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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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Amphibia(1)

久し振りの妄想のアップになります。
みなさまに、もう忘れ去られちゃった存在かしら?
(子どもとパソコンを取り合う毎日でして…)



さて、さっそくですが、最初におことわりしたいことが…

この妄想には、陶子(とうこ)という名の零くんの恋人が出てきます。
まったくの捏造人物です。
(ちなみに、この女性は「雨宿り」にも登場しています)

「零くんに恋人がいるのはちょっと…」
「零くんの恋人は ’あの人’(←特定の誰かさん)じゃないと嫌だな」
と思われる方は、ご気分を害される可能性が大きいので、何卒この先はお読みになりませんよう、お願いいたします。


「そういうのは気にしない。大丈夫だよ~」
という方のみ、お先へどうぞ。




::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

とあるシティの夜。
太陽が沈んだのは数時間前で、星も見えない真っ暗な闇が夜空を覆っていた。
何もかもを飲み込んでしまったかのような空の下はというと、市街地にきらびやかで幻想的な光が無数に点灯し、行き交う車の騒音や、時にあがる若者たちの歓声などがごちゃ混ぜに溢れていた。

その市街地から
そう遠くない場所に、この地を守る魔戒騎士、涼邑零の部屋があった。

ベッドとソファーとローテーブル。
それ以外には家具らしい家具などほとんどない。
その他にあるものといったら、いかつい大きなスチール棚と、ピカピカに磨き上げられたバイク。
まるでリビングとベッドルームとガレージとが混然と一体化したような部屋だ。

市街地の音も光もこの部屋まで届いていなかった。
暗い室内には、スチール棚に置かれた工事作業用のハンディランプだけが灯(とも)され、濃淡の違う様々な陰影を作りながら、ぼんやりと辺りを照らしている。

そんななか、黒い影がゆらりと動いた。
その影は部屋の片隅にある小さな冷蔵庫のドアの前まで来ると足を止め、ドアを開けた。
ドアから漏れる冷気を含んだ光に照らし出されたのは、膝丈のルームパンツから伸びる女の白い足だった。
女は腰を屈(かが)ませて庫内を覗き込み、よく冷えた缶ビールを2本取り出すと、ドアを閉めた。
パタンという音とともに、冷蔵庫からの光がプツリと消え、部屋の中がさっきよりも幾分暗く感じられるようになった。
缶ビールを手にした影はその暗さに一瞬躊躇したが、やがて部屋を横切るようにして、ベッドの方へと歩み寄った。
ベッドの上には、肘をついた体勢で上体を半分だけ起こし、長い足を投げ出している男がいた。
…この部屋の住人、涼邑零だ。

しなやかな腕から缶ビールが差し出され、零は、

「ありがと♡ 陶子さん…」

と言って受け取る。
差し出した側の陶子は、零の傍らに腰を下ろした。

 ギシッ…

ベッドが小さく軋んですぐに静かになった。

 プシュ…

缶ビールの蓋を開ける音が2つ、重なるように鳴ったかと思うと、ふたりは目線だけで乾杯する。
零は渇きを潤すためにゴクゴクと喉を鳴らせて飲み、陶子のほうは目を閉じて味わうようにゆっくりと缶を傾けた。
缶から口を離したとき、

「はぁ~」
「ふぅ~」

と、自然にこぼれた嘆息まで重なったとき、目を合わせてふたりは笑い合った。

それぞれのペースでビールを飲みながら、他愛もないことを喋り合う時間。
職場で起こったちょっとしたハプニングや、今度の休みの予定…
それに、最近できたカフェの話や、おいしいと評判のスイーツショップのことなど。

夜の時間をホラー以外と共有するようになるとは、数年前の零なら思いもよらないことだった。
こういう時間の過ごし方もあったのだと何年振りかで思い出し、いつしかその時間を楽しみにしている自分がいた。
話し手と聞き手の役割をゆるゆると交換し合いながら、穏やかで楽しい時間は過ぎていく。
時折、沈黙の時間がふたりの間に流れたが、それを無理に埋めようとする必要をふたりとも感じていなかった。
相手の呼吸を感じ、視線を感じることだけで、なんとなく満ち足りた気分になれた。

何度目かの沈黙の後、不意に零が口を開いた。

「俺ね、時々、魔戒騎士のことがわかんなくなるんだ…」

薄ら笑いを浮かべてそう呟いた零に、陶子は少し怪訝な顔をして問い返す。

「ん? どういうこと?
 自分のことがわからなくなるってこと?」

「あ、いや。
 う~ん、ちょっと表現がマズかったかな? えっとね…

 俺は魔戒騎士なんだけど、自分の感じたことや考えたことって、魔戒騎士としてはフツウじゃないかも? 間違っているんじゃないか? …なんて思うときがあるんだよね」

そう答えて、零は少し遠い目をした。

「ふぅん…
 それってさ、例えばどういうことなの?」

陶子はもっと話すように水を向けた。
最初に会ったときからすごくフレンドリーな印象のある零だったが、実際のところは、零が
自分の気持ちを素直に外に出すことも、自分の過去などを話すことも極端に少なかった。
そして、そのことに、陶子はわりとすぐに気がついていた。



(コウちゃんにそっくりなのよね…)

陶子の受け持つ組にも、よく似た子がいるのだった。
いつもニコニコしているような男の子。
騒ぎ過ぎたり、ケンカしたりといった手のかかるようなことのない、保育士から見るととってもイイ子なコウちゃんだったが、気づいてみれば、

「せんせ~、〇〇やって~」
「これ、〇〇やりた~い」

といった甘えを全然示してくれない子。

(集団生活では、’やりたいことを我慢させる’ ことも大事なんだけど、コウちゃんの場合、’やりたいことをやりたいって吐き出させる’ ことが必要なんだよねぇ…

 自分が受け持っている間に、コウちゃんのほんとの笑顔をたくさん見たいもん!)

保育士としての陶子は、そんなふうに思っていた。


さて…
もちろん、いくらコウちゃんに似ているからと言っても、零はコウちゃんとは違って、いい年をした立派な大人だったので、陶子が気を遣ったとしても、こちらの思惑などすぐに見透かしてうまくスルリと交わしていた。
だから、普段の陶子は、零の胸の内を無理に聞き出そうとすることはなかった。
でも、もしも何かの機会があって、零の口からそれを吐き出すことができるのだったら、

(それって、零のためにもいいことだと思うんだけど…)

と陶子は思っていた。

それが今。
どうした風の吹き回しか、普段は零が語りたがらないようなことを、なんだか話してくれそうな雰囲気になっていた。

(今がチャンス… なのかな?)

そんなふうに陶子は思った。


to be continued(2へ)
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拍手[9回]

コメント
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無題
(非公開)
北上音夢 2014/06/10(Tue)21:44:35 編集
Re:無題
零くんと陶子さんの出会いについては、すでに selfish の頭の中では、いろいろと妄想してますよ~ ウフフ♡
いつか機会があれば書いてみたいのですが、なかなか踏み切れず… (^ω^;) エヘヘ

今回は陶子さんの職業について少し書きましたが、見た目や性格なんかもおいおい書けるといいかなぁ~ と思ってます。

それまでは、読み手様がご自由に妄想していただければ嬉しいです!
【2014/06/10 22:27】
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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