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きんのまなざし ぎんのささやき

小さくとも(2)

公開が1日遅れになりました。すいませ~ん。

鋼牙さんとカオルちゃん、そして雷牙のいる風景は公式様ではほぼ「なし」!
(あってもシルエットだけでしたもんね)
だから、ほんとに好きなように妄想してみました。
それが、少しでも「苦手だな」と思われましたら、回れ右でお願いしますね~


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カオルはベッドの家に座り、小さなスケッチブックを手に鉛筆を走らせていた。
雑木林の中で挫(くじ)いてしまった足には湿布が貼られて、ベッドの上に投げ出されている。
そこへ、梢を渡ってきた風が、レースのカーテンを揺らして部屋の中に入ってきた。
カオルは、スケッチブックに向けていた真剣なまなざしをすっと和ませて、緑が眩(まぶ)しい窓の外へと視線を移した。

「いい風…」

頬の辺りで、風と戯れた髪が泳いでいる。
カオルはその髪を耳にかけると、視線を窓から自分の膝のほうへと落とした。
そこには、丸まるようにして突っ伏して眠る雷牙の姿があった。
無防備に口を半分開けて寝ているのが、なんともかわいらしい。
カオルがスケッチブックに写し取っていたのは、そんな雷牙の姿であった。

気持ちよさそうに眠る雷牙の口元を、カオルは優しく突ついてみた。
もにょもにょと口を動かした雷牙だったが、それでも起きる気配を見せずに、また穏やかな寝息を立てて眠りに落ちていった。

  クスッ

カオルは笑い、雷牙の額にかかる髪をそっと撫でてやった。

今日は朝からずっと、カオルのそばから離れない。
なぜなら、雷牙は父親との約束を守ろうとしているのだった。





今朝のことだった。
怪我をしたカオルは、鋼牙によって屋敷に運ばれた。
その後ろを、父に遅れぬよう小走りに雷牙は付いてきた。
屋敷に到着すると、救急箱を抱えて待っていたゴンザによってすぐに怪我の処置が施(ほどこ)された。
そのときも、雷牙はゴンザの脇からじっとその様子を見つめていた。
幼い彼には怪我をした母に対して何もできることはなかったが、その場にいる誰よりもカオルの身を案じて心配していた。
その雷牙に、仕事で屋敷を出る鋼牙は言った。

「雷牙、父さんはこれから出掛けてくる。
 だから、母さんのことはおまえに任せたぞ」

雷牙の小さな両肩に手を置き、雷牙を見つめる鋼牙。
その目は優しかったが、笑ってはいなかった。
雷牙は父から向けられた真っ直ぐな視線にちょっと緊張したが、きゅっと口元を引き結ぶと、

「うん!」

と力強く返事をした。
鋼牙を見つめ返すその目は、純粋で美しく、父親のそれにも似て力強い光を放っていた。
その息子の頼もしい姿に、鋼牙の目はふっと優しくなったが、それとは相反して、大きな手ががしがしと息子の頭を撫でた。
その父親の顔から穏やかさが消えた。
そして、ゴンザを振り返ると言った。

「ゴンザ、行ってくる」

そう言った鋼牙の顔は、すでに魔戒騎士のものになっていた。

「行ってらっしゃいませ」

背筋を伸ばして最敬礼で見送るゴンザを背にして、鋼牙は一度も振り返らずに屋敷を出ていった。
父の背を見送る雷牙の眼差しには、大きな憧れで輝いてた。





カオルが、眠っている雷牙を見ていると、ふいに部屋のドアが開いた。
そこから姿を見せたのは鋼牙だった。

「あ、おかえりなさい」

寝ている雷牙を気遣って、カオルは小さな声でそう言った。

「ああ…
 足のほうはどうだ?」

「う~ん…
 動かすと痛いけど、こうしている分にはなんともないわ」

「そうか…」

ベッドのそばまで来た鋼牙が、雷牙の顔を覗き込む。
すると…

  クスクス

カオルが急に笑い出したので、鋼牙は顔をあげて尋ねた。

「なんだ?」

「ふふふ。
 雷牙ったらね、あたしになんにもさせてくれないのよ。
 お母さんは寝てなきゃだめだよ、って言って…」

そう言って愛おしそうに雷牙を見つめるカオル。

「そうか…」

出掛ける前にした約束のことを思い出しながら、鋼牙は息子のことを少し誇らしく思った。

「あのね、雷牙がね…」

そう言ったカオルが少し複雑な表情を見せて言った。

「昨日の夜にね、あたしに言ったの。
 黄金騎士になりたいって…」

魔戒騎士の子は魔戒騎士に。
それがごく自然な成り行きなのだろう。
だが、魔戒騎士を夫にした女は、魔戒騎士の母になることには何とも言えない複雑な感情を抱いていた。
しかも、雷牙がなりたいと言ったのは、ただの魔戒騎士ではない。
魔戒騎士の中でも最高位である、黄金騎士になりたいと言うのだ。

鋼牙には、カオルの気持ちをまるごと理解することはできないが、いくらか想像することはできた。
けれども、かけてやる言葉が見つからない。

「…」

何も言えない鋼牙は、言葉の代わりにカオルの手を握った。

  ふぅ

小さく息を吐いたカオルは、その手を握り返して弱々しく笑った。

「血は争えないものね…」

けれども、しんみりとした空気をすぐにカオルは吹き飛ばした。

「でも、大丈夫!
 雷牙が一人前の魔戒騎士になるまでには、あたしだってもっと強くなってるんだから!」

そうでしょ? と言わんばかりにニッコリ笑うカオル。
それは鋼牙に対して言う、というより、自分に対して言い聞かせているようにも見えた。
そんなカオルに、鋼牙はしみじみと思う。

(強いな…)

魔戒騎士の頂点とも言える牙狼の称号を継ぐ者である鋼牙だが、彼にとって、目の前にいるこの華奢な女は特別だ。
これまでに、守ってきたつもりが、助けられたこともあった。
いつだって自分の帰りを信じて待ってくれる、変えるべき場所であり、闘うための力をいつももらっている存在だ。

(それに、カオルだけじゃない…)

鋼牙は雷牙を見た。
この小さな愛おしい存在は、これまでに感じたことのない刺激や感覚を自分に味合わせてくれている。
自分が父に対して感じていた憧憬、畏怖、敬愛… そう言った想いを思い出させてくれる。
そして、自分もまた雷牙にとってそういう存在でありたいという想いを抱かせるのだ。
自分が与えられるものすべてを教え、導き、託したいという強い想い。
そして、やがて自分の力を越える存在になるのだろうという寂しさや、いつまで一緒にいることができるのかという一抹の不安も…

いろいろな想いが迫り、鋼牙はつい黙り込んでしまう。

「どうしたの?」

心配そうに尋ねるカオルに、鋼牙はハッと我に返った。

「いや…

 雷牙が目覚めたら、褒めてやらなくてはな。
 留守の間、がんばったな、と」

それを聞いてカオルも微笑む。

「そうね…」

そして、雷牙の顔に自分の顔を寄せて囁いた。

「雷牙…
 当分の間は、お母さんだけの ’守りし者’ で、いてちょうだい。ね?」

それを聞いた鋼牙は、少し面白くなさそうな顔をした。
そして、少し迷ったが、カオルのそばに腰かけてカオルを抱き寄せた。

「…ここにもいることを忘れるな」

照れているのだろう。カオルの方は見ず、少し声が不自然に硬かった。
自分だってカオルの ’守りし者’ であると、そう言いたいのだろう。
いや、自分こそがカオルの ’守りし者’ であり、雷牙などにはまだまだ負けないという対抗心か?

そんなことを考えてクスッと笑ったカオルは、鋼牙を見上げて言う。

「’守りし者’ がふたりもいるなんて…
 あたしはなんて幸せなのかしら」

カオルと視線を交わす鋼牙。
やがてふたりは引き寄せられるように近づくと…

  ふわ~

風にそよいだレースのカーテンがふたりの姿を一瞬隠し、

  チュ

という音だけが微かに聞こえた。





すると、そのとき。
ふいに目覚めた雷牙が、眠そうに目を擦りながら上を見上げる。

「あー
 父さんとお母さん、ラブラブだー!」

雷牙はもそもそと起き上がり、無邪気に叫んだ。
ぎょっとした鋼牙とカオルは慌てて離れたが、見られてしまったものはしょうがない。
カオルは赤くなりながら言うのだった。

「それじゃあ、雷牙もラブラブの仲間に入りなさい!」

そして、雷牙を抱き締めるとぎゅうっと抱き締め、額や頬にチュッとキスをした。
きゃっきゃ、きゃっきゃと笑いながらじゃれ合う仲睦まじい母子の姿を見守りながら、鋼牙はこっそりと溜め息をついた。

(こいつはまだ小さいが… なかなか侮れないな)




fin
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子どもの存在って、身体は小さいのに家族にとってはものすごく大きなものですよね!

そのうえ、親の背を見て、わからないなりにも「父さんと同じ黄金騎士になる!」と言い出した息子に、父親は父親なりの、母親は母親なりの感慨や苦悩を感じるんだろうな…

それにしても、鋼牙さんにとっては、物凄い強敵だと思いますよ。
なんせカオルちゃんからの愛情が滅茶苦茶そそがれてると思うので…

小さくともライバルだ!
負けるな、お父さん!

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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