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きんのまなざし ぎんのささやき

もしもの話(13)

まだまだ闘いの場面は続きます。
selfish の腕では書ききれないスピード感とか、迫力とかについては、ぜひぜひ目いっぱいの想像力を発揮して補完してくださいね!
頼みましたよっ!


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「そいつを離せ!」

高ぶる感情を押し殺すように低い声でコーガが叫びます。
レイも厳しい表情で、隣に並ぶコーガと、目の前のハーリーティー、そして背後の巨大ホラーのそれぞれの動きに注意を配ります。
そのとき、コーガたちの背後から

『『ろさらたな…(お母さま…)』』

という、ざらざらと耳障りなホラーの複数の声が重なるように聞こえてきました。
巨大ホラーが苦し気に手を伸ばして、母親であるハーリーティーに助けを求めているのです。
その声を聞いて、ハーリーティーは

『あぁ、かわいそうに…』

と美しい顔を悲しそうに歪ませました。
けれども、その表情のまま言った次の言葉に、コーガたちは驚きで目を見開くことになるのです。

『でもね、坊やたち。
 あなたたちがいなくても、子どもなんてどれだけだって作ろうと思えば作れるのよ?
 ほら、醜い人間たちの陰我なんてこの世の中には腐るほどあるんだから…、ね?』

『『らぁぁぁぁ(あぁぁぁぁ)』』

地を揺るがすような深い絶望の嘆きが、巨大ホラーの口からこぼれます。

「なんて奴だ…」

憤りを噛みしめ、レイが呻くように呟きました。
コーガの眉間にもこれ以上ないほどの深い皺が刻み込まれています。

けれど、ほんとに驚愕したのは、ここから先のことでした。

「ちょっと、あなた…」

低い低い地を這うようなカオルンの声が、一気にその場を凍てつかせたのです。
怒りに震え、うつむいていたカオルンが、その顔がゆっくりとハーリーティーに向けると、ハーリーティーは怪訝そうに片方の眉をくいっと引き上げました。
つい先ほどまでは、どうにかハーリーティーの腕の中から逃げだそうともがいていたカオルンでしたが、今やじわじわとハーリーティーに詰め寄っています。

「子どもなんていくらでも作れる、ですってぇ?
 なにそれ? なんて傲慢な口の利き方をするのかしら!

 確かにホラーにとったら、人間は弱くて脆(もろ)い存在なのかもしれないけど、その言い草は聞き捨てならないわっ」

感情を抑えつつ、静かな怒りをぶつけるカオルンに、思わずハーリーティーも身を引きます。
どんなに子どもを願っても得られないカオルンにとっては、強い悲憤で身をねじ切られるほどの辛さでした。
カオルンは涙を堪えながら、さらに言い募ります。

「醜いのは人間じゃない! 人間の弱さが醜く姿を変えたのが陰我よ!
 その陰我から生まれるホラーこそが醜く、忌むべき存在だと、あたしは思う! 今、心の底から、あなたを卑しく思っているわ!
 あたしは… あたしは… あなたが大嫌いっっっ!」

華奢な肩を怒らせて、カオルンは力いっぱい叫びました。





そんな光景を半ば茫然として見ていたコーガたちに、声を潜めてバルザが促します。

『動くなら今だっ!』

ハーリーティーがカオルンに気を取られているうちに、といいたいバルザの意を汲んで、レイがこっそりと囁きます。

「カオルンのことは任せた。後ろの奴は俺が始末をつける…」

そう言って、音も立てずにコーガのそばから離れていきました。
頼もしい男に後方を任せたのですから、コーガはもう、目の前の敵だけに集中するだけです。
ぐっと顎を引いたコーガが気配を消して動き出したことに、ハーリーティーもカオルンも気付きませんでした。





自分に敵うはずのないちっぽけな人間の女にいいように言われて、ハーリーティーはムッとしましました。

『たかだか人間の女風情が何を言っている。
 おまえよりも私のほうが強くて美しいことは疑いようもない事実ではないか!』

ハーリーティーも負けじと、カオルンに覆いかぶさるようにして反論します。
けれども、カオルンは怯(ひる)みません。

「ええ、確かにそうね。
 あたしがあなたよりも弱い存在であることは認めましょう。
 でもね、あなたのその姿はまがい物なんでしょ?
 あたしは、あなたが美しいとは認めないわ!」

じりじりとした睨み合いが続き、苛立ちが募ったハーリーティーが、

「うるさい小娘だね!
 あんたなんか、こうしてやる!」

と長く曲がった黒い爪の生えた手を高々と振り上げました。
ひとつひとつが鋭く尖り、そんなもので攻撃されたらカオルンはひとたまりもないでしょう。
思わず、ひっとカオルンは目をつむり、身体を小さく固まらせましたが、その耳には、低く心地よい声が響いてきました。

「それ以上動くな!」

「ぐっ…」

「コーガぁ」

喉元に牙狼剣を突き付けられ、ハーリーティーは動きを止めました。
コーガは目で制しつつ、

「下がっていろ」

と肩越しにカオルンへと声をかけます。

「うんっ」

カオルンは、頼もしい背中へとこぼれんばかりの笑顔を送り、すぐにその場を離れて岩の後ろに身を隠しました。





レイの前には、巨大ホラーがうなだれる恰好で力なく座っていました。
もう闘う気力もない、というようでした。

「俺におまえを斬らせてくれ…」

レイは静かに言いました。
巨大ホラーはレイをちらりと見ると、好きにするがいいさ、とでもいうようにうなずきました。

「おまえの陰我を断ち切ってやるよ。
 そうして、今度は、おまえを心から愛してくれる親の元に生まれ変われることができたらいいな…」

そう言うレイに、ホラーは驚いたようなまなざしを向けました。
その瞬間、双剣を握り直したレイは、踵を左右に振り、爪先で大地をしっかりと踏み締めて腰を落としました。
そして、高く高く中空にジャンプすると、冷たいほどに煌めく銀の刃をホラーの眉間に目掛けて叩きつけました。

カッと見開くホラーの目。
だが、次の瞬間、微笑むように柔らかくまなじりを下げたように見えたのは、レイの錯覚だったでしょうか…

そのまま、真後ろにドドッと倒れ込んだホラーの身体が、砂のように形を崩していったのを、レイは静かに見送りました。





カオルンの安全を確保したコーガは、ハーリーティーと差しで勝負していました。
一進一退の攻防に、双方ともに焦れてきました。

(奴の弱点でもわかればいいのだが…)

そう思っていたとき、巨大ホラーを倒したレイがコーガへと声を張り上げます。

「コーガ!
 ’をぴゆさね’
 これの意味が分かるかっ?」

をぴゆさね… 魔戒語でそれは「指を咬め」だ。

「あの巨大ホラーが最後にその言葉を遺していったんだ!」

ソウルメタルを扱うことにはどれほどの苦労も厭(いと)わなかったレイでしたが、魔戒語の習得といった、頭を使う訓練には前向きになれなかったようです。
それでも、ハーリーティーに裏切られて哀しい気持ちで散っていった巨大ホラーの言葉が、コーガの闘いに何らかの助けになるだろうことを、武人特有の嗅覚で嗅ぎ分けたのでした。

「あとは任せたぜ…」

そう呟いて銀色の鎧を解除したレイは、ホッと息をついてコーガの闘いを見守りました。



to be continued(14へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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