忍者ブログ

きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

最近の’妄想’
2025/12/31 ・・・ ようこそ
2023/12/24 ・・・ 金牙新年!
2023/12/03 ・・・ 冬ごもり大作戦(2)
2023/11/19 ・・・ 冬ごもり大作戦(1)
2023/10/15 ・・・ とある秋の日
2023/08/06 ・・・ いちばんの存在(6)
2023/07/30 ・・・ いちばんの存在(5)
2023/07/09 ・・・ いちばんの存在(4)
2023/07/02 ・・・ いちばんの存在(3)
最近の’お礼’

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

やるべきことは

久しぶりに見ちゃった!
MAKAISENKI 第17話「赤筆」。

ホラーのせいで、鋼牙さんに ’破滅の刻印’ があることを初めて知るカオルちゃん。
はぁー きゅんきゅんしますー!


拍手[12回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

思いつめたような表情で、烈花は歩いていた。
頭の中は、あの男のことを考えていた。

(鋼牙…)

眉間の皺が一層深くなる。

ここ最近、赤い仮面をした男に魔戒騎士が次々と襲われ、胸に ’破滅の刻印’ を刻まれるという事件が頻発していた。
胸にその刻印を刻まれた魔戒騎士は、それが発動してしまうと命を落とすことになるという。

元老院のほうでは、魔戒騎士や魔戒法師たちの間に動揺が走ることを懸念して、すぐさまこの件に関して箝口令(かんこうれい)が敷かれたが、元老院が秘密裏に詳細を把握しようとしている間にも、’破滅の刻印’ を刻まれた騎士の数は増大しており、元老院付きの魔戒騎士や法師たちの一部にしか知られていないこの事実も、市井に紛れている魔戒法師にまで届くのは、もはや時間の問題といったところだった。

烈花がこの話を聞いたのは、邪美からだった。
邪美から届けられた伝令には、こう書かれていた。



烈花…
翼が赤い仮面の男に襲われ、’破滅の刻印’ を胸に刻まれた。
どうやら、翼以外にもあちこちの魔戒騎士が同じような目に合っているらしい。その事実を知って、すぐに鋼牙にも伝令を飛ばしたが、何の音沙汰もない。
あいつの身に何もなければいいが、悪い予感しかしやしない…
あたしは今、閑岱を離れるわけにはいかないから、烈花、あんたが代わりに行って確かめてくれないか?

恐らく、そう遠くないうちに、とんでもないヤツを相手にあたしたちは闘わなければいけなくなりそうだ。
烈花、あんたも十分気をつけて。



烈花の表情が険しくなる。
烈花の隣では、シグトがあわあわと動揺を見せながら、烈花の肩を掴み、

「烈花、鋼牙さんのとこに早く行け」

と促した。
烈花は黙って力強く頷くと、

「あとのことを頼む」

と一言だけ言って、アカザの店を出て行った。
そんな彼女の背中に向けて、シグトは叫ぶように言う。

「任せておけ!
 烈花、気をつけて行けよ!」





鋼牙と別れて、この街に帰ってきた。

烈花の目に、アカザの店が見えてくると、ふと足を止めて小さく息をひとつついた。
それは、ホームグラウンドに帰ってきたという安堵から来るものなのか、最悪なニュースを持ち帰ったという気詰まりから来るものなのかはわからない。
ただ、烈花はそれを深く考えないように首を軽く横に振り、再び歩き出そうと足を踏み出した。
すると、ちょうどそのとき、若い女性が2人店から出てきて、その後を追うようにシグトも出てきた。

「ありがとうございました!」

離れたところからも微かに聞こえるシグトの明るい声に、今度は表情を緩めてほっと息をついた。

彼女たちを見送り、何気なく首を回したシグトの顔が、烈花の姿を見つけてふわっと笑みを浮かべた。

「烈花!」

軽く手を挙げて駆け寄ってきたシグトに、烈花も口角をわずかにあげて応えた。
「シグト… 今、帰った」

「おかえり!
 あっ、鋼牙さんはどうだった? 大丈夫だったのか?
 いや、それよりもまず、疲れただろ?
 とにかく、店に入ろうか?」

烈花の返事など待たずに、前のめりに思ったことを口にするシグトに、烈花は力が抜けていく。
落ち着け、そう言いかけた口をつぐみ、

「そうだな…」

とだけ言った烈花を、シグトは早くも店のドアを開けて待っていて、早く早くと手招きしているのだった。





「そうか… 鋼牙さんの胸にもあったのか、’破滅の刻印’ が…」

烈花の話を聞いたシグトが沈痛な表情で重く深い溜め息をついた。

「…ああ」

烈花の返事も低い。

発動すれば、魔戒騎士と言えどもその命はない ’破滅の刻印’。
まさか、鋼牙の胸にその刻印が刻まれているとは、鋼牙に確かめるまでは半信半疑だった。
鋼牙ほどの男にそんなことができるとは、敵は相当な手練れなのだろう。

その男が何を企んでいるのかは解らないが、多くの魔戒騎士たちの命がそいつの手に握られているのは間違いない事実であり、邪美の予見したとおり、近い将来、魔戒騎士はもとより魔戒法師も含めた大きな闘いが勃発するのは確かだろう。



ふと、鋼牙と交わした言葉を思い出す。



「すまない、鋼牙。
俺はおまえに何もしてやれない」

「気にするな。
 覚悟はできている」

「あの女はっ?
 あいつはおまえの覚悟を知っているのか?」

「カオルは普通の人間だ。
 俺やおまえとは違う…」

「違うもんかっ!
 あいつはおまえと一緒に生きていく… そう決めているんだろ?

 鋼牙、あいつにすべてを話して側にいてやれ。
 おまえだって、本当はそれを…」

「俺に残された時間はわずかだ」

「言うなっ」

感情が高ぶる烈花に対して、鋼牙は最後まで落ち着いていた。

「それはカオルと過ごす時間じゃない」

……鋼牙の決意が、胸に痛かった。



鋼牙だけではない。あの女… カオルとかいう、鋼牙の ’希望’ である女のことも思い出していた。
あれはそう、セディンベイルとの闘いの後、鋼牙に ’破滅の刻印’ があることを知った彼女の姿を。



「奴が言ったことは本当だ。
 俺には… ’破滅の刻印’ がある。

 残された時間で、やるべきことがある」

「絵本…」

呟くような声の後、無理に微笑みながら明るい声でカオルは言う。

「絵本、もう少しで完成だったんだぁ…
 隠し事なんてしなくてよかったのに…」

「すまない…
 おまえとの約束は守れそうにない。
 俺は…「もうっ」」

鋼牙の言葉に被せるようにしてカオルは遮った。

「…なんにも言わなくていいよ?」

そして、闘いの中で取れてしまった胸の飾りを拾い上げるカオル。

「なんにも言わなくても解っているから…
 だって鋼牙は」

そう言って鋼牙を見上げたカオルは、切ないながらもなんとか笑おうとしていた顔を、やっぱり耐え切れずに俯かせてしまう。
そうしておいて、すがってしまいそうな自分を抑えつけるように鋼牙の胸を押して離れた。
やがて、俯かせていたいた顔をふっとあげる。
涙を浮かべながらも、今度はしっかりと笑顔を作って…

「あなたは、守りし者だから」

健気な彼女の姿に、鋼牙は顔を苦し気に歪ませ、視線をそらせてしまう。




烈花は、夜の街をとぼとぼと歩いていくカオルの後ろ姿を追った。
彼女の前に回り込み、

「おいっ」

と声を掛ける。

「本当に、あれでいいのか?」

「大丈夫、あたし決めたの。
 鋼牙の前では、いつも笑顔でいよう、って…」

声を震わせることもなく、静かに、きっぱりと言い切るカオル。
だが、すぐに烈花の横を通り過ぎ、フェンスに力なくすがりつく。
華奢な背中が丸められ、肩が大きく揺れている。

「おまえっ」

焦りながらそう呼びかけると、カオルは

「泣いてないよっ」

と遮るように言い放つ。

「あたし、あなたが思ってるような弱い女じゃないんだから。
 …泣いてなんていない」

大きく揺さぶられるような感情を無理矢理抑えつけるようにして、カオルは声を絞り出す。
そんなカオルの震える肩から目をそらし、背を向けた烈花は、

「ああ、そうだな。
 お前は泣いてなんかいない…」

とだけ言うと、足早にその場を去った。
カオルの叫ぶような鳴き声を背中で聞きながら。

……そんなカオルの覚悟に、深い悲しみが襲いかかる。



ふたりのなんともやりきれない哀しい境遇に胸が塞がる想いとともに、ふたりの言葉とは裏腹な、切ないほどに互いを思い遣る想いにじかに触れて、烈花はどうしようもない敗北感も覚えていた。

(こんなときだというのに…)

そんな自分にほんの少し、嫌気がさす。

その間、何もない一点を見つめて何かに考えを巡らせている烈花の姿を、シグトはじっと見守っていた。
が、やがて、そっと声を掛ける。

「烈花?」

シグトに呼ばれてハッとした烈花が、シグトを見る。

「今夜はなんだか飲みたい気分だ。
 付き合ってくれないか?」

どこか可愛い妹を見守る兄のような慈愛に満ちたシグトのまなざしに、烈花は一瞬怪訝そうな顔を見せたが、すぐにフッと笑って視線を落として、

「いいだろう… 付き合ってやる」

と答えた。
烈花は、ニッと口角を上げ、どこか挑戦的に見える流し目はキラッとした光を放ち、力が宿っていた。
いつもの烈花が少し戻ってきたのを確認したシグトは心の中でほっと安堵しながら、

「よーし、飲むか!」

とわざと大きな声で言って、いそいそとグラスと酒瓶を取りに奥に引っ込んだ。そんなシグトの様子にどこか癒されながら、烈花はほぉーっと長く息を吐いた。そして、すっと顔を俯かせた。

「俺は、俺のできることで、おまえを支えることにするよ…」

小さくそう呟いた烈花の表情は見えない。
が、次に顔をあげたときには、どこかすっきりとしたように見えた。



’破滅の刻印’ の発動まで、あとわずか…



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


滅茶苦茶久しぶりに、公式様の作品の隙間を妄想いたしました。

いやあ、
  鋼牙と烈花のシーン
  カオルと鋼牙のシーン
  カオルと烈花のシーン
文字に起こすために何度も再生しましたが、どれも何回見てもいいシーンです。
こういう人間ドラマに魅せられちゃうのが、牙狼って作品のすごいところですよねぇ~

コメント
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



hitori 様[07/08]
tomy 様[07/27]
麗羽 様[08/23]
夕月 様[12/22]
夕月 様[07/15]
こちらから selfish 宛にメールが送れます。
(メールアドレス欄は入力しなくてもOK!)

PR
忍者ブログ [PR]
Template by repe