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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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紙っぺら一枚で(1)

PCの調子が、相変わらず今一つで…
それでもなんとかご機嫌取りながら、今宵も妄想いたしましょう!
久しぶりの妄想が、こんなのでいいのか!? などと思いながら。
う~ん、大丈夫かなぁぁぁ

拍手[11回]



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  はぁー

カオルは、この日、何度目になるかわからない溜め息をついた。
そして、視線を手元のものに落とす。
吹けば飛んでいくような薄っぺらい ’それ’ を見つめるカオルの表情は硬く、知らず知らずのうちに呼吸も浅く速くなっていた。

だが、やがて、目を閉じて唇をきゅっと噛みしめたカオルが、ぱっと目を開けると、そこには何かを吹っ切ったような強い意志を秘めた目の輝きがあった。
そして、ひとつ大きくうなずくと、勢いよく立ち上がって部屋を出て行った。

彼女が向かう先はただひとつ。
冴島鋼牙の元だった。





  コンコンコン

強い緊張に包まれた中、カオルは書斎のドアをノックした。
中から鋼牙が応じると、そっとドアを開けてひょっこりと顔を覗かせる。

「ごめんね、鋼牙。今、ちょっとだけいいかなぁ?」

少し硬い笑顔のカオルに、鋼牙は内心訝(いぶか)しく思った。
だが、そんなことはおくびにも出さず、

「ああ」

と返事をする。
それに安堵したのか、ほっと小さく息を吐きだしてから、カオルは中に入りゆっくりと鋼牙の元まで来た。
だが、なかなか口を開かず、落ち着かない感じで視線が定まらない。
その様子に、鋼牙はゴンザとの会話を思い出していた。





夕刻。
外から屋敷に帰った鋼牙を、いつものごとく、ゴンザが迎えた。

「おかえりなさいませ、鋼牙様」

「ああ…
 カオルは?」

これまたいつものごとく、カオルの様子を何気なく尋ねた鋼牙に、ゴンザの顔が途端に曇った。

「カオル様は… ただいまお休みになっておられます」

『こんな時間にか?』

ザルバの素っ頓狂な声が響いた。

「どこか具合でも悪いのか?」

わずかに眉間に皺を寄せた鋼牙が尋ねる。

「いえ…」

なんとも歯切れの悪いゴンザが、少し考えてからまた口を開いた。

「本日、カオル様はお仕事の打合せがあると朝からお出かけになったのです。
 けれど、先程お帰りになったとき、ひどくお疲れのご様子で顔色も悪かったものですから、どうかしたのか、と尋ねましたら、なんでも、打合せの帰りにカオル様の目の前で男性が車にはねられるという事故を目撃されたそうなんです」

『ほぉ、事故ねぇ』

ザルバの声に、ゴンザは大きくうなずいてから先を続ける。

「たまたまカオル様のすぐ近くにいた女性が、その被害者である男性の恋人だったそうで、すっかり動転してしまった彼女に付き添う形で病院に向かわれたそうで…」

「それで?」

「はい。その男性は幸いにも命に別状はなく、男性のご家族の方もいらしたところで、カオル様は帰ってこられたそうなんです」

『やれやれ、そいつは飛んだ目に遭ったものだ』

「ええ。
 それで、ちょっと疲れたから休むと言って部屋に。
 食事もいらないからと…

 目の前で事故を目撃されて、ショックを受けられたんだと思います」

「そうか…」

そう言うと、鋼牙は階上へと目を向けた。
わずかに目をすがめる表情に、カオルを心配している彼の心情を思い遣ったゴンザは、

「カオル様には、後程、温かいスープと、何か軽くつまめるものをお持ちしようと思います。
 何も召し上がられないのはお身体に触りますし…」

と静かに声を掛けた。
すると、ゴンザに視線を戻した鋼牙が、

「そうしてやってくれ」

と言い、表情をわずかに緩めた。




そんなやりとりを思い出した鋼牙が、まだ本来の明るさを取り戻しきれていないカオルを見遣る。

「大丈夫か?」

「え?」

「疲れたから、と休んでいたのだろう?」

「あ、ええ… そうね。

 あっ、ゴンザさんから聞いてる?
 今日ね、目の前で男の人が車にはねられて、すごくびっくりしちゃったぁー」

わざとらしいほどにテンション高めにそう言ったカオルだったが、すぐにスッと真顔に戻った。

「それでね… 鋼牙にお願いがあるの」

うわずってしまいそうな声を、意識的に低めて、カオルはゆっくりと言った。

「…なんだ?」

鋼牙の落ち着いた声が、カオルの言葉を促す。

「あのね… これ…」

そう言ってカオルは、持参した ’それ’ を鋼牙の前の書斎机の上に差し出した。

  カサカサッ

乾いた軽い音をさせて置かれたものに視線をチラッと落とした鋼牙の目が、わずかに驚きに見開かれたが、カオルの顔に視線が戻されたときにはすでに落ち着いた目をしていた。

「これは?」

ごくっとカオルの喉が鳴る。
でも、決意を固めたカオルは、しっかりと鋼牙の目を見つめながらきっぱりと言った。

「書いてほしいの、これ…


 …鋼牙、わたしと結婚してくださいっ」

鋼牙の前に置かれた ’それ’ は、なんとなんと、まさかの婚姻届けだった!


to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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