きんのまなざし ぎんのささやき
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木漏れ日の中のひととき
うぉぉぉ! もう3月です。3月なんですよ!
早くも2019年、2カ月が過ぎているではありませんか!
寒い冬も終わり、浮き立つような春を迎え、selfish の妄想も弾んじゃう、かな?
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
春。
ここ、北の管轄にある冴島家の邸宅の中庭では、このところの陽気でひと際濃くなった緑に囲まれた中で、コートを脱いだ鋼牙が剣を振るっていた。
ブゥゥゥン…
ブゥゥゥン…
目の前に仮想の敵を見立てての、という殺気立った稽古とは違い、一振り一振りの剣の感触を確かめるような、あるいは、一挙一動の身体のブレを確認するような身のこなしには、まるで禅の修行でもしているかのような、一種の荘厳な空気に包まれた雰囲気があった。
そんな中、屋敷の中から中庭に面するテラスに通じるフランス窓に、この家の執事であるゴンザがひょっこりと顔を覗かせた。
「おや、ここにもいない…」
つい口から零れた小さな呟きに、 中空に剣を向けたままで鋼牙の動きが止まり、顔だけを少し向けてゴンザを見やった。
「どうした、ゴンザ?」
魔戒騎士の頂点に君臨する黄金騎士、牙狼の鎧を継承する鋼牙の低い声は、聴く者にとってはぶるっと震えが来るほどの響きを持っていたが、長年冴島家に仕えているゴンザにとってはどうというほどのものではない。
ごく自然にスッと姿勢を正しただけで、
「いえ、カオル様がこちらにいらっしゃるかと思ったのですが…
そろそろお茶の時間にしようかと探しておりました」
と涼しい顔で、主の問いに答えた。
その答えを聞いた鋼牙は、ソウルメタルの剣をスッと降ろし、赤鞘に戻してから言った。
「カオルなら、例の場所に行くと言って出かけていったぞ」
鋼牙の言う ’例の場所’ というのは、屋敷の近くにある林の中にあり、そこだけポッカリと開けたところのことで、このところの陽気に小さく素朴な白い花をつけた野草が咲き乱れている場所だった。
カオルはそこを ’お花畑’ と呼んでいて、今日のようによく晴れた気持ちよい日にはよく足を運んでいた。
「出かけたのは小1時間ほど前だから、そろそろ帰ってくるとは思うが」
との更なる鋼牙の返事に、
「さようでございますか…」
と呟くように言ったゴンザは、さてどうしたものかと思い惑っている。
それを見た鋼牙は、考えるより先に言葉が出ていた。
「俺が行って、呼んでこよう」
と。
「いえいえ」
滅相もない、と一度は断ったゴンザでしたが、すぐに思い直し、
「やはり、お願いできますでしょうか?
実は、今、スフレを焼こうとしているところでして、やはり出来立てを召し上がっていただきたいので…」
と、鋼牙の反応を窺いながら控えめにお願いした。
「ああ、構わない。行ってくる」
鋼牙は一言そう言うと、庭に置かれたテーブルセットの椅子の背から白いコートを手に取り、ふわりと羽織って真っすぐに ’お花畑’ へと向かった。
林の中を5分ほど歩くと、急に視界がひらけた。
目線を上へと見上げると、それまでは木々の梢に邪魔されていた青空と光が、遮るものなく目に映った。
地面は柔らかく生い茂る鮮やかな緑で埋め尽くされ、名もない白い花がひっそりと、しかし今を盛りに咲いていた。
そんな中、ちょうど中央辺りに仰向けに寝そべっているカオルの姿を見つけ、鋼牙の目が優しく細められた。
目を閉じて、少女のように無垢な微笑みを浮かべているカオルのそばまで行き、上から見下ろすと、鋼牙によってできた影に気づいたカオルがゆっくりと目を開けた。
「ああ、鋼牙…」
カオルはその影が、自分のよく知る彼のものだと気づくと、まるで花が開いたようににっこりと笑った。
「こんなところでうたた寝してると風邪を引くぞ」
カオルに降ってきた声は、カオル以外の誰も聞いたことがない優しい声だ。
「ふふっ、わかってるんでけどね。でも、こうしてるとすごく気持ちいいんだよ?」
それに応えるカオルの声も、鋼牙以外には誰も聞かせたことがない甘えたような声だった。
さて、こちらは冴島家の屋敷。
鋼牙がカオルを迎えに行くと屋敷を離れてから、かれこれ30分は経過していた。
とうに焼きあがっているスフレは、すでに萎(しぼ)み始めている。
それを横目でチラリと見たゴンザは、首を横に振りながら大きな溜息をついた。そして、キッと顔を上げると、鋼牙とカオルを呼びに行くべく、’お花畑’ へと歩き出したのだった。
少し急ぎ足で林を抜けていったゴンザは ’お花畑’の端にたどり着くと、額に薄っすらとかいた汗を手の甲でぬぐった。
そして、改めてその場所を見渡していく。
すると、すぐにふたりの姿が目に入った。
並ぶように地面に腰を下ろしているふたりの後ろ姿だった。
それを見たゴンザは、すぐに「鋼牙様」と声をあげようとしたが、すうっと息を吸って大きく口を開けた状態でそのまま息を飲みこんだ。
なぜなら、後ろに手をついて足を投げ出すようにしているカオルに対して、彼女を見つめた鋼牙が、その頬へと手を伸ばしたからだった。
ゴンザを、すぐに目をそらした。
ふたりの世界を覗き見るような無粋な真似はしたくなかったのだ。
ゴンザは、そのまま音を立てないようにそっと回れ右をすると、足音を忍ばせてその場所を離れた。
そっと、そっと、そぉぉぉっと…
来たときとは反対方向に林の中をたどるゴンザの足取りは、どことなく弾むようだった。
堪(こら)えようとしてもどうしたって顔の筋肉は緩んでしまい、ニヤけてきてしょうがない。
ほら、無意識のうちに鼻歌まで口ずさんでいる!
きっと今頃、スフレも見る影もなく、すっかり萎んでいることだろう。
けれども、ゴンザの心はなんともいえない幸福感と、あったかぁぁぁい気持ちで目一杯に膨らんでいたのだった。
fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
ふふふ♡
弾んじゃったのは、ゴンザさんの足取りでしたね。
’お花畑’ でのその後のふたりがどんなだったか、みなさんの妄想も、ぜひぜひ膨らませてくださいませ♡
早くも2019年、2カ月が過ぎているではありませんか!
寒い冬も終わり、浮き立つような春を迎え、selfish の妄想も弾んじゃう、かな?
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春。
ここ、北の管轄にある冴島家の邸宅の中庭では、このところの陽気でひと際濃くなった緑に囲まれた中で、コートを脱いだ鋼牙が剣を振るっていた。
ブゥゥゥン…
ブゥゥゥン…
目の前に仮想の敵を見立てての、という殺気立った稽古とは違い、一振り一振りの剣の感触を確かめるような、あるいは、一挙一動の身体のブレを確認するような身のこなしには、まるで禅の修行でもしているかのような、一種の荘厳な空気に包まれた雰囲気があった。
そんな中、屋敷の中から中庭に面するテラスに通じるフランス窓に、この家の執事であるゴンザがひょっこりと顔を覗かせた。
「おや、ここにもいない…」
つい口から零れた小さな呟きに、 中空に剣を向けたままで鋼牙の動きが止まり、顔だけを少し向けてゴンザを見やった。
「どうした、ゴンザ?」
魔戒騎士の頂点に君臨する黄金騎士、牙狼の鎧を継承する鋼牙の低い声は、聴く者にとってはぶるっと震えが来るほどの響きを持っていたが、長年冴島家に仕えているゴンザにとってはどうというほどのものではない。
ごく自然にスッと姿勢を正しただけで、
「いえ、カオル様がこちらにいらっしゃるかと思ったのですが…
そろそろお茶の時間にしようかと探しておりました」
と涼しい顔で、主の問いに答えた。
その答えを聞いた鋼牙は、ソウルメタルの剣をスッと降ろし、赤鞘に戻してから言った。
「カオルなら、例の場所に行くと言って出かけていったぞ」
鋼牙の言う ’例の場所’ というのは、屋敷の近くにある林の中にあり、そこだけポッカリと開けたところのことで、このところの陽気に小さく素朴な白い花をつけた野草が咲き乱れている場所だった。
カオルはそこを ’お花畑’ と呼んでいて、今日のようによく晴れた気持ちよい日にはよく足を運んでいた。
「出かけたのは小1時間ほど前だから、そろそろ帰ってくるとは思うが」
との更なる鋼牙の返事に、
「さようでございますか…」
と呟くように言ったゴンザは、さてどうしたものかと思い惑っている。
それを見た鋼牙は、考えるより先に言葉が出ていた。
「俺が行って、呼んでこよう」
と。
「いえいえ」
滅相もない、と一度は断ったゴンザでしたが、すぐに思い直し、
「やはり、お願いできますでしょうか?
実は、今、スフレを焼こうとしているところでして、やはり出来立てを召し上がっていただきたいので…」
と、鋼牙の反応を窺いながら控えめにお願いした。
「ああ、構わない。行ってくる」
鋼牙は一言そう言うと、庭に置かれたテーブルセットの椅子の背から白いコートを手に取り、ふわりと羽織って真っすぐに ’お花畑’ へと向かった。
林の中を5分ほど歩くと、急に視界がひらけた。
目線を上へと見上げると、それまでは木々の梢に邪魔されていた青空と光が、遮るものなく目に映った。
地面は柔らかく生い茂る鮮やかな緑で埋め尽くされ、名もない白い花がひっそりと、しかし今を盛りに咲いていた。
そんな中、ちょうど中央辺りに仰向けに寝そべっているカオルの姿を見つけ、鋼牙の目が優しく細められた。
目を閉じて、少女のように無垢な微笑みを浮かべているカオルのそばまで行き、上から見下ろすと、鋼牙によってできた影に気づいたカオルがゆっくりと目を開けた。
「ああ、鋼牙…」
カオルはその影が、自分のよく知る彼のものだと気づくと、まるで花が開いたようににっこりと笑った。
「こんなところでうたた寝してると風邪を引くぞ」
カオルに降ってきた声は、カオル以外の誰も聞いたことがない優しい声だ。
「ふふっ、わかってるんでけどね。でも、こうしてるとすごく気持ちいいんだよ?」
それに応えるカオルの声も、鋼牙以外には誰も聞かせたことがない甘えたような声だった。
さて、こちらは冴島家の屋敷。
鋼牙がカオルを迎えに行くと屋敷を離れてから、かれこれ30分は経過していた。
とうに焼きあがっているスフレは、すでに萎(しぼ)み始めている。
それを横目でチラリと見たゴンザは、首を横に振りながら大きな溜息をついた。そして、キッと顔を上げると、鋼牙とカオルを呼びに行くべく、’お花畑’ へと歩き出したのだった。
少し急ぎ足で林を抜けていったゴンザは ’お花畑’の端にたどり着くと、額に薄っすらとかいた汗を手の甲でぬぐった。
そして、改めてその場所を見渡していく。
すると、すぐにふたりの姿が目に入った。
並ぶように地面に腰を下ろしているふたりの後ろ姿だった。
それを見たゴンザは、すぐに「鋼牙様」と声をあげようとしたが、すうっと息を吸って大きく口を開けた状態でそのまま息を飲みこんだ。
なぜなら、後ろに手をついて足を投げ出すようにしているカオルに対して、彼女を見つめた鋼牙が、その頬へと手を伸ばしたからだった。
ゴンザを、すぐに目をそらした。
ふたりの世界を覗き見るような無粋な真似はしたくなかったのだ。
ゴンザは、そのまま音を立てないようにそっと回れ右をすると、足音を忍ばせてその場所を離れた。
そっと、そっと、そぉぉぉっと…
来たときとは反対方向に林の中をたどるゴンザの足取りは、どことなく弾むようだった。
堪(こら)えようとしてもどうしたって顔の筋肉は緩んでしまい、ニヤけてきてしょうがない。
ほら、無意識のうちに鼻歌まで口ずさんでいる!
きっと今頃、スフレも見る影もなく、すっかり萎んでいることだろう。
けれども、ゴンザの心はなんともいえない幸福感と、あったかぁぁぁい気持ちで目一杯に膨らんでいたのだった。
fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
ふふふ♡
弾んじゃったのは、ゴンザさんの足取りでしたね。
’お花畑’ でのその後のふたりがどんなだったか、みなさんの妄想も、ぜひぜひ膨らませてくださいませ♡
コメント
Re:無題
えっ! えええ~っ! hitori様? ほんとに!?
またお会いできて嬉しいですぅぅぅ (ノД`)・゜・。
さて…
コメントありがとうございます。
ミイラになってしまった鋼牙を見て、せっかくのスフレが台無しになったにも関わらず、きっとゴンザさんは鼻歌交じりで、ひょっとしたらルンルンとスキップしながら帰っていったんじゃないでしょうか?
そんなゴンザさんも可愛いデス♡
またお会いできて嬉しいですぅぅぅ (ノД`)・゜・。
さて…
コメントありがとうございます。
ミイラになってしまった鋼牙を見て、せっかくのスフレが台無しになったにも関わらず、きっとゴンザさんは鼻歌交じりで、ひょっとしたらルンルンとスキップしながら帰っていったんじゃないでしょうか?
そんなゴンザさんも可愛いデス♡
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
ご覧になるにあたって
年代別もくじ
カテゴリー別
[12/31]
[01/22]
[12/24]
[12/03]
[11/19]
[10/15]
[08/06]
[07/30]
[07/09]
[07/02]
[12/31]
[01/22]
[12/24]
[12/03]
[11/19]
[10/15]
[08/06]
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[07/09]
[07/02]
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