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きんのまなざし ぎんのささやき

静かな宴

11月6日は翼の中の人のお誕生日~♪
というわけで、2日遅れですが、妄想を(勝手に!)プレゼント~


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邪美は、すっかり暗くなった山道を酒徳利(さけとっくり)をぶら下げながら歩いていた。
空には三日月が昇っていて弱々しい光を邪美の足元に投げかけている。
腰の大きく曲がったブナの木を迂回するように、右のほうへぐっと曲がると、翼と鈴の住む家に着く。

「ん?」

邪美はいつもと違う様子を嗅ぎ取った。
家が真っ暗なのだ。
今日は鈴が不在なのは知っていたが、翼はいるはずなのに。



鈴は、我雷法師の頼みで特別に作った札(ふだ)を、依頼主に届けるために里を留守にしていた。
魔戒法師として成長した鈴は、魔導札を作ったり、薬の調伏(ちょうぶく)といったことに特に秀でていた。
そのため、我雷法師の元に舞い込む札や薬などの難しい注文は、鈴に任される機会も多くなっていた。
しかも今回は鈴を名指しでの依頼だったので、鈴も張り切って仕事にあたっていたが、できあがった札を届けるときになって少しだけ躊躇した。
それは、今日が翼の誕生日だったからだ。
正直なことを言うと、こんな日にでかけるのは嫌だなと鈴は思った。
だが、自分の私的な問題で仕事を二の次にするのはとても子どもじみたことだし、第一、翼がよく思わないことは容易に想像できた。
だから、邪美に「兄ぃのこと、お願いね」と頼んで、今朝早くに里を後にしたのだった。



(おかしいね…)

そう思いながら邪美は翼の家の戸を叩いた。

「翼、いないのかい?」

中に向かって声を掛けると、

「邪美か?
 開いてるぞ。勝手に入ればいい」

と翼の声が聞こえた。
その声は戸の中からではなく、外の空気を伝ってきたようだったので、邪美は戸口から離れて家の外壁伝いに横手に回った。
すると、縁先に翼の姿を見つけた。

「明かりもつけずにどうしたんだい?」

そう声をかけながら邪美は近づいた。
少しだけ開けた戸に背を持たれかけていた翼が声のする方に視線をやり、

「邪美か。
 こんな時分にどうしたんだ?」

と少し気だるそうに言った。

(こんなふうに気を抜いている翼も珍しいねぇ)

そう思いながら

「これ…」

と徳利を目の高さに上げて見せ、

「今日は誕生日だろ?
 鈴がいなくて寂しがっているかと思ってね」

と言って、庭先から中に上がり込んだ。

「月を眺めるにしちゃ少し寒いんじゃないかい?」

そう言いながら、邪美はずんずん奥に入る。
勝手知ったる家だ。
台所に入り、酒を入れる茶碗をふたつ。それに、鈴が作り置いていった小鉢などを盆に乗せ、翼の元に戻ってきた。

「高い酒じゃないんだが、結構いけるんだよ」

徳利を手に取り、栓を抜こうとしたが、思いのほか固くて抜けない。
その様子を見ていた翼が、

「貸してみろ」

と言いながら手を出したので、邪美は徳利を翼に渡した。

  ぽんっ

いい音がして、苦もなく栓が抜かれた。
そのまま茶碗に注ごうとするので邪美が止めた。

「祝いの酒だから、あんたが先だよ」

そう言って、翼の手から徳利を取り上げると、翼に茶碗を持たせて酒を注いだ。
そのまま自分の茶碗に注ごうとすると今度は翼が無言で止める。
邪美の持たせた茶碗にとくとくと酒が注がれた。
ふたりが茶碗を持ち上げると、自然と視線があった。

「誕生日おめでとう」

にっこり笑う邪美を月光が照らす。

「この年になって、めでたいもないが…」

少し照れくさそうに翼が言う。

  カツン

茶碗を合わせて乾杯をしてから、酒を喉に流し込む。

  ふぅ~

「…うまいな」

「そうだろ?」

フッと笑みを交わして、静かな宴が始まった。



「鈴のいない家は寂しいかい?」

「そうだな… 少しだけ、この家が広く感じる」

そう言うと、翼はグイッと酒を飲みほした。
そんな翼を穏やかな笑みで見る邪美。

「鈴もいい大人だ。
 いつこの家から出ていくとも限らんからな。
 鈴のいない家にも少しは慣れないと…」

「あの子も今年で20歳(はたち)になったもんね。
 ついこのあいだまで、子どもだ、子どもだと持っていたのに…

 フフッ、あたしも年を取るってもんだ」

酒気を帯びて少し潤んだ目が寂しげに伏せられる。
ハッとした翼が茶碗をコトリと置いて言った。

「邪美… ここに来い」

指で自分の隣りを差す。

「え?」

「少し冷えてきたようだ。その… 離れていては寒いからな」

酒のせいなのか、翼の耳は真っ赤だった。

(かわいいねぇ)

そう思ったら、邪美は落ち着きを取り戻していた。
そっと翼の横に場所を移すと、何気ない顔で言う。

「どうだい、これであったかいかい?」

  ゴホン

咳払いしてから翼は答える。

「ああ、そうだな。…少しは温かくなった」

そう答えた後、間が持たないのを紛らわそうとして徳利に手を伸ばす翼。

「なんならあんたの膝の上に乗ろうか?
 そしたら、もっとあったかくなると思うけど?」

試すような流し目を投げかけて邪美は言う。

  ゴトン!

持ち上げかけた徳利が落ちて、大きな音が立った。

「あはは、冗談だよ、じょ・う・だ・ん!」

からからと笑いながら、邪美はさらに翼のほうににじり寄った。
翼の少し高くなった体温が、身体を接したところから感じられる。
そのことに邪美は大きな安心感を覚えていた。

そして、翼もまた、身体を預ける邪美の重みを幸せな感覚として受け入れていた。

…そんな秋の夜の静かな宴。


fin
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この後どうなるの~♡
楽しみねぇ~ 楽しみねぇ~
(お好きに妄想してね!)

鈴ちゃんの中の人が、今年、成人していたんですね。気づかずにスルーしてました。
それに伴って、兄ぃも邪美も年を重ねて…
いやぁ~ しっぽりとした誕生日の宴もいいものですな、っていう妄想でした!

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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