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きんのまなざし ぎんのささやき

God be with ye(10)

G.W.も今日で終わり。
明日から仕事か… と暗くなるのはやめて、妄想妄想~♪




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空気が変わった。

真剣勝負という意味では先程までの闘いと同じように張り詰めたものがあったが、闘い方がまるで違った。
渾身の力を込めた刃(やいば)と刃がぶつかり合う。
剣だけではない。拳(こぶし)、肘、肩、頭、膝、踵(かかと)… ありとあらゆるところを使った、死力を尽くした闘い。
相手の呼吸と己の呼吸。
剣のこすれ合う耳障りなノイズ。
身体のぶつかる鈍い衝撃。

そして、それは不意に訪れた。
ホラーの鋭い爪が零の二の腕をかすめたとき、零の剣がホラーの脇腹に届いた。

「ぐっ!」

ホラーは脇腹を抑えて、零を睨む。
が、耐え切れずに、体制を崩すとその場で片膝をついた。
苦しそうな息遣いで身体を上下させているホラーのもとへ、零はゆっくりと近づいた。

『気をつけて、ゼロ』

油断なく忠告するシルヴァに、

「ああ、わかってる」

と、まだ粗い息の零が答える。
苦しそうに顔をあげたホラーからは、もう闘気は感じられない。

「…み、見事だ。
 さあ、早く私を楽にしてくれ、銀牙…」

「…」

零は何も言わずにホラーを見下ろしていた。

『ゼロ!』

促すようにシルヴァが零に声をかける。
シルヴァの位置から零の表情はわからなかったが、胸のうちは少なからず理解できるつもりだ。
だが、この闘いは終わらせなければいけないことも知っている。
呼吸の整った零は、双剣を身体の前でクロスするとそのまま高々と天に突き立てた。
くるりとふたつの輪が描かれると、冴え冴えと光る銀の鎧を召喚した。
その鎧を眩しそうに見ながら、

「美しい…」

とホラーは呟いた。

鎧の中から零の声が響いた。

「ひとつ教えてくれ…」

「…何だ」

傷が痛むのか、項垂(うなだ)れた格好でホラーが訊き返す。

「銀牙という魔戒騎士を探していたホラーというのはおまえなんだな?
 なぜ、俺を探した?」

  フッ

顔を伏せたまま、ホラーの表情が緩んだ。
だが、顔をあげたときにはそんな気配は微塵も見せなかった。

「自分で言うのもなんだが、私は自分の腕にかなり自信を持ってるんでね…
 強い魔戒騎士とやりあってみたかった… ただ、それだけだ…」

ハアハアと苦し気に呻きながら、ホラーはそう答えた。

「そうか。
 では、俺と闘ってみてどうだった? 強かっただろ?」

零の低い声が、どこか優しく聞こえた。

「ははは…」

感傷的な雰囲気を蹴散らそうとでもするかのように、ホラーの乾いた笑いが響いた。

「ああ、強かった… おまえと闘えてよかったよ…」

「そうか…」

そのとき、

『ゼロ、そろそろ…』

とシルヴァが遠慮がちに口を挟んだ。
鎧を解く時間が迫っていたのだ。
それに、早くとどめを刺さなければホラーを封印してやれない。
封印できなければまた人界にさまよい出てきて、渇望する己を満たすために人を喰らってしまう。

「銀牙、そいつを… シルヴァを大事にしろよ…」

(道寺の作った… 道寺がおまえに家族を、と心を込めて作ってやった魔導具だからな…)





鎧の下で生身の魔界騎士の表情が狂おし気に歪んだ。
だが、奥歯をぎりりと噛みしめて悲壮な覚悟を決めると、暗闇に煌めく刃(やいば)が銀色の光を放って振るわれた。

「ぐはぁー」

左の肩から右の脇腹にかけて真っ二つに斬られたホラーが、耳障りな断末魔を残して黒い霧となって散っていく。

その様子を見守っていたシルヴァに、ふいにオンブルの声が聞こえた気がした。

「シルヴァ、銀牙を頼む…」

と。





番犬所への報告が終わり、くたくたに疲れ切った身体で、零は塒(ねぐら)に帰ってきた。

『お疲れさま、ゼロ…』

今夜のシルヴァの労(ねぎら)いの声はどこまでも優しかった。

「おまえもね…」

そう言ってシルヴァを見つめる零のまなざしも優しかった。

『さ! さっさとシャワーでも浴びて、しっかり身体を休めなさい』

しんみりするのを嫌ってか、シルヴァはわざと追い立てるように言った。

「はいはい。明日も仕事は待っちゃくれない、ってんだろ? わかってるって!

 それにしても、今日はシルヴァもよくやってくれたよ。
 ゆっくり休んでくれ…」

そう言うと、シルヴァのついたグローブを外し、チェストの上にそっと置いた。




レバーを操作すると勢いよくシャワーから湯が飛び出した。
たちまち白い湯気が立ち込める浴室。
零は頭から湯を被り、無造作にがしがしと髪を掻く。
が、その動作がふいに止むと、だらりと腕を降ろした。

「Good-by…」

口に出してそう言ってみた。
シャアシャアというシャワーの音にかき消されて、自分の耳にも届かない。
そのときふと、昔、道寺が言っていたことを思いだした。
「Good-by」は、「God be with ye」を短く縮めた言葉だということを。

「我々魔戒騎士には神など関係ないが、それでも人にはそう言ってやりたくなることがある。
 God be with ye… 神のご加護を、と」

道寺はきっと言ってきたのだろう。
救うことのできなかった人たちや、愛する人を失った人たちに。
そして、妻に、鎧に、魔導具に…

「God be with ye…」

呟いたその声は、やはり自分の耳には届かないが、この気持ちはどこかに届くといいな、とぼんやり思った。



やがて顔をあげて、シャアシャアと降り注ぐ湯を真正面から受けた。

  キュッ

シャワーを止めて、濡れた髪を掻きあげる。
鏡の中の移る自分の顔は、どこか清々しく、真っ直ぐに自分を見つめ返していた。



fin
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終わった、です~
週に1回しか書かないから、10話書くのに2ヶ月かかりました~
こんなに長くなるとは自分でも思わず、しかも、戦闘シーンを書くことになるとは夢にも思わず、なかなか大変でございましたが無事にしゅ~りょ~!
長い間、最後までお付き合いくださった方、感謝、感謝デス!(ありガロ~♡)

さて、絶賛撮影中の絶狼ですが、今回は結構長いロケだったり、(定番の)激しいアクションシーンだったりで、スタッフのみなさん、役者のみなさん、大変そうですが、大きな事故なく撮影が進むようお祈り申し上げます。

…というわけで、明日から仕事か…(牙んば狼絶!)

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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