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きんのまなざし ぎんのささやき

ざわめく夜

HDリマスター見ちゃうと、いろいろな感情が沸きますね。

懐かしいな~
若いな~
ひたむきだな~

…というわけで、何もオチはありませんが、牙狼の世界に浸りたいと思います。




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「お帰りなさいませ」

いつもより遅い時間に戻ってきた主人を、ゴンザはいつもどおり出迎えた。
遅かったですね、何か問題でも… そう尋ねたい気持ちがないわけではなかったが、ただ無事に帰ってくればそれでいいと自分に言い聞かせ、何も言わないことにした。

「ん…」

軽くうなずくように返事をした鋼牙は、リビングへと向かいかけたが、その足をすぐに止めた。

「ゴンザ…」

首を半分だけ回して、後ろから従ってくる執事に声をかける。
顔の半分はコートの襟に隠されていて、あまりよく表情は見えない。

「調べてほしいことがある。
 …御月カオルという女のことを… なんでもいい、調べてくれ」

ゴンザにとっては初めて耳にする名前だ。

「御月カオル様… ですね?
 その方が何か?」

ゴンザの問いかけに鋼牙の目が少し曇ったように見えたが、すぐに顔を正面に向けて歩き出したために、ゴンザは黙って従うしか他なかった。
リビングに入ったところで、鋼牙は白いコートを脱ぎながらようやく口を開いた。

「そいつは、画家の卵のようだ。
 明日からギャラリーで展示会を開く予定だとか言っていた…」

ゴンザの位置からは鋼牙の表情はわからなかったが、声には少し硬さが感じられた。

「ほお、画家の卵ですか…」

そう答えながら、その女性と鋼牙の接点は何だろうかとゴンザは思っていた。

「ただし、その展覧会は開催されない。
 なぜなら、そのギャラリーのオーナーが今夜の得物だったからな」

おおっと、ゴンザが息を飲むような気配を鋼牙は背中で感じていたが、次に言う事実は、彼をさらに驚かせるだろうことは容易に想像できた。

「その女は… ホラーの血を浴びてしまった。

 掟に従えば、俺はそいつを斬らねばならないが… 今夜は斬らずにおいた。少し考えがあってな…」

鋼牙はだんだん歯切れの悪そうな口ぶりになっていったが、ゴンザは知らされた内容の衝撃のあまり、そのことには気付かないでいた。

「…わかりました。
 2~3日、お時間をくださいませ、鋼牙様」

険しい顔でそう言ったゴンザに、

「頼んだぞ」

と応じて、鋼牙は脱いだコートを渡した。
そのままリビングから出るためにドアのところまで足を進めた鋼牙だったが、ドアノブに手をかけたところで、何かを思いついたように足を止めた。
ゴンザのほうは、コートをハンガーにかけて、襟や胸元のところを手で払いながら皺を伸ばしている。

「ゴンザ…」

呼ばれたゴンザはハンガーを手にしたまま、

「はい」

と振り返る。

「’血に染まりし者’ を救う手立ては…」

そう言いかけて鋼牙は慌てた。

(いったい俺は何を言おうというのか?)

「…いや、いい。
 カオルという女のこと、頼んだぞ」

口早にそう言って、リビングを出た。
後に残されたゴンザは戸惑いの表情を見せる。

(鋼牙様、あなたは…)

狂おし気な表情のゴンザは鋼牙の消えたドアをしばらく見つめていたが、小さく息をついてから、コートのかかったハンガーをコート掛けにそっと戻した。

(明日から忙しくなりますぞ!)

ゴンザはよしっと気合いを入れると、きびきびとした動作でドアに向かい、パチンと明かりを消して出ていった。





リビングを出たところで、鋼牙は自分に驚いていた。
予期していなかったような言葉が、自分の口からポロリと出たことに、ただただ茫然としてしまう。

(冷静に考えてみろ!)

鋼牙は、今夜初めて会った女の顔を思い出そうとする。
カオルというあの女には、同情を覚えるようなことはなかった。
脳裏に浮かんでくるのは、小型犬のようにギャンギャンとうるさく吠える、やっかいな存在という印象しかない。

『鋼牙、おまえ…』

声を掛けてきたザルバに、己の心のざわつきを指摘されそうに思った鋼牙は、すかさず、

「おまえは黙っていろっ」

と少し苛立たしそうに制した。
けれども、鋼牙の言うことに大人しく従うザルバではない。
これ見よがしに盛大に溜め息をついてみせて、

『まあな、ホラーの血を浴びたからと言って、1日2日でどうこうなる話でもないからな…』

とひどく気の抜けたような声で呟いてみせたが、その直後に、ガラリと声に凄みをきかせて、

『ただし、わかっているだろうが、猶予は100日しかない。
 その前になんとかしてやらないと…
 あの女にそのくらいの情けはかけてやれよ?』

と念を押すように言った。

「…わかっている!」

『…』

不貞腐れるようにそう言う鋼牙に、ザルバはもう何も言わなかった。




鋼牙はというと、自分のざわめく感情で余裕がなかった。

(このイライラした気持ちは一体何なんだ?)

普通の人間を巻き込むという失敗を犯した、自分の未熟さのせいか?
それとも、何かとつっかかる生意気そうなあの女のせいなのか?
あるいは、どうすべきなのか決断しきれない自分の気持ちの弱さのせいなのか?

これまであまり経験したことのない居心地の悪い感覚に、鋼牙は困惑するほか仕方なかったが、このときの鋼牙はまだ知らなかった。

  魔戒騎士はホラーを狩る者であり、ホラーさえ斬ればよい。
  その強さがあればこそ、真(しん)の魔戒騎士なのだ。

これまで経験的に培ってきたその考えが、ガラリと変わることになることを。



ざわざわとした感情を持て余しながら、夜は静かに更けていくのだった。



fin
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ファミ劇のオーディオコメンタリーも2話目がただいま放送中!
魔戒指南のほうも、その後から3話目が放送される予定です。

4話目「晩餐」は諸事情で放送されないんですね、残念…
人体がクラッシュアイスの如く粉砕されるシーンが衝撃的だった回です。
お父さんをホラーに喰われ、お母さんを慰める少年が、実に健気だったな~
美佳ちゃんがホントに塔の上に登って、身体を張った回でもありました。
カオルちゃんが鋼牙さんの見方をちょっぴり変える回でもあるし、見たかった…

あ、どの回も見逃がしたくないので、この回だけ特別ってわけでもないのですが、ね。

それにしても、オーディオコメンタリーでの主役のおふたりは、相変わらずです~ (*^▽^*)



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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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