翼は、「病人の介抱」という名目なら本当に何も気にならないみたいだ。
それなら、と、邪美は思い切って訊いてみた。

「それじゃ、何かい?
 相手が病人だったら、あんたは誰にでもそうやって水を飲ませるってわけかい?」

「誰にでも、というのは?」

「そうだねぇ…」

邪美は少し考えて、

「例えば、満寿とか黄花とか?」

と言った。
邪美が名前を出したふたりは、どちらも自分と年の近い女性の魔戒法師だった。
ふむ、と翼は考えてから答えた。

「そうだな… 多分、そうするだろうな」

確かに、目の前に意識がなく「水が飲みたい」という人がいたら、邪美だって口移しで飲ませるかもしれないとは思う。
そうは思うのだが、すっきりとしないものを感じた。

(あたしだから特別に… なんてことはないんだね?)

そう思うと、やっぱり少し気落ちしてしまう。

「翼、すまないけど、しばらくひとりにしてくれないかい?
 ゆっくり休みたいんだ…」

明らかに元気がなくなった邪美が、翼から視線を外すようにして言った。

「…そうか、わかった」

そう言った翼が、そっと小屋の外へ出ていく気配が背後で感じられた。
しばらく息を詰めるようにしていた邪美は、翼が小屋から十分離れただろうという間をおいてから、ふぅっと小さく息をついた。
そして、ゆっくり瞼を閉じた。

(何も考えないようにしよう…)

そうして、ゆるゆると眠りに落ちていった。



一方、外に出た翼は、小屋の戸を後ろ手に閉めた後、顔を少し歪ませて天を仰いだ。

(大丈夫だっただろうか?!)

そう思いながら、少し前にあった邪美とのやりとりを思い出していた。

「あんたは、なんとも思わないのかい?」と邪美に訊かれたときは、正直焦った。
ほんとのところは「なんとも思わないわけがない!」といったところだったが、まさかそう答えるわけにもいくまい。

(白(シラ)を切ってみたが、果たしてうまくいっただろうか?)

しかし、ここでいくら悶々と考えたところでどうしようもない。
とにかく今は、邪美をゆっくり休ませることが一番だ、と半ば自分に言い聞かせるようにして、翼は小屋から離れた。


to be continued(7へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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