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きんのまなざし ぎんのささやき

呪縛を解き放て(8)

王子の心はどうやったら取り戻せるのでしょう…
ありきたりだけど、やっぱ、こうかなぁ~?


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  コンコンコン…

ノックの後、書斎のドアが2cmほど開かれ、

「お~い、入ってもいいかな?」

と遠慮がちに尋ねるレイの声がしました。

何をやっても王子の心を取り戻すことができずに途方に暮れていた
カオルンは、その声にハッとして答えました。

「レイくん、大丈夫だよ。
 入って…」

カオルンの返事を聞いて、ドアからひょいっと顔を覗かせたレイが、
ニコニコしながら中に入ってきました。

「ゴーテ、いたよぉ~
 裏にあるおっきな温室の脇に… って、え?」

レイは驚いて、話を中断しました。
カオルンがものすごい勢いで自分の胸に飛び込んできたからです。

「ちょ… いったい、どうしたの?
 ん? ねぇ、カオルン?」

レイはカオルンの肩に手を置き、カオルンの顔を覗き込むようにして
尋ねました。
カオルンは泣きそうな顔をレイに向けます。

「王子がね、どうしても元に戻らないの…」

「なんだって?」

てっきり、王子はカオルンのキス(か何か)で心を取り戻しているもんだと
思っていたので、それを聞いて、零はすぐに王子のほうを見ました。
確かに、王子の瞳にはいつものような力が宿っていません。

「キス、してみたんだろ?」

レイの質問に、恥じらいながらも小さくコクンとうなずくカオルン。

「抱きしめてみたり、いろんな話をしてみたり、とにかく考えられること、
 全部やってみたけど…

 …駄目だった」

そう言うとカオルンは、ポロリと涙を流し、再びレイの胸に顔を
うずめました。

「…」

渋い表情をしたレイがカオルンを見下ろして、それからまた王子を
見ました。
すると、先程とは違って、わずかに変化があったように見えました。
王子がわずかにこちら側を気にしている素振りを見せ、眉間に小さな皺が
見えたのです。

(これは、ひょっとして…)

少し考えていたレイが、試しにカオルンの背中に手を回し、彼女を
優しく抱きしめてみました。
そしたら、今度はもっとはっきりと王子に変化が現れました。
眉間の皺が一層深くクッキリと刻まれたではありませんか!

(なるほどね…)

レイはニヤッと笑うと、王子に聞こえるような声ではっきりと言いました。

「ねぇ、カオルン。
 もう王子のことは諦めなよ」

「え?」

爽やかにそう言うレイに驚き、カオルンはレイの胸から顔をあげました。
レイは、カオルンを優しく見つめ、さらに言います。

「何をやってもダメだったんだろ?
 それじゃあ、もうどうしようもないじゃん?

 だ~いじょうぶ!
 カオルンのことはさ、俺が一生、大事に守ってあげるから…」

カオルンは困惑の表情を浮かべたまま何も言えずに、ただ口をパクパク
しています。

「ねぇ? わかんなかったかな?
 俺ね、出会った時からずっとカオルンのこと…

 だから…」

意味ありげに言葉を切ると、うっとりするほど美しい、悩ましげなレイの
顔がだんだんカオルンのほうに近づいてきました。
カオルンは息を飲んで身動きができなくなりましたが、息がかかるほど
レイが接近したときになってようやく、真っ赤になりながら、ドンッと
レイの胸を強く押しました。

「ダメ~ッ!」

それでも、レイはカオルンの身体を離すことなく、しっかりホールドした
ままでした。
このままでは、カオルンの唇がレイに奪われるのも時間の問題です。
カオルンは、レイになんとか思いとどまってもらおうとして言います。

「レ、レイには、シャロンがいるじゃない!
 レイはシャロンのことが、す、す、好きなんでしょ?」

カオルンはどもりながら、一生懸命訴えました。
そうです。
レイには、お城の庭師の孫娘であるシャロンという可愛い恋人がいるのです。

動揺して必死になっているカオルンを見て、レイは、

(かわいいなぁ~)

などと思いながら、何食わぬ顔で言います。

「もちろん!
 シャロンは俺にとって、とってもとっても大事な人だよ♡」

「じゃ、じゃあ、あたしのことなんて、どうでもいいんじゃないの?」

言質(げんち)が取れてたカオルンは、さぁどうだと言わんばかり
でしたが、それは虚勢のようで、頬の辺りが引き吊っています。

(やっぱり、君ってかわいいよ、カオルン…)

クスクス笑いたくなるのを我慢して、レイはしれっと言います。

「そんなことはないさ。
 シャロンも好きだけど、カオルンのことも… ね?

 コーガはカオルンを泣かせるかもしんないけど、俺はそんなこと
 させないよ。

 だから、ね?
 コーガのことはもういいでしょ?」

そう言うと、レイはスッと真剣な表情になり、再びカオルンにゆっくりと
顔を近づけてきました。

「そんな… いや… でも…
 ダ、ダメだって、レイくん!」

カオルンは必死に、レイの腕の中でもがきますが、腕力で男のレイに
かなうわけがありません。

あと、数cm!

(あ、もうダメ! 王子ーっ!)

カオルンは目をギューッと閉じて、身を固くしました。



すると、次の瞬間、カオルンはいきなりレイの腕から放り出されて
しまいました。

(へっ?)

驚いたカオルンが恐る恐る目を開けると、目の前に見えたのは背中でした。
そう、王子の背中です。

慌てて見上げると、王子の肩越しに横顔が見えました。

「大丈夫か?」

カオルンを気遣う王子の声が、カオルンの耳にはっきりと届きます。
その声を聞いて、カオルンの顔がパァッと明るく輝きます。

王子はすぐにレイのほうを向くと、不機嫌な声でレイを問い詰めました。

「今のはどういうことだ?
 返事によっては、貴様を許しはしない!」

王子の鋭い眼光が、レイに容赦なく向けられます。

ですが、レイのほうは涼しい顔をしています。
すぐに破顔して、両手を広げ、争う気持ちのないことを示しました。

「や~っと元に戻ったか。
 手間を取らせんなよ、コーガ!」

レイの態度に、怪訝な表情で王子が問いかけます。

「どういうことだ?」

それを見て、ふふんとレイが笑ってから言います。

「今のはみんなお芝居ってことさ。
 何やっても心の拘束が解けないっていうからさ。
 それじゃあってことで、俺がお前からカオルンを奪おうとしたら、
 どうなるのかなぁ~って思ってね」

「…」

まだ半信半疑の王子に代わって、カオルンが尋ねました。

「じゃあ、レイがあたしのことをずっと前から好きだった、ってことも
 みんな嘘なの?」

ちょっと寂しいような、非難するような、複雑な顔のカオルンを見て、

(ほんと、かわいいねぇ、カオルン)

と思いながら、レイは答えます。

「嘘じゃないさ。
 ただ、’好き’ って言葉の意味は、ちょっと違うけどね。

 俺は、やっぱ… シャロンだもん」

それまでの少しふざけたような態度をスッと引っ込め、レイは真剣な
顔で言いました。

「…それを」

王子が低い声で割って入ってきました。

「それを、信じていいんだな、レイ?」

王子の真っ直ぐな視線を、今度はレイも真っ直ぐに受け止めます。
ただし、返事までストレートに、というわけにはいきませんでした。

「俺のこと、信じられないか?」

そんな試すような台詞を聞いて、王子は、フン、と鼻を鳴らしました。
いつもの王子らしいそんな反応を見て、レイは、

(ほんとに元に戻ったんだな)

と安心して、フッと笑いました。

「ま、とにかくさ。
 無事に王子も元通りになったわけだし、早くゴーザンにも知らせて
 やろうぜ」

そんなふうにレイが言うと、

「そうだね」

とカオルンが笑顔で答え、3人は書斎を出て、ゴーザンの元へと
向かうことにしました。



to be continued(9へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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