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きんのまなざし ぎんのささやき

こんな日が来るなんて(1)

毎日、お暑いですね!(この頃の決まり文句ですね…)
とは言え、朝晩の空気が少し乾いてきています。
「扇風機がお友」というPCの前に座っているのも、すこ~~~しだけ楽になったような… と言いつつ、汗をぬぐう。 (^_^;)

さあ、暑い現実から逃げましょう!
妄想妄想、楽しいな~


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木々の作る木陰にあるベンチ。
そのベンチに座り、スケッチブックを広げて何かを熱心に写し取っているカオルの姿があった。
元々大きかったが、この頃少し痩せたからか、一層大きく見える瞳は真剣そのもの。
時に大胆に、時に繊細に鉛筆を走らせる姿は、近寄りがたいような張り詰めた空気でに覆われていた。

すると唐突に、サラサラとよどみなく動いていた手が、ピタリと止まった。

  ふぅ…

小さな溜め息とともに、カオルはスケッチブックから顔を上げると、きゅっと目を閉じた。
鼻の奥がつんとしてきたのを感じ、カオルは慌てて上を向いた。




この公園は、カオルの住むアパートからほど近く、冴島邸に向かう通り道でもあった。
ほんの少し前までは、創作の息抜きや、鋼牙を訪ねて行くためにわりとよく足を運んでいた場所でもあったが、これまで取り組んできた絵本の制作を終え、シグマにより屋敷が破壊されてからはすっかり足が遠のいていた場所でもあった。
そう、何よりも、冴島鋼牙が ’約束の地’ へと旅立ち、この地にいないことがカオルの気持ちを暗く重くさせ、外出することもグンと減っていたのだ。

だが、いつまでもめそめそしてばかりいては駄目なのだ。
自分が沈んだままでは、いつまでたっても鋼牙が帰ってこないような気も、カオルはしていた。

(だから…)

カオルは口を横に引き結んで、くいっと顎を引いた。

(大丈夫! 鋼牙はきっと帰ってくる…
 あたしも自分が出来ることをがんばらなくっちゃ!)

決意を新たにしたカオルは、再びスケッチブックに視線を落とそうとして、ハッとした。
なんとなく、誰かの視線を感じた気がしたのだ。
カオルは辺りをゆっくり見回してみる。すると、見覚えのある姿が目に入ってきた。

公園に敷かれたタイルに響くヒールの音。
歩くたびに黒い魔法衣の裾から見え隠れする白く長い足。
真っ赤な唇に笑みを浮かべるその人は、カオルに向かって右手を軽く上げて振った。

「邪美さん!」

カオルは思わず立ち上がり、2~3歩彼女に近づいた。

「久し振りだね。
 …って言うほど、久し振りでもないか?」

カオルのそばまで来て立ち止った邪美が、茶目っ気のある表情で笑った。
邪美の笑顔に、カオルもつられてフッと笑う。

「そんなに前のことじゃないけど… でも、気持ち的には随分前のようにも感じます」

イデアとの壮絶な闘いのシーンが、ふたりの脳裏によみがえる。

「ああ、ほんとにね」

「ええ…」

神妙に黙りこくるふたりだったが、やがて、カオルが仕草でベンチのほうに誘うと、邪美はカオルの横に腰を降ろした。

「今日は何か?」

「ああ、ちょっとゴンザにね…
 で、あんたがどうしてるかって聞いたら、あんまり顔を出してないって言うからさ。

 どうだい? ちょっとは落ち着いたかい?」

優しい笑みを浮かべながら邪美は尋ねたが、カオルのほうは複雑な笑顔で応じる。

「うーん、まあ…
 でも、もうちょっと経ったら、きっと、大丈夫!
 って、そう胸を張って言えると思います」

噛みしめるように言うカオル。

「いいんじゃないかい? それで…
 それなら上々だよ」

「うん…そうね! 上々でしょ?」

ふたりでフフフと笑いあった後、邪美が遠い空を見ながら言った。

「今頃、鋼牙の奴、何をしてるんだろうねぇ」

それに倣って、カオルも空を見る。

「さあ…
 でも、間違いなく前に進んでると思う。 だって… 鋼牙だから…」

確信を持ってそう言うカオルの横顔を、少し眩しそうに見た邪美は、

「そうだね、あいつなら大丈夫。
 ちゃんとあんたの元に無事に帰ってくるよ」

と言った。
そして、盛大な溜息をつきながら、ぽつりとこぼした。

「はぁ、いいねぇ、あんたたちは。
 誰がどう見てもお似合いのふたりだもの」

そんな邪美の様子に怪訝そうに眺めて、カオルは遠慮がちに尋ねた。

「あの… 邪美さん?」

「ん? あのさ、その、邪美さんってのはやめとくれよ。なんだか、この辺がムズムズして気持ち悪いからさ」

そう言うと、邪美は首筋を掻くような仕草をしてみせてから、

「あたしのことは、邪美、って呼んでくれないかい?」

と言った。

「うん… じゃあ…
 邪美?」

まだ慣れない感じでカオルは呼びかけてみる。

「ああ、なんだい?」

「その… なんていうか… 何か悩みごとでもあるの?」

「え?」

わずかにうろたえる邪美。

「うん… なんだかその… いつものあなたらしくないっていうか…
 あ、そんなにあなたのことは知っているわけじゃないけど、でも… やっぱり、いつもとはちょっと違う感じがするんだけど…」

カオルからすれば、邪美には、数えるくらいしか顔を合わせたことがない。
初めて会った頃の邪美は、口ぶりも反抗期の少年のように乱暴で、カオルのことをずいぶん見下しているようなところがあり、彼女にとっての邪美の印象は少し… いや、かなり悪かった。

ただ、話に聞くところによると、邪美は魔戒法師の中でもかなり優秀で強い魔戒法師らしく、鋼牙とは幼なじみということもあって、鋼牙も結構… いや、相当信頼しているようなのだ。
それは、ザルバの体内の水が淀んでしまったときの鋼牙の様子でよくわかった。
自分の知らない鋼牙を知っている女性というだけで、カオルの気分は複雑なのに、さらに深い信頼関係が、などと言われたら、カオルの邪美に対する気持ちは「割り切ろう」と思っても、どうしたって複雑になるというものだ。

ところが…
今日の邪美は、いつもの自信たっぷりで余裕のある部分が影を潜め、少し弱気になっているような、そんな気がするのだ。



to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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