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きんのまなざし ぎんのささやき

ためらうのは君だから(2)

さっそくですが、お知らせです。

この「ためらうのは君だから」という妄想は、牙狼の世界観を楽しく美しく書き綴ってらっしゃいます、茅様としおしお様のおふたりが「第三弾コラボ」として発表した作品に触発されて生まれたものです。

おふたりの素敵な作品はこちらです~
未読の方がいらっしゃいましたらぜひどうぞ!
こちらからリンクすることは、おふたりのお許しをいただいてます!
「饒舌な指先」(by 茅様)
「感触」(by しおしお様)


さて、この「第三弾コラボ」のテーマですが、
不器用なあなたの指先が語ること

「不器用な指先」がうまく語ってくれることを祈りつつ…



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鋼牙の様子がおかしいことに、もちろんカオルはすぐに気付いた。
けれども怪訝そうな顔を見せたのはほんの一瞬で、すぐに気を取り直して口を開いた。

「鋼牙ったら、あたしに触って自分の指が汚れるのが嫌なのね? そうなんだわ!
 んもう! いいよ、いいわよ!」

カオルは口を尖らせて恨みがましそうな目で睨んでみせて、頬の適当な場所を自分の手でゴシゴシ擦(こす)った。
そんなカオルを見て、ザルバは言う。

『あ~あ~あ~
 そんな見当違いなトコを力任せに擦っても効果はないぜ、カオル…

 おい、鋼牙、汚れるとかなんとか、そんな’みみっちいこと’考えてないで、さっさとカオルに教えてやったらどうなんだ?』

溜め息交じりにザルバから促された鋼牙は、憮然とした表情を浮かべる。

「何もそんなことは…」

小さな声で抵抗を試みた鋼牙は、

「思ってないって言うのっ?」
『思ってないって言うのかっ?』

と若干、食い気味にふたりに言い寄られた。
そのあまりの迫力に、さすがの鋼牙も少しひるんでしまう。
その様子に気持ちを強くしたのか、カオルが畳みかけるように言った。

「じゃあ、どこが汚れてるのか教えてくれるんでしょうね?」

そう言って、鋼牙のほうにグイッと顔を突き出してきた。

『そうだ、そうだ、さっさと教えてやれよ、鋼牙!』

ザルバまでが調子に乗って、囃(はや)し立てるように言うので、鋼牙はますます憮然となる。





鋼牙がカオルの頬に触れるをためらったのは、決して自分の指が汚れることを嫌ってのことではない。
カオルの頬へと手を伸ばしたとき、気付いてしまったのだ。
彼女に触れるには、自分の手があまりにそぐわないことに…

ずっと闘ってきた鋼牙の手は、関節の部分が強くこすれて分厚くなっていて全体的にゴツゴツとした印象だ。
しかも、闘いの最中に知らぬ間についた細かい傷があちこちにあって、いつだってボロボロだった。
そのお世辞にもきれいとは言えない手が、汚れているとはいえ、すべすべとしたカオルの肌と重なって見えたときに、触れることをためらわせたのだ。

(触れたい…)

そう思う気持ちと同じくらい、

(触れてはいけない…)

という気になってしまうのだった。

(それなのに…)

こちらのそんなほろ苦い想いなど知らないカオルの挑戦的な態度に、軽い苛立ちを覚えつつ、鋼牙は突き出されたカオルの頬へと手を伸ばした。

「ここだ。ここが汚れている…」

触れるか触れないかという感じで、カオルの頬の一点を指した。

「え、ここ?」

そう言いながら、カオルはその辺りを拭うように擦ってみみせた。
だが、汚れが少し広がったくらいで、きれいに落ちたわけではない。

『駄目だな、カオル。ちっとも落ちてやしないぞ』

「え~っ、そんなぁ!」

眉間に皺を作ったカオルが、困った顔をして鋼牙の顔を覗いてくる。

「ねぇ、鋼牙がちょっとやってみてよ」

そして、再び頬を突き出す。

  ふぅ

鋼牙は小さな溜め息をついた。



御月カオルという女は、不思議な女だ。
それなりに年齢も重ねてきて、外見的にはしっとりとした大人の女性となっていたが、ふとしたときに少女のような顔を見せるときがある。
尽きることのない好奇心で、くるくると変わる表情。
そして、自分の気持ちに真っ直ぐで、人がどう思うか頓着しない奔放さ…
そんなカオルを相手にしていると、鋼牙のほうもポーカーフェイスでいられなくなってくるのは、昔からそうだった。
幼い頃から人との接触を極力絶ち、魔戒騎士に、父親のように黄金騎士になるべく修行に明け暮れた鋼牙は、自然と、感情を表に出さない面白味のない男に成長していた。
それなのに、カオルの前ではうまくその仮面が被(かぶ)れない。
自分でも奇妙に思えるくらい、カオルの言う、ちょっとしたことにことにイライラしたり、腹が立ったり… 時には、なんとも悲しくさせられたり、その逆でホッと癒されたりするのだった。
今だって、鋼牙の態度がおかしなことに彼女は気付いているはずだが、そんなことはおくびにも出さずに無邪気に絡んでくる姿が、鋼牙のわだかまりをいつの間にか溶かしてくれていた。
ほんの少し心の軽くなった鋼牙が、

「誰がやっても同じだと思うがな…」

と言いながら、カオルの頬をゴシゴシ擦り始めた。
最初は軽く、だがやがて力が入ってきて少し強めに頬を擦られて、思わずカオルは叫んだ。

「ちょ… 痛いよ、鋼牙ぁ!」

そう言って、逃れようと身をよじらせるが、鋼牙に肩を抱きかかえられるようにされていては、どうにも身動きが取れない。

「やれ、と言ったのはおまえだろう?」

鋼牙は、口では不機嫌そうにそう言いつつも、

「ここも付いている…

 ここもだ…」

と、カオルの額や鼻の頭を次々と擦っていく。

「やだ、やめっ… もう! ほんとにそんなとこ、汚れてるの?」

抵抗するカオルに、それを許さない鋼牙の攻防が続いた。
そうして、ひとしきり騒いだ後でザルバがやんわりと助け舟を出してきた。

『鋼牙、そろそろカオルを離してやったらどうだ?
 見たところ、いくらやってもあまりきれいになっちゃいないみたいだしな…

 カオル、鋼牙とじゃれ合うのもいいが、鋼牙に擦られたところが赤くなってるぞ。
 さっさと顔を洗って、少し冷やしたほうがいいんじゃないか?』

それを機に鋼牙が手を止めたので、カオルは少し息を弾ませながら、ホッとした。

「わかったわ、ザルバ。そうする…」

そう言ってカオルは、少しヒリヒリする頬や額をそっと手で抑えてみた。

「んもう、ひどいよ、鋼牙」

非難がましくそう言うカオルの目は、口で言うほど怒ってはおらず、どこか笑っているようにも見えた。





カオルには、分かっていたのだ。鋼牙が何らかの理由で、動きを止めたことを。
もちろんそれが何なのか、具体的な理由まではわからない。
だが、ひとつだけ言えることは、自分に対して遠慮なんかしないでほしいということだけだ。

(なんでも言ってほしいな… たとえあたしには理解できないことであっても)

そうは言っても、「正直に話せ」と言ったところで、あの鋼牙が素直に話すわけがない。
そこで、わざと「汚れるのが嫌で触らないんでしょ」と挑発的な態度を取ってみたのだったが、どうやらそれがよかったみたいだった。

(よかった… いつもの鋼牙に戻ったみたい)

ホッと安心したカオルは、鋼牙の胸をそっと押し、彼の腕の中から離れようとした。
が、わずかに抵抗があって、鋼牙のそばから離れることができない。
あれっと思って、思わず鋼牙の顔を見上げると、そこには先程までふざけていたときの顔ではなく、怖いくらいに真剣な顔の鋼牙がいた。

(え?)

そう思ったとき、鋼牙のゴツゴツした手がスッとカオルの頬に添えられ、親指がカオルの唇に触れた。

  ドキン

一瞬にして唇に熱が宿る。

「すまなかったな… 少しやり過ぎた…」

それだけを言うと、鋼牙はスッとカオルから離れ、リビングを出ていった。
リビングにひとり残されたカオルは、パタンと閉じたドアをぼんやりと見つめていたが、やがて耳まで真っ赤になる。

(きゃ~、なに、なに、なに!
 急になんだか暑くなってきちゃったんだけど!)

バクバクと波打つ鼓動を耳元で感じ、思わず両手で火照った頬と耳を抑えて、カオルは顔を洗うことも忘れてリビングに立ち尽していた。





リビングを出た鋼牙は、書斎へと向かった。
その足取りは幾分早く、心の動揺からくるものであることに違いないとザルバは感じ取っていた。

『おい、鋼牙』

「…」

返事もせずに歩き続ける鋼牙。
そんな子供じみた態度を無視して、ザルバは話しかけるのをやめない。

『何か意味深だったな、最後のアレは…』

「…」

『カオルの唇を奪いたくなったのなら、俺様に遠慮などする必要はないぞ』

ザルバに本心を言い当てられて内心ドキリとするが、それを表に出さない鋼牙。

『あ~あ、今頃、カオルの奴、悶々としてるんじゃないのか?
 よかったのか、鋼牙?
 なんなら今から戻ってもいいぞ。うん、そのほうがいいんじゃないのか?』

いい加減ウンザリした鋼牙がとうとう折れて、ザルバと向かい合う。

「いいか、ザルバ。
 そんなことはおまえが気にすることではない!」

精一杯怖い顔で睨むが、ザルバにはそんなものは通用しない。

『何を言っている。
 次代を担う冴島家の後継者問題のこともあるからな。
 まんざら関係ないわけではないぞ!

 まあ、人間の色恋のことは俺様には理解しようもないが、そうは言っても、鋼牙よりは何倍も… いや何十倍も俺様のほうが詳しいことに間違いはない!
 どうだ? ここは、ひとつ俺様がおまえにアドバイスをいろいろと…』

「黙れ!」

我慢できずに鋼牙はザルバの言葉を遮った。

「そういうことは、おまえからアドバイスを貰おうとは思っていない。
 おまえのいないところで、ちゃんと…」

そう言ったところで、ザルバが被せるように

『ほお、’ちゃんと’?』

と畳みかけたので、鋼牙はますます渋い顔になる。
そして、コホンと咳払いをひとつしてから、

「とにかく、おまえは黙っていろ!」

と感情を極力押し殺してそう言った。
憮然とする鋼牙を尻目に、ザルバはなおも愉快そうに笑っている。

『クックックッ… 頼むぜ、鋼牙。
 俺様のいないところで、しっかりと、な』

その呟きはしっかり鋼牙の耳に届いていたが、聞こえない振りをするしかなかった。

(まあ、いいさ。
 だが、冗談抜きでそろそろ頼むぜ、鋼牙。
 跡継ぎってやつを、さ…)

などと心の中で思い、ザルバはひとりほくそ笑んだ。


fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


ふ~ なんとか書き上げてしまいたかったんで、2話目は selfish にしては、ちょっと長くなってしまいました。

さて、どうでしょう?
ちゃんと不器用に書けたでしょうか?
(あ~ それは大丈夫そうだ)
ちゃんと語っているように書けたでしょうか?
(う~ん、そこはやっぱり弱かったな…)

タイトルにも「指先」とか「語る」とかといったキーワードも入っていないし、胸を張って「不器用なあなたの指先が語ること」というテーマで書いたよ! とは言えないのですが、エッセンスは入っていると思うので、これはこれで楽しんでいただければと思います。

最後になりましたが、快くお許しいただいた 茅様としおしお様にはとてもとても感謝しています。
あり牙狼~♡ あり牙狼~♡

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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