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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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こんな日が来るなんて(3)

さて、3話目を書こうかと思い、2話目の終わりを読んでみて驚いた!
なに! 邪美をどこに誘いだそうってんだ、カオルちゃん!
1週間前の selfish は何を考えてたんだ?
おいおい記憶にないぞ!

ああ、これはアレですね。
’問題の先送り’ ってヤツ?
困るんだよな、そういうことされるの。やれやれ…




::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

一口だけ残っていた酒をクイっと喉に流し込むと、邪美は静かにお猪口を卓の上に戻した。
ふと隣を見ると、蜂蜜梅酒が半分ほど残ったグラスに手をかけたまま突っ伏して、半分眠っているカオルがむにゃむにゃと何事かを言っている。

「ねえさん、強いねぇ」

あまり愛想のよいとは言えない、おでん屋のオヤジがそう声をかけると、

「何か召し上がりやすかい?」

とほぼ空になった皿を目で指した。

「そうだねぇ…」

そう言いながら、邪美はまたカオルのほうを見た。

「もう少ししたら帰るから…」

目の前のおでん鍋を覗き込み、

「大根とつみれだけもらおうか」

と言った邪美に、

「へぃ」

と短く返事したオヤジが、よく味の沁みていそうなのを皿によそって出して来た。

ニッコリ笑って、邪美が目で、ありがと、と伝えると、さすがにいい気分になったのか、

「カオルちゃんの友だちに、こんなべっぴんさんがいるとは知らなかったねぇ」

と言った。

「この子、いつもひとりで来るのかい?」

「そうさねぇ…」

思い出すように少し斜め上のほうを見上げるようにしていたオヤじが、

「ああ。
 カオルちゃんが誰かを連れてきたのは、初めてなんじゃないかなぁ」

と言った。





今から2時間ほど前。

「ちょっとつきあって」

と言ってカオルが邪美を連れてきたのは、とあるおでん屋だった。

「おじさん、久し振り~
 今日は、友達を連れてきたの」

そう言いながら入ったカオルを、

「おっ、なんだ、ずいぶん顔を見なかったな」

と返事を返したオヤジは、カオルに続いて入ってきた邪美にも

「いらっしゃい」

と声をかけた。

「少し狭いけど、奥の方、空いてるよ」

そう言って顎で示したのは、カウンターが曲がり、壁との間に無理矢理作ったような席だった。
確かに一度座ってしまうと身動きはあまりできないほど狭かったが、どうしたわけか不思議に落ち着ける、なかなかいい場所だった。

「乾杯!」

顔を見合わせ、手の中の酒器をカチリと合わせてから、それぞれ口に含む。
喉に染みわたるような酒に至福の表情を浮かべると、また目を合わせて、ふふふと笑う。

その後、てっきり根掘り葉掘り聞かれるのかと思っていたが、特にその手の話に触れるわけでもなく、どうということのない会話を楽しみながら、オヤジの作った美味しいおでんを食べ、酒を飲んだ。
ただ、その時間も長くは続かなかった。
カオルが早々につぶれてしまったのだ。





「この子がねぇ、いつかこんなこと言ってくれたんだよ…」

「え?」

唐突に口を開いたオヤジに邪美が訊き返すと、

「『おじさん、美味しいもの食べると、しあわせだね。くよくよ悩むことが馬鹿らしくなっちゃう。おじさんのおでん、とっても美味しいよ。ありがと…』ってね」

と言って、くしゃっと笑った。
そして、

「今日も、何か悩んでたのかねぇ…
 今日のおでんはうまかったかねぇ…」

と優しいまなざしをカオルに向けた。
それにつられて、邪美もしあわせそうな寝顔を見せているカオルを見た。

それなりにお客のいる店内はガヤガヤとしていたが、カオルの周りのこの狭い空間だけは、少し静かで穏やかな空間になっていた。

「オヤジさん…」

邪美が口を開いた。

「この子がどう思ったかはわからないが… ここのおでんは間違いなく美味かったよ。
 …あたしは、そう思ったよ」

そう言った邪美は、オヤジさんに笑いかけた。
オヤジさんはしばらくじっと邪美を見ていたが、すっと背筋を伸ばして、頭を下げた。

「ありがとうございます」

そして、頭をあげると同時に別の客に呼ばれて、そちらの応対へと移っていった。





徳利から冷えてしまった最後の酒を、猪口にそそぐ。
そして、皿の上の大根に箸を入れ、口に運んだ。
ジュワっと口の中に広がる出汁が、別のところにも温かく沁みた。

(弱音を吐くようなキャラじゃないもんね、あたしは…)

そんな自分を気遣い、カオルは無理に話を訊こうとしなかったのだろう。

(まさか、あんたにこういう気遣いされるとは…
 あんたに慰められる日が来るなんて思いもしなかったよ)

口元に笑みを浮かべて頬杖付きながら、邪美はカオルの寝顔を見ていた。

すると…

「美味し~ おじさん、サイコ~♡」

という寝言が。

「うふふ」

邪美は堪えきれずに笑う。

「あんたも最高だよ、カオル…」



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


ちょっと無理があったかな。(いや、あったかも)
なにせ、ほんとに、どういう展開を考えて、2話目の最後をあんなふうに書いたのか、まったく記憶になかったので。

まだまだ、おでんを食べたくなるような季節ではありませんが、MAKAISENKIの24話目はどことなく寒々しくて、そういう季節なのかなと勝手に思い、おでん屋さんにLet's Go! としてみました。

先に酔いつぶれちゃったカオルちゃんは、邪美姐さんよりは弱い立場とも言えるんでしょうが、彼女の懐の大きさは、邪美姐さんをも感心させるものだと思います。
そういう風に書けていたらいいのですが、どうかイイ感じに脳内で補填してくださいませ。

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無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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