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きんのまなざし ぎんのささやき

呪縛を解き放て(6)

さてさて、どこまで進みましたっけね?
あぁ、そうそう、王子を半分まで掘り出したとこでした。

間が空き過ぎちゃって、よいこはみんな寝ちゃったかな?
selさんがお話するよ~  起きてよ~ (ユサユサ…)

ん? 寝た子を起こすな! って?
ごめんなさい!

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レイが紫水晶の中から王子を救出しただけでは駄目なのでしょうか?

老婦人はレイたち3人に得意げな顔で、さらに言いました。

「紫水晶から彼を助け出すことが出来たとしても、’身体の自由’ と
 ’心の自由’ を奪っているのよ。

 動けない身体と感じない心のままでは、この人をここから連れ去ったと
 しても、な~んの意味がないでしょ?

 おっほっほっ。
 この人はここにいるのが一番いいんだわ」

老婦人は虚ろな目をして、高笑いを続けます。
そんな老婦人を少しでも落ち着かせようと、女中は老婦人の背中を何度も
何度も撫でました。

どうやら、老婦人の言うことは本当のようでした。
レイが紫水晶の中から上半身を掘り出したというのに、王子はピクリとも
動かず、確かに身体と心の自由が奪われているようでした。

老婦人の言葉に、ふぅむ、と考え込んでいたゴーザンは、やがて、何かを
思いついたのか、レイたちに向かって言いました。

「レイ様、カオルン様。
 ’身体’ のほうは、わたくしに考えがあります!」

そして、女中のほうを振り向き、ぴしりと言いました。

「台所と食材を少し借ります。
 台所に案内してください!」

ゴーザンの決然とした物言いに、女中のほうも、思わず素直に、

「は、はい」

と返事をしてしまいました。

「では、レイ様。
 あとは頼みましたよ」

そう言い残して、ゴーザンは女中を先導に部屋を出ていきました。

「おぉ、任しとけって。

 さぁて、あと半分。
 さっさと片付けますか!

 はぁっ!」

レイは気合いも新たに剣を握る手に力を込めて、再び、紫水晶との格闘を
始めました。

それを見て、老婦人は

「あぁあ、あぁあ」

と両手をレイのほうに伸ばしながら、意味不明な声をあげました。
カオルンは慌てて老婦人のもとに行き、

「大丈夫。 大丈夫ですから…」

と手を取って、背中を撫でました。

確かに、老婦人は王子を閉じ込めた張本人で、何やら恐ろしげな力を
持っているかもしれませんが、今の彼女はただの非力な老人にしか
見えません。
愛する人を失くした寂しさには、ちょっぴり同情もできます。
でも、彼女が自分の夫と思い込んでいるのは、カオルンたちにとっても
大事な大事な王子なのです。
王子を取り戻したい気持ちがあるものの、どうしたらいいのかカオルンは
わからず、ただ、老婦人の背中をさすってあげることしかできません
でした。



そうこうするうちに、とうとう、レイは紫水晶から王子を掘りだすことに
成功しました。

「やったぜぇ~」

そう言うなり、レイはその場に尻餅をつき、手を後ろについて天を仰ぎ、
はぁはぁと大きく息を弾ませました。

まだ少し、王子の身体には紫水晶の欠片が残っていましたが、レイに
よって、見事に王子は紫水晶の固まりから救い出されたのです。

カオルンは、よかった、とほっとしました。

老婦人のほうは、先程から何かをぶつぶつつぶやくばかりで、目の前の
ことを正しく理解していないようでした。



すると、書斎のドアがガチャリと開きました。
入って来たのは、ゴーザンでした。
その後ろから、ワゴンを押して女中も入ってきました。

ゴーザンたちが入ってくると、とてもおいしそうないい匂いがしました。

「お待たせしました。

 おぉ、レイ様、やりましたね。
 今度はわたくしの出番ですな。

 さぁ、王子、お腹がお空きでしょう?
 これを温かいうちにお召し上がりください!」

そう言うと、書斎机の一角にスペースをつくり、ワゴンから次々と
皿を取り、並べていきました。

カリカリに焼いたベーコンに、絶妙な仕上がりのスクランブルエッグ。
黄金色のコンソメスープに、緑鮮やかなサラダのプレート。
そして、少し底の深いお皿には、王子の大好きなコーンフレーク!

「時間がなくてこんなものしか作れませんでしたが、ターリアが仕込んで
 おいた鹿肉があったので、ローストしました」

と、マッシュポテトの添えられた、きれいな赤身のローストの乗った
皿を最後に置いて、ゴーザンは、身動きひとつしない王子に向かい、
どうぞと恭しく頭を下げました。

「まさか、食べ物で釣ろうっての?
 そんなんで本当に大丈夫なのかなぁ?

 まぁ、ゴーザンの作るものは、なんだって美味いのは知ってるけどさ…」

レイは、少し呆れて言いました。



ところが、どうでしょう!
王子の眉がぴくっと動いたではありませんか!

「「!」」

みんなが固唾を飲んで見ていると、王子はゆっくり動き出しました。
1歩、また1歩と、書斎机に近づくと、ナイフとフォークを取り、食事を
始めたではないですか!

「すご~い!」

「ほんとかよ…」

喜ぶカオルンと驚くレイを見て、ゴーザンは満足げにうなずきます。
これで、紫水晶の拘束からも解かれ、身体の戒めも破りました。
でも、おいしいに違いないゴーザンの作った食事を食べても、王子の顔は
無表情なままでした。
どうやら、’心’ までは自由にできなかったようです。

すると、それまでおとなしくしていた老婦人が、突然立ち上がり、奇声を
発しながら、王子のほうに手を伸ばして近づこうとしました。
それを見て引き止めようと、女中とゴーザンが左右から掴みかかりますが、
どこにそんな力があるのか、老婦人はふたりを引きずって前に進みます。

「レイ!
 老婦人の指環を!
 指環を斬ってください! はやく!」

ゴーザンが叫びます。
レイは反射的に老婦人の手を見ると、左手に大きな紫水晶の指環が見えました。

(これか!)

レイはクタクタになった身体を奮い立たせ、飛び起きると、ふ~っと大きく
息を吐き、剣を構えました。

老婦人の手が、王子の肩に伸び、今にも手を掛けようとしたとき、

「はっ!」

とレイは、老婦人の指環目がけて剣を振り下ろしました。
レイの剣は見事に指環をとらえ、大きな紫水晶が、真ん中からパリンと
ふたつに割れました。
そして、中から何やら黒い煙のようなものが立ち上ると、

「ギェーッ」

という断末魔を残して、ジュッと消えました。
どうやら、老婦人を操っていた指環に宿った悪しき魂が消滅したようです。
指環を失った老婦人はクタクタとその場に崩れるように座り込みました。

「わたくしは…  ターリア、わたくしは一体どうしたのかしら。
 こんなところに座り込んでしまって…

 あら? この方たちはお客様かしら?

 まぁ、ほんとに、なんだかよくわからないことだらけだわ」

毒気を抜かれたような老婦人はキョトンとしながら、女中に話しかけます。

「奥様、元に戻られたのですね。 よかった…」

ターリアは、老婦人の手を取って、涙を浮かべて喜びました。

「奥様、これまでのことは後ほどゆっくりお話するとして、向こうで
 お食事などいかがですかな?」

とゴーザンは、老婦人を助け起こしながら、そう言いました。

「まぁまぁ、それはいいわね。
 なんだかとってもお腹が減ったわ」

ターリアとゴーザンに挟まれるようにして立ちあがった老婦人は、
にっこりとチャーミングな笑顔を見せて言いました。



to be continued(7へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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