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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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呪縛を解き放て(5)

いよいよ、王子の登場… か!?
いやぁ~、ここまで来るのに4話もかかるとは。
ここからテンポアップできればいいですけど、どうなりますことやら。

とにかく…
今宵のメルヘン、始まりますよ!


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

3人はそのモノを見て、みな驚いて叫びました。

「「王子!」」

部屋の中央にあったのは、大きな大きな紫水晶の固まりでした。
そして、どうしたことか、王子がその中に閉じ込められていました。
紫水晶の中の王子はピクリとも動かず、虚ろな目をしていて、もちろん、
返事もしてくれません。

代わりに、王子の左手に嵌められた指環がカチカチと動きだし、バルザの
声が聞こえました。

『おぉー みんな、来てくれたのか!
 早くここから出してくれ!』

「バルザ!
 いったいどうしたって言うの?」

カオルンはすぐに駆け寄り、紫水晶のそばでひざまずいて、バルザに顔を
近づけながら尋ねました。

『どうもこうもないぜ。
 あの婆さんにまんまとハメられて、気づいたときにはこの中さ』

「なんですって?」

バルザの言葉を聞いて、3人は一斉に老婦人のほうを振り返ります。
3人の視線を集めた老婦人は、平然と微笑んでいます。
でも、その微笑みはさっきまでのものとは違い、温かみがありません。
なんだかとても冷たい笑いでした。

「奥様、これはどういうことでしょうか?」

ゴーザンが少しきつい口調で詰め寄りました。
レイも厳しい目を向けています。
カオルンはただただ、事の真相が知りたくて、じっと老婦人を見つめます。

「あら、どうかしまして?」

老婦人は悠然とした調子でそう言いました。
とぼけているわけでもなく、あまりにも自然に言われて、ゴーザンが
返す言葉を失っていると、レイが代わりに言いました。

「どうかした、じゃねぇぜ、全く。
 どうして俺たちの探しているヤツが、ここにいるんだ?
 おまえら、いったい何が目的なんだ?」

さすがに自分よりはるかに年上の女性を相手にして、怒鳴り散らす
ようなことはしませんでしたが、言葉遣いに気を遣うほど落ち着いても
いられないようでした。

そんなレイに対しても、老婦人は少しも動じません。

「あなたがた、アルフレッドのお知り合い?

 この人はもうどこにも行ったりしませんよ。
 ずっとここに居て、わたくしのそばから離れたりなんかしませんからね」

そう言って、王子のほうを見ながら、優しい顔で言いました。

「は? アルフレッド?
 あんた、何言ってんだ?」

老婦人の言葉の意味が解らず、レイは少し拍子抜けしてしまいました。
すると、今度は老婦人のほうが不思議そうな顔をして、レイに答えます。

「アルフレッドは、わたくしの主人ですわ。
 ほら、その机の上に写真が乗ってますでしょ?」

そう言って、そこもまた沢山の書物の山がいくつもある机の上を、
指差しました。

レイは、机の上から写真立てを見つけると摘み上げ、覗き込みました。
そして、黙ってそれをゴーザンのほうに差し出します。
受け取ったゴーザンのところにカオルンも近寄り、ふたりで写真立ての
中の写真に視線をそそぎます。

そこには、仲睦まじそうに腕を組んでいる若い男女の古い写真が飾られて
いました。
女性のほうは目の前にいる老婦人なのでしょう。
優しそうな笑顔には面影が残っています。
そして、男性のほうは、老婦人の夫のアルフレッドだと思われます。
スラリと背が高く、なかなかのハンサムで、確かに言われてみれば王子の
姿に似ています。

でも、それは王子ではありえません。
なぜなら、セピア色の写真の中の彼は、とても幸せそうに優しく微笑んで
いました。
こんなに笑顔の王子は、いまだかつて誰も見たことがありませんでした。

どうやら、老婦人は王子を、2年前に亡くしたという最愛の夫と混同して
しまったらしいのです。
でも、それにしても、紫水晶の中に閉じ込めてしまうなんて、並みの
人間にできるわけがありません。
何かしら、不思議な力が働いているに違いありません。

ですが、今はそんなことよりも、閉じ込められている王子をなんとかする
ほうが大事です。

「どうしよう?
 どうやって王子をここから救いだせばいいの?」

カオルンが心細そうにつぶやきました。
それを聞いて、レイがニヤリと笑います。

「それは俺に任せといて!」

そういうと、レイは2本の剣をスラリと抜き放ち、紫水晶の前に立ちました。
スッとレイの顔から笑顔が失われ、目の前の獲物に気持ちを集中させて
います。

(何をするの?)

カオルンは不安そうに見守ります。

レイは長く息をひとつついて、グッと止めたかと思うと、紫水晶を
切り刻み始めました。

「「!」」

その場にいる者すべてが、息を飲み、身動きができませんでした。
そのくらいレイの気迫は物凄いものでした。

「何をするの!」

ただひとり、老婦人だけは青くなって、レイを止めようと近づきました。
すると、レイは、サッと剣を老婦人に向けてキッと睨んだ後、すぐに
ニコッと笑って、

「あぶないから近づかないで。
 邪魔しようってんなら、怪我させちゃうかもよ」

と軽く言い放ちました。

「…」

老婦人の顔は不機嫌そうに歪みましたが、レイが冗談で言っているわけで
ないことは、ビンビンと肌に感じる気迫で十分伝わったので、それ以上
何もできませんでした。
そこで、女中がそっと老婦人の肩に触れ、老婦人をレイから遠ざけて、
本棚のそばの肘掛け椅子に座らせました。

それを見たレイは、再び紫水晶に視線を戻し、力の限り剣を振るい始め
ました。
すさまじい勢いであれよあれよといううちに、王子の上半身が露わに
なっていきました。

「ふぅ~っ」

一息ついたレイは、首をブルンと振って、吹き出す汗で顔にくっついた
髪を振り払いました。

「ふ~、あと半分か…」

レイは少し疲れていましたが、達成感からか、明るい顔をしています。
そんなレイをあざ笑うかのように、老婦人は言いました。

「ほっほっほっ、ご苦労なことね。

 アルフレッドが二度とわたくしのそばを離れないように、わたくしが
 アルフレッドにかけた魔法はそれだけじゃないのよ」

涼しい顔の老婦人に、レイたち3人の顔は曇ります。

「どういうことです?」

ゴーザンが老婦人に尋ねました。


to be continued(6へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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