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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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小さくとも(1)

阿修羅~

冴島家の奥様は、お母さんになってもキュート♡
父さんが過去形で語られるところとか、子ども部屋に両親の若かりし頃の写真が飾られているのとか、ちょっと「う~ん」と思うところはありましたが…

細かいことはこの際脇に置いて…
「家族同然」からしっかりと「家族」になったから許す!
(なに、その上から目線www)

拍手[21回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

昨夜振った雨のお陰で、空気が殊更に透明に感じられる朝。

「おかあさん、はやくはやく!」

屋敷の庭から続く雑木林の中の道を、幼い子どもが走っていく。

「待って、雷牙。そんなに走ると危ないわ!」

後ろから追いかける母親は心配そうに声をかけるが、とてもリラックスしている様子でその顔には笑みがあった。

何日か前に「カブトムシを獲ってみたい!」という息子にせがまれて、「朝早く起きられたらね」と約束したのだが、そんなの無理だろうと侮っていて今朝は痛い目を見た。
まだ朝日が顔を出したばかりの時間帯に、いつもよりは2時間以上早く起きた雷牙に、

「おかあさん、おかあさん、おきて!
 やくそくだよ、カブトムシ、とりに行こ?」

と叩き起こされてしまったのだ。
最初は渋々だったカオルも、今は、清々しい朝の気配にとても気分がよくなっていて、雷牙に感謝したいくらいに思っていた。



目の前を歩く雷牙は、上ばかりを見ている。
「カブトムシは、樹液の出ている木に集まるんですよ」とゴンザさんに教えてもらったらしく、樹液とは何なのかよくわからないながらも、とにかく濡れている木はないかと探しているのだ。

「ほらほら、上ばっかり見ていると転ぶんだからね」

そう言って注意した矢先、朝露に濡れた落ち葉のせいで雷牙がズルっと足を滑らせた。

「あっ!」

慌てて手を差し出して雷牙を支えようとしたカオルだったが、運悪く、張り出した木の根を踏んで大きく体制を崩してしまった。

「きゃ」

すぐに近くの立ち木に手をついたので、無様に転ぶようなことはなかった。
が、逆に崩れた体制のまま片足に体重がかかったために、足を挫(くじ)いたようだった。
痛みに顔をしかめるカオルのそばに、雷牙がやってきて顔を覗きこむ。

「おかあさん、だいじょうぶ?」

心配そうな顔の息子にカオルは笑いかける。

「大丈夫よ。
 雷牙よりもおかあさんのほうが転びそうになっちゃったね…」

そう言いつつ、カオルはそっと痛めた足に体重をかけてみた。

「痛っ」

これは、まずいことになった。
どうやら独りでは歩くのが難しい感じだ。

「ケガしちゃったの?
 …ぼく、だれかよんでくるよ!」

そう言って早くも駆け出そうとする雷牙に、

「だめ!」

とカオルは声をあげて、咄嗟に腕を掴んだ。
庭からの一本道だとは言え、ここからは屋敷の屋根がわずかに見えるだけで見通しは利(き)かない。
幼い子どもを独りで帰すには少し、いや、かなり不安だった。

(朝食の時間になっても帰って来なければ、きっとゴンザさんが様子を見に来てくれるはず…)

そう考えてこのままここで二人で待っているのが安全で安心で確実だ、とカオルは考えた。
だが、それには、あと2時間くらい待たなくてはならないだろう。

(雷牙がそんなにおとなしくしていられるかしら…
 ううん、でも、やっぱり待つのが一番だわ)

そんなふうに考えにふけっていたカオルは、うっかりして雷牙を掴んでいた手から力が抜けてしまった。
その一瞬、雷牙がカオルの手を振り払って、カオルから離れた。

「雷牙!」

慌てたカオルが手を伸ばすが、雷牙には届かない。

「おかあさん、まってて!
 ぼくがだれかよんでくるから!」

「だめよ、雷牙。
 あなた独りでは危ないわ!」

「でも、ぼくがやらなきゃ… ぼく、行ってくるよ!」

そう言うと、雷牙はカオルの制止を振り切って、今来た道を屋敷のほうへと駆けて行った。

「雷牙!」

カオルは雷牙を追いかけようとしたが、すぐに苦痛に顔を歪めて痛めた足を手で抑えた。
すぐに、ハッとして顔をあげたが、無論、雷牙の姿は林のずいぶん向こうに遠ざかっていて、呼び戻すことは不可能だった。

「雷牙…」

切なそうに見送ったカオルは、出来る限りの声を張り上げた。

「雷牙! ゴンザさんを連れてきて! お願いよ!」

その声が聞こえたのか、雷牙は後ろを振り返り、手を振って見せた。
そして、またすぐに走り始めた。
やがて、雷牙の背が見えなくなると、カオルは両手を握りしめて祈った。

(雷牙が無事に家まで着きますように…)

木漏れ日としてカオルに降り注ぐ朝の光が幾分強くなり、林の中にセミの声が聞こえ始めていた。





「カオル!」

雷牙がカオルの元に連れてきたのは、鋼牙だった。

「おかあさん! よんできたよ」

そう言ってしがみついてきた雷牙に、

「雷牙… ありがとう」

とカオルは安心したような、嬉しそうな顔を見せていたが、鋼牙と目が合うとシュンとした。

「ごめんなさい…」

夕べもホラーを狩る指令を受けて、深夜遅くに帰ってきた鋼牙からは、寝不足のせいもあるのか少し気だるさが漂っていた。
そんな鋼牙の手を煩(わずら)わせることになり、カオルは申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
だが、鋼牙は、カオルを責めるようなことは何一つ言わずに、すぐにそばにひざまずいてカオルが痛めた足首をじっくりと見た。

「挫(くじ)いただけのようだな。
 骨には異常はなさそうだ…」

そう言った鋼牙は、少し表情を和らげてカオルを見た。
そして、雷牙の頭に大きな手をポンと乗せると、

「雷牙、よくやったな…
 さあ、母さんと一緒に帰ろう。
 ゴンザが心配して待っているからな」

そう父に褒められて雷牙は、喜びに顔を輝かせて元気よく返事をした。

「うん!」



to be continued(2へ)
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初めまして。
こんばんわ。初めまして、ナサリシチです。
以前からこちらのサイトにて小説を読ませていただいてました。どのようにコメントしていいか分からずではいましたが、今回初めてコメントさせていただきました。

阿修羅の録画を見たあとにこの話を読んだので、実はあの後こんな風に繋がっているのかな?って思いながら読んでいました。普通の家庭とは違うけど、そこにもまた何気ないほのぼのとした普通の家庭と同じような日常の温もりを感じました。

selfishさんのお話は、心が温まるような話もありシリアスな感じや、鋼牙や騎士たちの生き様を感じさせるような話など色んな素敵な作品があっていつ来ても飽きないです(笑)
長くはなりましたが、これからも暑い日が続きますがどうかお身体には気をつけ……
ナサリシチでした。
ナサリシチ 2016/07/21(Thu)00:33:24 編集
Re:初めまして。
ナサリシチ様、初めまして!
丁寧なコメント、ありがとうございます。

selfish は、ほんとに気まま~に妄想しています。
鋼カオに限らず、零くんも、ゴンザさんも、その他いろんなキャラが好きで、とっかえひっかえ書いてきました。
そして、ほんのり甘いのやら、胸が痛くなる切ないやつやら、時にはメルヘ~ンなんていう馬鹿げたものまで、節操なく書いてきました。
きっと、それが飽きずに書いていく秘訣なのかもしれませんね。
だからこそ、ナサリシチ様も読んでて飽きないのかも… (^▽^;)

コメントの内容ですが、あまり難しく考えなくて大丈夫ですよ~
思ったこと、感じたことを一言でも聞かせてもらえたら、と思います。
だって、selfish 自身がのら~りくら~りと書いてるんですから… ね?
どうかお気楽に!

ぜひ、これからもお時間のあるときには、遊びにいらしてくださいませ。
そして、好きな話、気に入った台詞なんかがあったら、こっそりと(いや、別にこそこそしなくてもいいんですけど)教えてくださ~い! \(^o^)/
【2016/07/21 21:49】
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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