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きんのまなざし ぎんのささやき

怒ってますっ!(1)

前作「めぐる季節の中で」からずいぶん間があいた気がします。
あぁ、1週間ぶりなのですね。
なんだか、このまま書かなくってもいいのかしら… と思い始めてました。

そんな自分を追い込む意味も込めて、見切り発車でGo! しましょうか。

(ははは…
  大丈夫かな?)

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「もう、頭に来た!」


鼻息も荒く、カオルが冴島の屋敷を飛び出して、市街地にあるアパートへと
帰って来たのは、4日前のことだった。

きっかけはほんの些細なことだった(…と思う)
鋼牙がほんのちょっと譲歩してくれれば、こんなにムカつくこともなかった
(…んじゃないかな? 多分…)

「あぁ~ん、もう!
 忘れちゃうくらいだから、大したことが原因じゃなかったんだと思うけど、
 とにかく、やたらと腹が立ったことだけはハッキリ覚えてる!

 うぅ~、なんだか、今だにムカムカする!」

4日過ぎた今の時点でも、原因がはっきりしないことも手伝ってなのか、
カオルの怒りは完全に収まることがなかった。



こんなときは、創作活動もスムーズにはいかない。

逃避行動として、描くことに無理矢理没頭しようとしても、手がいつもの
ようにスムーズには動かないのだ。
そのことがまた、カオルをイライラさせる。


「う~~~」

白いスケッチブックを前に、低く唸って、がっくりとうなだれるカオル。



それなら… と、手早く外出の支度をして街に出ることにした。

画材屋さんや本屋さんをブラブラしてみたり、秋物のファッションが
並ぶウィンドウやショップを覗いたり、気の向くままにあちこちを
そぞろ歩いてみた。
ほんの数週間前までは、ジリジリと燃えるようだった太陽はその勢いを
若干失い、頬に触れる風にもほんの少し秋の気配が感じられた。

そうは言っても、歩き通し、立ち通しでは足も疲れ、喉もカラカラに
乾いてくる。
その両方を解消しようと、カオルはきょろきょろと辺りを見回し、
大きな通りに面したカフェへと飛び込んだ。

店内は適度にエアコンが効いていて、それだけでほっとする。
数分後には、ちょうど空いた窓際の席に座り、道行く人を眺めながら、
ラテの香りに包まれた。

「ふ~っ」

人心地ついたカオルは、カバンの中から本を取り出し、栞の挟んであった
ページを開いた。
そして、しばらくの間、物語の世界に身を投じていった。


 ……どのくらいか経過……


物語の区切りのいいところまで読み終えたとき、カオルは栞を挟んで、
本を閉じた。
さて、そろそろ席を立とうかと思っていたとき、窓の外に、両手に荷物を
抱えた、見慣れた顔を見つけた。
カオルは反射的に席を立つと、その後ろ姿を目指して駆け出した。



「ゴンザさん!」

背後から呼びかけられたゴンザは、立ち止まって、おや? という具合に
ゆっくりと振り返った。
そして、カオルの顔を見つけると、にっこりと微笑んだ。

カオルがゴンザのそばまで駆け寄るのを待って、

「これはこれは、カオル様。
 こんなところで会うとは奇遇でございますね」

と、偶然の出会いを喜んだ。

「ほんとに!
 今、そこのカフェにいたんだけど、ゴンザさんの姿が見えたから、
 飛んできちゃった」

少し弾む息の下で、カオルはそう言って笑った。
そして、そのまま、なんとなく、ふたりで肩を並べて歩き出すことになる。

「カオル様、絵のほうは順調ですか?」

「えっ?
   あっ!
 う~ん、なかなか思うように描けない… かな」

曖昧な笑いを浮かべて、カオルは答えた。
その答えに、ゴンザは父親のような穏やかなまなざしを向けた。

「さようでございますか…

 この頃、屋敷のほうに顔をお出しにならないので、絵のほうに集中して
 いるんだろうか、と、鋼牙様とも話していたんですが」

「えっ? 鋼牙と?
 …鋼牙は、他に何も言ってなかった?」



カオルは、4日前に屋敷を飛び出したときのことを思い出していた。
きつく握りしめた手が真っ白になるくらいで(あとから自分の手を見たら
爪の痕がくっきりと残っていた!)、ちょっぴり涙も浮かんでいた。

「んもう… 鋼牙のバカ…」

俯き加減で、低く押し殺した声で言った言葉が、鋼牙に届いたかどうかは
わからない。
感情が爆発してしまう前に、と思い、カオルは急いでバッグを引っ掴んで、
リビングを飛び出したのだった。



「はて…」

カオルの問いに、ゴンザは、ここ何日間かの鋼牙の様子を思い返してみた。

「いえ… 特に変わったご様子はございませんでしたが」

そう答えたゴンザは、それがどうしたのか? と問いたそうな顔で、
カオルを見た。
別にウソをついているわけでもないようなゴンザの様子に、カオルは
困惑を覚えた。

(あたしをこんなに怒らせといて、鋼牙のやつ、なんとも思ってないの
 かしら…)

ゴンザの存在など忘れたように、考え込んでしまったカオルに、ゴンザは
おずおずと声をかけた。

「あの… カオル様?」

はっとしたカオルが、慌てて笑顔を作って、ゴンザに答えた。

「あ、あぁ…
 な、なんでもないの。 ちょっと、考え事をしていて…

 うん… あっ、そうっ!
 今、ちょっとアイディアが湧いたから、すぐに帰って描かないと!

 それじゃ、ゴンザさん! またね!」

カオルは慌ただしくそう言うと、バタバタと走ってその場を立ち去った。



ゴンザから見えない場所まで来ると、カオルは無性に腹が立ってきた。

(ちょっと待ってよ! どういうことっ!
 どうしてあたしが創作活動で閉じこもっていることになってるの?

 鋼牙ったら、あたしがこんなに怒っていることを、ゴンザさんに
 隠してるってこと?

 ま、まさか、鋼牙ったら、あたしが怒ってることに気付いてない
 とか?

 え~っ、まさか、それはないよぉ~

 ううん、ひょっとしてってこともあるかも?

 いやいやいや…  う~~~ん)



どこをどう歩いて帰ったのかも分からなかったが、カオルはアパートに
辿りついた。
自分の部屋に戻ってからも、何やらすっきりしない気持ちで、悶々と
した時を過ごした。



to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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