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きんのまなざし ぎんのささやき

魔戒騎士と言えども

ただいま日本中を騒がしている新型コロナウイルス。
怖いですねぇ、怖いですねぇ…




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人気(ひとけ)のない深夜の廃工場。
零と邪美が人待ち顔で佇んでいると、そこに…

「すまない、待たせたな…」

と白いコートの裾を翻して、ふたりの ’待ち人’ がやってきた。

「いや、こっちこそ急に呼び出して、すまな…」

そう言いながら零が声の主へと振り返ると、

「いぃっ!?」

その男のいで立ちに思わず目を剥いて、口をあんぐりと開けて絶句した。
零の後ろでは、邪美が奇異なものでも見るように目を白黒させている。
そんなふたりの反応に、当の本人は、「何か言いたいことでもあるか」とばかりに眉根を寄せ憮然としていた。
いや、顔全体が見えるわけではないが、鋼牙の目が彼の心情を如実に映し出せていた。

鋼牙の姿に心底度肝を抜かれた零だったが、そこは黄金騎士と並び称されるほどの男である。
すぐに、こほんと小さく咳払いをひとつして冷静さを取り戻し、

「鋼牙。おまえ、なんで ’そんなもの’ してるんだ?」

と訊いてきた。

「そんなもの?」

わざと怪訝そうに尋ね返した鋼牙に、

『ああ、これか?』

ととぼけた調子でザルバが話に割って入ってきた。

『これは、カオルがどうしてもつけて行けと言ってきかなかったんだ。
 まったくこんなもの…
 魔戒騎士には必要ないとどんなに言って聞かせても、聞く耳持ちゃしなかったぜ!』

そんなザルバの話を聞いて、零が心の底から気の毒そうな顔をして鋼牙を見る。邪美は、ときたら、零の陰でくくくっと笑いをこらえている。

「そいつはどうもお気の毒…
 けれども、それ、ここでは取ってもいいんじゃない?
 さすがに、ここにはカオルちゃんの目は届かないんだしさぁ…」

零が鋼牙の反応を気にするように、斜め下から覗き込むように鋼牙に言うと、鋼牙は睨むように見下ろしながら、

「駄目だ」

と一刀両断。

「どうして?」

すぐに問い返す零。

「カオルと約束したからだっ」(効果音:どどん!)

「…」「…」

言葉を失った零と邪美。
一瞬、世界が氷漬けになったかのように静止したが、すぐに零が脱力し、

「おまえなぁ…」

という情けない零の声に、

「くっ、はぁー、はっはっは」

と、こらえきれなくなった邪美の高笑いが重なった。
そして、お腹を抱えてまだヒイヒイ言っている邪美が、

「いいんじゃないかい?
 どんな格好してたってホラーを倒すのに支障がなけりゃいいんだろ?
 なぁ鋼牙? 何か問題あるかい?」

とニヤニヤしながら尋ねると、鋼牙は答えた。

「いや… ない」

それを聞いて、

「だとさ?」

と邪美が目線だけ零にくれると、邪美はすぐに表情をさっと引き締めた。

「さぁ、鋼牙! 零!
 そろそろホラーのところに行こうじゃないかい?」

「ああ」

零が応え、鋼牙はふたりに目だけで会話してうなずいた。
それを合図に、白いコートと黒いコート、そして、邪美の長い髪が翻り、ホラーの待つ闇の向こうに消えていった。





未明の空の下。
冴島邸へと向かう影がひとつ。

重厚な玄関ドアをくぐると、そこにはこの家の忠実なる執事のゴンザと、そして、なぜかカオルの姿まであった。

「おかえりなさいませ、鋼牙様」

そう言って、ピンと背筋を伸ばしてゴンザが頭を下げると、

「おかえり、鋼牙!」

とカオルも愛くるしい笑顔を見せた。

「ああ、今戻った」

わずかに眉尻が下がり、鋼牙の目が穏やかになる。
そして、

「カオル、これはもう取ってもいいか?」

と鋼牙は自分の口元を指差す。

「あっ、ちょっと待って!」

カオルがそう言うとパタパタと彼に近づき、彼の耳の方に手を伸ばす。
それに合わせて、鋼牙は長い足を折り、彼女の手が届くようにと腰をかがめた。

「どこでも触っちゃダメなんだよ?
 ちゃんと、このゴムのところに指をかけないと…」

カオルの手が鋼牙から ’それ’ をつまんで離れると、鋼牙は思わず深呼吸をする。
何時間か振りに触れた新鮮な空気に、なんとなく身体が軽くなったような気さえした。

カオルは鋼牙から外したものをゴンザのほうに差し出すと、心得たゴンザがビニール袋を広げて待っていた。
すぐに袋の口が縛られて、カオルはゴンザと視線を交わしてニッコリとした。
そして、鋼牙へと振り向くと、

「さぁ、鋼牙!
 次は手洗いよ?
 うがいも忘れないでね?」

と言い、鋼牙の手を引いて洗面所へと歩き出した。


『やれやれ…
 黄金騎士ともあろう者が、マスクに、手洗いに、うがい、ってか?
 世の中も変わったもんだなぁ…ってか!?』

そんなふうにブツブツ呟くザルバの声を拾い、

「えっ、ザルバ。なんか言った?」

とカオルが尋ねた。

『いや、別に…』

「そう?」

少し訝(いぶか)しみながらも、先を急ごうとしたカオルに、ザルバはやはり思い直して声をかけた。

『なあ、カオル?』

「ん? なあに?」

『何度も言うようだが、魔戒騎士にはマスクなんぞ必要ないぞ?
 ホラーの邪気すら跳ねのけるよう鍛えてもいるし、魔法衣によって護られてもいるんだからな』

「…」

それを聞いたカオルが足を止めて、鋼牙の左手を取りザルバを真正面から見る。

「んー、でもね、やっぱり心配なの…」

そして、今度は鋼牙を見上げて

「ごめんね?
 きっとマスクなんて邪魔なだけなんだと思うけど…
 それでもやっぱり、何かあったら困るから」

と言い、どんな顔をしていいのか困って目を伏せた。
鋼牙は、そんなカオルの頭をポンポンと軽く叩き、そのままカオルの肩を抱き寄せた。
一瞬、ハッとして身を硬くしたカオルだったが、すぐに力を抜いて鋼牙に身を預ける。

やがて、鋼牙の力が緩み、カオルが身を起こして再び彼を見上げると、

「さあ、’手洗い’ だろ?」

と彼の穏やかな声が降ってきた。

  くすっ

カオルは笑みをこぼすと、

「うん、’うがい’ も… ねっ?」

と答えて、鋼牙の手を引いて歩き出した。





そ・し・て…

鋼牙と手をつないだカオルも一緒になり、泡まみれの手をこすりつけ合いながら手を洗ったとか、洗わなかったとか!?


fin
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実際のところ、亡くなった人も出ているウイルスに関して、こんなふうに妄想で取り上げるのは不謹慎なのかもしれないです。
けれども、ゴールの見えない閉塞感に包まれている中、「くすっ」と笑ってもらえたらいいなと思う次第です。

たとえ、魔戒騎士とは言えども、心配なものは心配なんです!
…というカオルちゃんの気持ち、お子さんや旦那様(奥様)をお持ちのみなさんだったら分かってくれるんじゃないでしょうか?

そして、そんなカオルちゃんの言うことを甘んじて受け入れてくれる鋼牙さんを見てみたいな、という selfish の気持ちも…

この週末は2日間、頭痛がして「まさか、わたし…」と思いつつ、熱もないからただの風邪よねと思い込もうとしていましたが、妄想していたら頭痛も収まったみたいです。
’笑い’ は免疫力を高めると聞きますが、妄想にもそういう効果があるかも、デス!


さてさて、そんな浮かれた気分はさておき…

みなさまも十分お気を付けくださいませ。
マスクをしても、手洗いをしても、うがいをしても、小さなウイルスの侵入は実際のところ防ぎようがないでしょう。
けれども、最後は自分の心身の強さがものを言います!
睡眠、栄養を十分に取り、ウイルスに負けないように抵抗力や免疫力を強く保ちましょう!

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も8年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



hitori 様[07/08]
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