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きんのまなざし ぎんのささやき

ためらうのは君だから(1)

甘いものを食べたら、しょっぱいものが欲しくなりませんか?
そして、しょっぱいものを食べたら、また甘いものが…

そんなわけで、零くんのちょっぴり胸の痛くなるお話の後は、鋼牙とカオルのお話が書きたくなるのでした!(おーい、おやつと同じ次元かいっ!)

さてさて…
今度の妄想があま~くなるかどうかは自信ないですが、チャレンジ! チャレンジ!


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いつもより早い帰宅時間だった。
白いコートを翻し、長身の男が足早に屋敷を目指して歩いていた。

『なあ、鋼牙。
 今日は随分仕事が少なかったな』

「そうだな」

『このところ、あっちのホラーを斬れ、やれ、こっちにホラーが現れたぞと元老院にいいようにこき使われたからな。
 俺たちのがんばりが功を奏して、少しは陰我が減ったってところかな?』

男は歩みを止めた。
そして、左手の拳を持ち上げると、中指に嵌められた魔導具と視線を合わせた。



人間の欲望は果てしない。
そして、その欲望は常に満たされることなど無いのだ。
自分の欲望が満たされないことに、人間は、妬み、嫉(そね)み、やっかみ、恨みを募らせていく。
そのドロドロとした暗い思いに囚われていき、やがて、闇に取り憑かれて、身動きが取れなくなっていく人間は後を絶たないものなのだ。
そうした陰我が生み出す、ホラーと呼ばれる化け物を、太古の昔からソウルメタルでできた鎧に身を包んだ ’魔戒騎士’ が斬ってきた。
人間がいる限り、陰我は絶えない。
ホラーとの闘いは、終わることのない魔戒騎士の宿命なのだ。
だから、陰我が減ることはあってもなくなることなど無いことを、鋼牙も、また、その相棒であるザルバも十分にわかっていた。
それでもザルバがこんなふうに言ったのは、命を賭して闘う鋼牙たち、魔戒騎士への労(ねぎら)いの意味が込められているのかもしれない。



「ああ… そうだといいな」

幾分、視線を和らげた鋼牙は、ザルバにそう言うと、

「帰るぞ」

と再び歩き出した。





「おかえりなさいませ」

屋敷に帰ると、いつもどおりゴンザが出迎えてくれた。

「お早いお帰りでございますね」

そう言いながら、リビングへと向かう鋼牙に道を譲るべく身体を脇にどかした。

『優秀な俺様のおかげでな。あっという間に片づけてきたぜ』

と、鋼牙の代わりにザルバが自慢げに答えた後、鋼牙は、

「カオルは?」

とゴンザに尋ねた。
そのときちょうど鋼牙はリビングのドアに手を掛けたところで、声を潜(ひそ)めたゴンザに注意を促されることになる。

「あ、お静かに願えます、鋼牙様。
 カオル様は、リビングで先程までスケッチブックに鉛筆を走らせていたのですが…」

人差し指を口元に立てたゴンザが、鋼牙に代わって、リビングのドアをそっと開いた。
すると、午後の柔らかな日差しの注ぎ込むリビングに、スケッチブックに顔を伏せるような恰好で転寝(うたたね)をするカオルの姿があった。
軽くて柔らかそうなブランケットが彼女の背中にそっと掛けられているのは、恐らくゴンザの仕業だろう。

事態を掌握した鋼牙は、ゴンザと顔を見合わせてわずかにうなずくと、彼女を起こさないようにそっとリビングに入った。
白いコートを脱いでゴンザに渡すと、カオルに少しだけ近づいて顔を覗き込んだ。

「昨夜は遅くまで起きていらっしゃったようでしたから…」

白いコートをコート掛けにかけながら、ゴンザは小さな声で鋼牙に言った。

『カオルのやつ、夢でも見てるんじゃねぇか?
 笑ってるみたいだぜ…』

ザルバも声を潜(ひそ)ませる。
しあわせそうにまどろむカオルを、鋼牙は何も言わずに優しいまなざしで見ていたので、用事を終えたゴンザはそれをほほえましそうに見てから、そっとリビングを出ていった。

幾ばくかの優しいときが過ぎ、鋼牙はカオルから視線を外し、書斎へ向かおうと彼女の側から離れようとした。
そのとき、カオルの身体がピクリと動き、ゆっくりと目が開かれる。
身体をそっと起こして視線を彷徨わすと、リビングのドアの前にある鋼牙の背中が見えた。

「鋼牙…
 帰ってきてたの?」

耳に優しく響いた声に振り返った鋼牙は、

「ああ、ただいま」

と応じた。

「おかえり」

笑顔でそう言うカオル。
が、鋼牙のほうは少し目を見開いて、カオルの顔をじっと見つめた。
その様子に気付いたカオルが、怪訝そうな表情で尋ねた。

「なあに?どうしたの?」

すると、鋼牙はフッと表情を緩め、

「ここ…
 鉛筆の跡がついてる…」

そう言って、鋼牙は自分の顔の頬の辺りを指さして見せた。
見ると、確かにカオルの右の頬が黒くなっている。
どうやらスケッチブックに突っ伏していたために、エンピツの粉がそこに付いたみたいだった。

「えっ、やだ! どこ、どこ?」

慌てたカオルが頬に手を当てて、サッサッと払うような素振りで擦(こす)ってみる。
そんな様子も鋼牙の目にはとても愛らしく見えて、より一層表情が緩んでくる。

「そこじゃない。もう少しこっちだ」

そう言って、カオルの頬の汚れている部分を指し示そうとして伸ばした鋼牙の手が、途中でふいに止まってしまう。
そして、固い表情の鋼牙は、そのままカオルに触れることなく、手をギュッと握りしめてスッと手を引っ込めてしまった。



to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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