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きんのまなざし ぎんのささやき

雨が濡らす頬(2)

牙狼のダークな世界観。
ちょっとは雰囲気出せてるといいのですが。
なんせ気ままな楽天主義なんで、そこが心配だ…

はてさて、この鬱々とした展開で登場する魔戒騎士は… 誰でしょう?


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……雨が降っている。

それほどひどくは降っていないないが、視界を阻む小さな水滴たちを透かして、魔戒騎士は1台の車に視線を定めた。
まだ少し距離はあったが、魔戒騎士の顔が歪んだ。

(遅かったか…)

魔戒騎士はわずかに漂う血の香りに、小さく息を吐く。
魔戒騎士は足早にその車に近づくと、ホラーが今夜の被害者となった男を喰らっている最中だった。
近づく魔戒騎士に気づいたホラーは焦る様子も見せずに、血に濡れた口を腕でぐいっとぬぐってから立ち上がった。

『ホラー アンヴィーバ。
 獲物とする人間や、その補食の状況などに強いこだわりを持つとされている…
 今回の場合は、社会的にはやや高い地位のある50代男性。
 そして、車…』

彼の魔導具が感情を交えない声で淡々と語る。

『襲う対象の憎悪のみが強く、それ以外のことには何の興味もない。
 知謀をめぐらせたり、狡猾なところはなく、戦闘能力的には大したことはないが、油断は禁物…』

魔戒騎士は黙ってうなずくと、剣を抜いた。
それを見たホラーが睨みつけるようにして呻いた。

『ぢゃなゆつむあ
(邪魔をするな)』

「なに?」

『らこつそち… らこつそちげ、をしあざんにざれむ
(あと少し… あと少しで優樹菜がよみがえる)』

「優樹菜?」

『とるが… いよぜよゆびゃすいよすれぱ、をしあいられむ…

(そうだ… 人間を100人喰えば優樹菜に会える…)』

それを聞いた魔導具が即座に切り捨てる。

『莫迦なことを…』

『ぱさあそこ?
(莫迦なこと?)』

ホラーが魔導具の言葉を聞きとがめる。

『人間をいくら喰らったところで、優樹菜とかいう人間はよみがえりはしない。人間は一度死ねば、それっきりだ』

『…』

ホラーは黙り込んでしまったが、すぐに、クククと笑った。

『とよあばあちゆちよぢむころのるさ?
(そんな話を信じると思うか?)』

『信じるも死んじないも自分で決めるがいい』

そう言われたホラーは不機嫌そうに睨んできた。
だが、魔戒騎士はそんなことには動じない。

「人間を喰らうホラーは斬る…」

それだけを言った魔戒騎士は、剣を構え直し、ホラーに狙いをつけた。

『がなっけわまめむころのるあん?
(黙ってやられると思うなよ?)』

ホラーは憎々し気に言うと、鋭い鉤爪を突き出して襲いかかってきた。

組んでは離れ、離れては組み、幾許(いくばく)かの攻防の末、じりじりとホラーは追い詰められていった。
はあはあと肩で大きく息をし、ギラギラとした目で相手をねめつけるホラーに対して、魔戒騎士は静かに見据えていた。

『ろめおぢゃなゆつむあ!
(俺の邪魔をするな!)』

そう叫んでホラーが突っ込んできた。
だが、魔戒騎士は少しも動じず、相手の動きに冷静に対処する。

ホラーの左腕が斬られ、どす黒い血が飛び散る。

鳩尾(みぞおち)に肘が入り、身体をくの字に曲げたホラーがよたよたと後退(あとすさ)る。

そして、最後には足を払われて背中から地面に叩きつけられると、呻きながら苦し気に身を捩(よじ)らせた。

『をしあ… を… し、あ…
(ゆきな… ゆ… き、な…)』

ぜーぜーと苦し気な息のもとで、朦朧としつつも、ホラーは優樹菜の名を呼んだ。
その姿は透けて見え、人間だった頃の容姿が浮かび上がっていた。

『そんなに会いたいのか、その女に…』

魔導具が思わずそう呟いた。
するとホラーは、

『らら… らりかり…
(ああ… 会いたい…)』

と言った。
そんなホラーに、魔戒騎士はほんの少し気の毒そうに視線を落とす。
だが、次のホラーの言葉に目を見開いた。

『らっけ、そよごばそおけげ… らおろよあい… てりたりゆすやれけわむよが
(会って、今度はこの手で… あの女に… 制裁を加えてやるんだ…』

そう言うと自分の血で濡れる自分の手を満足そうに見つめて笑う。




5年前。

……雨が降っている。

「優樹菜、待てよ!
 どういうことなんだ!」

優樹菜の肩に手を掛け乱暴に引く男に、優樹菜はその手を払いながら冷たい目で睨む。

「どうもこうもないわ。

 シンはいつも私をほったらかしだったじゃん!
 レポートとか、サークルとか… 私のことはいつだって後回しだったでしょ? 口では、ごめん、って言いつつ、ほんとは悪いなんて思ってなかったよね?」

「そんなことないっ!」

真也はすぐに否定した。
だが、それはただの勢いで言ったことであって、優樹菜の言うことがまったく間違ってもいないことにも気づいていた。
最近、後輩でちょっとかわいいなと思っていた莉奈と絡むことが多いかなとは思っていた。
でも、だからって…

「優樹菜、答えろよ。
 敦也とキスしてたって本当か?」

それを見たっていう友達からの情報を元に、真也は優樹菜を問い詰めた。
さっきまではのらりくらりと躱(かわ)していた優樹菜だったが、吹っ切ったのか、強い目を向けて真也に言った。

「そうよっ!
 敦也が私のこと好きだって…
 振り向いてくれない真也のせいで悲しむなって言ってくれたの!」

それを聞いた真也に怒りが湧く。
それは決して、自分の好きな女に手を出された怒りではなく、自分の物だと思っていた優樹菜を取られたという幼稚な独占欲から来るものだということには目を向ける余裕はなかった。

「だからもう、シンはシンで好きにして!
 私は私で好きにするから!」

そう言うと優樹菜は走り出した。

「おい、待てよ!」

そう言いながら真也は優樹菜を追いかけようと動き出したが、そう何歩もいかないところでピタリと足を止めた。
それは、目の前の横断歩道を走って渡っていた優樹菜の身体が、一瞬のうちに消えてなくなったからだった。

いや、正確には、信号無視をして突っ込んできた車が、優樹菜の身体を吹っ飛ばしたのだ。




優樹菜のことは好きだった。
けれど、敦也とキスするなんて裏切られた気分だった。

カッとした。
瞬間的に、憎いと思った。

でも、まさか、直後に事故に遭うなんて…
あの場で喧嘩なんかしていなければ…
優樹菜が自分から逃げるように走り去らなければ、ひょっとしたら…

いや、俺は悪くない。

後輩の莉奈に気持ちがなかったかと問われれば完全な否定はできないけれど、優樹菜を裏切るような行為などはなかった。

でも、だからって、優樹菜が死ぬことなんてない…

いや、俺を裏切ったのだ。許せない…

好きだったんだ、優樹菜。
優樹菜… 優樹菜… おまえが憎い…




5年前のあの事故。
その事故のことが記憶に残っている人は当事者や家族など、限られたごくわずかな人たちだった。
けれども、あの事故で、人生を狂わされた人がいた。


そんな人間に、ホラーがつけ入った。



tto be continued(3へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も8年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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