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きんのまなざし ぎんのささやき

鳴らない鈴(3)

ずっとひとりぼっちだったカオルちゃん。可哀想…
鋼牙さん、どうしてもっと早く迎えに来れなかったのかと、やり場のない怒りが。
公式様、いつかキッチリ落とし前つけてくださいね。
…と思いながら、こっちはこっちで勝手な妄想をする気ままさ、デス。


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どのくらいの間、眠っていたのだろう。一瞬の間のことなのか、それとも何時間も経ったのか…
カオルの閉じられていた瞼が静かに開き、ゆっくりと二度三度と瞬(まばた)きが繰り返された。
それとともに意識も徐々に覚醒していく。

(温かい…)

長らく感じたことのなかった自分以外の人間の体温。
大きな木の根元に腰を下ろして眠っていたカオルは、優しく逞しい腕で支えられていた。
ゆっくりと見上げると、そこには見知らぬ男の顔があった。
遠くを見つめる目は険しく、薄い唇は真一文字に引き結ばれており、強い意志と揺るぎない風格のようなものを感じ、カオルは息を飲んだ。
ふと、カオルが目を覚ましたことに気付いた男が、自分の腕の中にいるカオルを見た。
その目は途端に優し気になる。

「起きたのか?」

空気を伝って響いてくる彼の声とともに、触れている彼の身体からもビリビリとした振動が伝わってくるのを感じる。
途端にカオルは顔が熱くなるのを感じ、胸がドキドキしてくる。

「え、ええ…」

彼から微妙に視線を外して、身体を離そうと手で彼の胸を押す。
だが、男のほうはそれを拒否するように、彼女の肩を抱く手を緩めなかった。

「あの… もう支えてくれなくても大丈夫ですから…」

そう言いながら彼の顔をチラッと見ると、カオルは驚いた。
先程までの堂々とした彼はどこへやら、悲し気な瞳でカオルを見ていたからだ。

正直なことを言うと、彼はカオルのことをよく知っているようだが、自分はこの男のことを覚えていない。
だから、こんなふうに彼の腕の中にいることに恥ずかしさを覚えるし、それになんだか先程から胸の鼓動が速くなっていて、呼吸もうまくできないのだ。
そんな状況から少しでも逃れようと思うのだが、目の前の彼の切なげな様子になんだかこちらまで胸が痛くなる。
戸惑いを隠せないカオルに、横から声が割って入った。

『鋼牙、離してやれ』

人間離れしたその声に渋々従い、鋼牙と呼ばれた男はカオルを離した。
そして、どこから聞こえた声なのかとキョロキョロするカオルに、男は左手を握り、彼女に突き出した。
カオルの前には、彼の中指に嵌められた髑髏の形の精巧に作られた指輪が。

『よぉ、カオル。久しぶりだな』

カチカチと顎を鳴らして髑髏が喋る。

(ええ! 何これ!)

若い頃の自分なら、

「指輪が喋ったーっ!」

と素っ頓狂な声をあげているところだろうが、カオルはその言葉を飲み込んだ。
大きな目をこれ以上ないくらい真ん丸にして、説明を求めるように男の顔を見上げる。

「ザルバだ。俺の… 盟友(とも)だ」

ザルバをどう説明しようか、一瞬迷った鋼牙だったが、結局、一言で説明を終えた。

「…」
「…」

沈黙がその場を支配する。
どうやらいくら待ってもこれ以上説明してもらえないことを悟ったのか、カオルのほうから質問をすることにした。

「あなたは誰? あたしのことを知っているの?」

「俺は…」

鋼牙は少しだけ言葉に詰まった。
カオルに自己紹介をすることに複雑な想いを抱いたからだ。
だが、すぐに気持ちを切り替える。
カオルに少しでも早く自分のことを思い出してほしかった。
ザルバやゴンザ、そしてふたりにとってかけがえのない愛しい存在のことも。

「俺の名は冴島鋼牙…」

「冴島… 鋼牙…」

教えてもらった名前を、ゆっくりと復唱してみるカオル。
だが、何も心に響いてこない。

「そして、おまえの名前は、冴島カオル…」

「冴島って… あたし、あなたの?」

「そうだ。カオル、おまえは俺の妻だ」

カオルは再び目を見開いた。
自分の名前がわかったこと…
自分が目の前の男の妻だということ…
そして、何よりも、その事実を聞いても何も思い出せないことにカオルは愕然とし、ショックを受けた。

「…ごめんなさい。あたし… あたし、何も覚えてないの…」

悲しみ、もどかしさ、焦り… カオルの中でいろいろな感情がせめぎ合い、とても苦しかった。
そんな彼女を見て、思わずぎゅっと抱きしめたい衝動に駆られた鋼牙だったが、それをグッと我慢して、膝の上で固く握られている彼女の手を優しく握った。

「謝ることはないんだ、カオル。
 ずっと探していた…
 おまえとこうしてまた逢えただけで、今は十分だ…」

彼の声、彼のまなざし、彼の手の温もり、そして彼の全身から深い優しさが感じられる。

「鋼牙…」

泣きそうな声で小さく名を呼ぶと、カオルはコツンと額を鋼牙の胸に預けた。
鋼牙は驚きと喜びでハッとしたが、すぐにカオルの髪を撫で、

「大丈夫だ…」

と自分にも言い聞かせるようにしみじみと言った。




それからしばらくの間、カオルの感情の高ぶりが収まるのを待って、鋼牙はカオルにいろいろなことを話して聞かせた。
一度に多くの情報を与えてもカオルが混乱するだけなので、主にカオルの知りたがっていることを中心に、ゆっくりと言葉を選んで話した。
カオルも鋼牙に再会するまでの間の出来事を思い出しながら話した。

「特に危険な目に遭ったってことはなかったと思うの。よくは覚えてないけれど。
 でも、不気味でなんとなく恐ろしい場所ばかりで…
 それで、気づいたら、自分が起きているのか眠っているのか分からないような感覚というか、夢の中で夢を見ているような変な感覚しか感じられなくなってしまって…」

これまで感じていた不安を言葉に出して言うことで、カオルの中からいろいろな感情が次から次へと溢れ出てきた。
いつのまにか涙も止まらなくなっていた。
鋼牙はそんな彼女をすべて受け入れ、黙って髪を撫で、肩をさすり、手を握ってやった。



to be continued(4へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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