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きんのまなざし ぎんのささやき

あの人の背中(5)

ちょっと間が空いてしまいました。 …すいません。

11月がいよいよ終わり、今年も残すところ、あと1ヶ月!
でも、この妄想はまだ終わらない…

イイ感じに終われるだろうか?
だんだん心配になってきました。 (;^ω^)


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翌日。
媚空の背中の札(ふだ)は、もうほとんど消えかかっていた。
ただ、マユリに言わせれば、

「まだ完全には消えていない!」

ということになるようで、もう少しの間、雷瞑館に滞在したほうがいいと強く主張した。

「無理に、とは言わないが、もし差し迫った指令がないのであれば、ゆっくり養生すればいい。
 あなたの仕事は、並みの魔戒騎士以上にハードなんだから…

 たとえ怪我が治ったとしても、身体の動きが元通りにならないと、とても指令を果たすことなんてできないだろう?」

雷牙も笑って、そう勧めた。

表向きには「指令がないのであれば」と言っている雷牙だったが、実際には、媚空が怪我を負って自分の屋敷に滞在していることを番犬所に報告した際に、

「もし、媚空に下るような指令があるのであれば、俺が彼女の代わりを務めよう」

という意思を伝えてもいた。
美しいが無表情のまま、神官ジイルはしばらく考えた。
魔戒騎士も魔戒法師も、その特殊な役目のために、恒常的に人手不足なのだ。

「復調していない媚空を無理に使って貴重な人材を減らすようなことは、私も得策ではないと考えます。

 …わかりました。
 元老院のほうには、私からもそのように伝えましょう」

ニコリともせずに、神官ジイルはそう答えた。
自分たちをゲームの駒か何かのように思っている神官の言葉に、引っ掛かりを覚えながらも、

「ありがとうございます」

とだけ答えて雷牙は番犬所を後にしていた。
番犬所から人界(じんかい)へと戻る間の薄暗い通路を抜けながら、当分の間、媚空には指令は来ないだろう、と考えて、

(これで、媚空は骨休めができるな)

と微笑んだ。



一方、媚空のほうは、温かい人たちの勧めと雷瞑館の居心地の良さに、正直なところ戸惑いを覚えていた。
’闇の狩師’ として忌み嫌われ、疎まれてきた自分に対して、ここの人たちは笑顔を向け、居やすいようにそっと気遣ってくれるのだ。
さすがに、ここを離れがたくなる気持ちは芽生えることは ’ない’ と思っているが、特別な感情が湧き上がっているのは確かだと感じていた。
従って、今後もシビアな自分の役目を全うするためには、傷が癒えれば、すぐにでもここを離れることが一番だろうな、と考えていた。

だが、そんな彼女にとってはよくない連絡が入ってきた。
それは、「破れてしまった魔法衣の修復には、もう2~3日はかかる」というものだった。

「媚空様、お待たせしてしまって申し訳ありません。
 ですが、修復のほうは、魔法衣の仕立ての腕前は魔界においてもトップクラスという者に依頼しておりますので、必ずや仕上がりにはご満足いただけることと思います。
 それまでの間、どうか、この雷瞑館で十分に力を蓄えていかれませ」

ゴンザは申し訳なさそうに謝りながらも、静かではあったが力強い口調で進言した。
そんなわけで、媚空は、もうしばらくここに滞在せざるを得なくなった。

雷瞑館に滞在してから、怪我の回復とともに食事も徐々にしっかりと食べられるようになった媚空は、少しずつ身体を動かすようになっていった。

その日、朝食を終えた媚空はリビングの片隅に陣取り、座禅でも組むかのように1時間余りじっと座った。
ピンと伸びた姿勢をキープしながらもどこにも無駄な力は入っておらず、ゆっくりとした呼吸にのみ意識していた。
最初のうちこそ媚空の存在を気に掛けていたようなマユリもゴンザも、やがて、そこに彼女がいることを忘れてしまうほど、媚空はリビングの空気と同化してしまったかのようになった。

また、あるときは、雷牙の許しを得て鍛錬場を使わせてもらい、突きや蹴りなどの動きをひとつひとつ確認し始めた。
中段の突き、上段の打ちから始まり、裏拳、肘、手刀での打ち。
中段、上段への蹴り、膝蹴り、後方への蹴り、側方への蹴り、回し蹴り。
前方からの攻撃の受け、側方からの受け、腕を交差しての受け。
攻守それぞれの動きをなぞり、徐々に筋肉がほぐれてくると、前後左右への体重移動に合わせて攻撃技と防御技を組み合わせていく。
だが、それは、仮想の敵を打ち据えるのが目的ではない。
その動きに闘気は微塵もなく、ゆっくりとしなやかに繰り返されて、まるで演舞のような優雅さを醸し出していた。



やがて、媚空の背中から ’瑠璃光の札’ が完全に消え、媚空が鍛錬場でひとりで汗を流した後も息切れひとつしなくなった頃、媚空は、

「雷牙。
 私の相手をしてもらえないだろうか?」

と静かに切り出した。
それを聞いて、一瞬、驚いたような顔を見せた雷牙は、すぐに笑顔で

「もちろん」

と応じた。
媚空が雷牙と相対するのは2度目だ。
だが、初めての対戦は思念の中での闘いで、実際に拳を交えたわけではない。

4~5mほどの間隔を挟んで、雷牙と媚空は向かい合った。

「行くよ、媚空」

「ああ」

媚空の返事に合わせて、1歩引いた雷牙が駆け出した。
少し遅れて、媚空も飛び出す。
雷牙の突きを媚空が払い、それを見越していた雷牙が媚空のこめかみを目がけて手刀を放つ。
それも媚空は肘で払いのけ、続けて放たれた雷牙の膝蹴りは両手を重ねた掌底(しょうてい:
掌の手首に近い部分)で受け止めた。
ふたりの間で視線がぶつかり、どちらからともなくニヤリと笑みが浮かぶ。

最初のうちは、雷牙も8割程度に手加減しようと意識していた。
媚空のほうも攻撃することに重きを置いているわけではなく、雷牙の動きに合わせてどのくらい凌げるかに重点を置いているようだった。
ところが、組んでしばらくすると、ふたりの頭からそんな考えはあっけなく吹き飛んでしまった。
媚空は雷牙の動きについてこれているばかりか、どんどん動きが速く多彩になっているのだ。
やがて、媚空にも ’責め’ の手があれこれ顔を出してくる。
時に、雷牙も紙一重の差で躱(かわ)す場面も出てきた。

「はっ!」

「ふっ!」

という気合いの籠った息遣いと、拳や膝や脛がぶつかり合う音、それに、ザザザ… キュッキュッという床の音だけが、鍛錬場に響いた。

相手がどういう手を出してくるのか?
自分はそれをどう防ぐのか?
相手の裏をかくにはどうしたらいいか?

頭で考えるより速く、身体が反応する。
感じるのは、何とも言われない昂揚感だけだ。

間合いを取っては組み、組んでは離れ、どのくらい経っただろう。
媚空の上段への蹴りが炸裂するか、というところで、雷牙がぐいっと相手の懐に飛び込み、左腕で蹴りを防御しつつ、右手の掌拳を媚空の顎に伸ばした。

顎すれすれのところで雷牙は寸止めし、媚空も蹴りをヒットさせる直前で動きを止めた。

「ふぅ」

息を吐いて、媚空は引き下がった。
雷牙はそれを見てうっすら笑う。
ふたりの顔には、汗が噴き出していた。

「やはり、そう簡単には勝たせてもらえないな」

媚空が残念そうに言ったが、表情は少しも暗くなかった。

「正直、ここまで汗を掻かされるとは思ってもいなかったよ。
 あなたの回復ぶりには驚きだ」

雷牙も屈託なく、それに答える。

「美味いものも食べたし、身体も十分休ませてもらったからだ」

先程までの鋭い視線はどこかへ行き、媚空の顔は穏やかだった。

「…」

媚空の言葉に、雷牙は感じるものがあったようだ。

「…出ていくのかい?」

すっと真顔になって媚空に訊いた。

「ああ。
 さっき、ゴンザから修復された魔法衣を受け取った」

「そうか…
 マユリが悲しむな」

「そうだな」

少ししんみりとした空気が流れた。



to be continued(6へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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