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きんのまなざし ぎんのささやき

噂のあの人(3)

この妄想のゴールは、あって、ないようなもの。

少し前だったら、そんな妄想、とてもじゃないが恥ずかしくて公開できない、
と思うところですが、スキマなんだからいいんじゃない? と、この頃は
少々ふてぶてしくなりました。

レオくんをあまり書いたことがないので、レオくんらしく書けているか、
それだけが心配であります。
大丈夫かな?



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

カオルさんに対して身構えていたのはほんの少しの間だけで、気づけば、
僕は ’ごく普通’ の彼女と ’ごく普通’ に会話していた。


「鋼牙ってさ、最初、失礼なヤツじゃなかった?」

「どういうことです?」

「あたしなんか、初めて会った日に、突然、剣を突き付けられたんだよ」

そう言うと、カオルさんは、ふふふ、と笑った。

「えっ?」

驚いて、思わずカオルさんの顔を覗き込む僕に、カオルさんは、

「まぁ、そのとき、鋼牙の倒したホラーの返り血をあたしが浴びちゃった
 からなんだけどね」

と、肩をすくませた。

「あぁ、そういうことですか」

そんなことを言いながら、隣を歩くカオルさんに向けていた視線をゆっくり
前方に向けていった僕は、あることを思い出した。

「あっ! そういえば!」

僕は、興奮気味に再びグイッとカオルさんのほうを振り返り、

「僕も鋼牙さんと初対面のとき、握手しようとしたらいきなり腕を掴まれた
 ことがあります。
 それで、袖を無理矢理めくりあげられました」

と、早口で言った。

「えぇ!」

「鋼牙さん、僕の腕に傷があるかどうか確かめたかったみたいなんですけど…

 あのときはちょっとびっくりしましたよ」

鋼牙さんが襲われた、ということは内緒にしておいたほうがいいと思い、
カオルさんにはその辺のことを伏せたまま、僕は言った。
それを聞いたカオルさんは、大きな溜息をついた。

「んもう、鋼牙ったら!
 あたしだけじゃなく、レオくんにまでそんな失礼なことしてるんだね。

 会う人、会う人にそんなんじゃ、敵ばっかり作るんじゃないかな…」

そう言うカオルさんは、まるで子どもを心配する母親みたいに見えた。

「そんなことはありませんよ。
 僕やカオルさんのような出会いは、たまたまなのかもしれません。

 そりゃあ、最初は驚きましたけど…

 鋼牙さんは立派な魔戒騎士です。
 鋼牙さんほど頼りになる騎士はいませんから」

鋼牙さんへの憧れの気持ちもあって、僕はしみじみとそう言った。
すると、カオルさんは、

「そっか… そうだよね。
 鋼牙は、立派な魔戒騎士だよね」

と、自分が褒められたかのように嬉しそうに笑った。
そんなカオルさんが、今度は急に幼っぽく見えて、ぼくは彼女を安心させたく
なる。

「えぇ、そうですよ」

僕は、自分のことのように、きっぱり言っていた。




こんなふうに、彼女のアパートまでの帰り道の間、僕たちは、グダグダと
思いつくままに会話を続けた。
話の内容は、大したことないことばかり。

先日のドライブのこと。
零さんのこと。
あと、東の管轄のこと。
それに、好きな食べ物のことなんかも話題にのぼった。

もちろん、そうは言っても、ついさっき会ったばかりの間柄だ。
いきなり意気投合、というわけにはいかなかったが、僕なりにカオルさんと
いう女性をよい印象で捉えたし、カオルさんのほうも、僕という人間について
悪い印象は持たなかったように思えた。


そうして、あるアパートの前に来たとき、突然、カオルさんが足を止めた。

「ありがとう、レオくん。
 あたしのアパート、ここなの」

アパートを指差して、カオルさんがにこっと笑った。

「あぁ、そうですか…」

僕も立ち止り、彼女のほうに向きなおった。

「じゃ、カオルさん、僕はこれで…
 おやすみなさい」

頭を下げた僕に、
カオルさんも

「うん、おやすみなさい…」

と同じようにちょこんとお辞儀した。

僕は、すぐに、今来た道を引き返すように歩き出したが、僕の背に
向かって、カオルさんが声を掛けてきた。

「レオくん!」

僕は、なんだろう、と思いながら振り返った。
街灯の下、そこだけ丸く明るい光の輪の中にカオルさんが立っていた。

「送ってくれてありがとう!
 それから…」

そこまで言うと、カオルさんのにこやかだった表情がスッと引き締まった。

「鋼牙のこと、これからもよろしくお願いします」

改まったようにそう言われて、僕はなぜだか一瞬、鋼牙さんの胸にある
’破滅の刻印’ のことが頭をよぎった。
だが、

(まさか、カオルさんは知っているのか?
 いや、そんなことはないはずだ…)

と思い直し、小さく深呼吸をしてから、こちらも真面目に答えた。

「はい。

 カオルさん…
 鋼牙さんは、黄金騎士です。
 だから、並みの魔戒騎士より、ずっと厳しい試練が待ってるかもしれない。
 でも、鋼牙さんなら、必ず乗り越えるはずです。

 もちろん、僕に出来ることならなんだってやるつもりですから」

僕がそんなふうに言うのを、カオルさんは、神妙な面持ちで聞いていた。
その様子を見て、ハッとした。

(カオルさんに余計な心配をさせるとマズいな…)

そんなふうに思った僕は、次の瞬間、へらっと笑って、

「…なぁんて、カッコいいことを言いましたが、よろしくお願いします、と
 頭を下げなきゃいけないのは、きっと僕の方だと思いますよ」

と冗談めかして言った。
僕のそんな様子に、カオルさんもつられて表情が和らいだ。
それを見て安心した僕は、

「それじゃ…」

と言ってもう一度、頭を下げた。
カオルさんもそれに応えるように、手を前に揃えてきちんと頭を下げて
くれたので、彼女が頭を上げるのを待ってから、僕は向きを変え、その場を
後にした。



カオルさんと別れ、ひとり、夜道を歩きながら僕は考えていた。

(あの鋼牙さんを魅了した人って、あんな人なんだな…)

歴代の牙狼の中でも最強と言われる男を惹きつける女性に対して、僕は変な
先入観を抱いていたことに、ようやく気付いていた。

カオルさんと一緒にいたのはごく限られた短い時間だったが、
僕の脳裏には、
カオルさんが僕に見せた様々な表情が、フラッシュバックのように、パッ、
パッ、と浮かんでは消えていった。

ある意味、無邪気で、素直で、それでいて包み込むような優しさもあって、
守ってあげたくなるような脆さも持っていて…

鋼牙さんがカオルさんに惹かれた理由が、なんとなく解るような気がした。



そして、僕は ’破滅の刻印’ を胸に、今もホラーと闘っているかもしれない
鋼牙さんのことを思った。

(’破滅の刻印’ をどうにかしないと…

 あの人を残して逝かないでくださいよ、鋼牙さん!)

僕は、闇に閉ざされた前方をぐっと睨むようにして、口を固く結び、
鋼牙さんのいる場所へと足を速めた。



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


なんだかんだで、前作から10日近く経ってました。
久し振りのため、この「噂のあの人」は、ぶわぁ~、と勢いだけで書いて
しまいました。
(あっ、勢いだけ、っていうのは ’いつも’ でしたね)

公式様では、カオルちゃんとレオくんの初対面のシーンは、ほんとにサラッと
しか描かれていないので、その続きとして、こんなふうに妄想してみました。

このとき、レオくんは、鋼牙さんに ’破滅の刻印’ があることを知っている
ので、何も知らないカオルさんを目の前にして、もっとその辺を苦悩する、
という方向も考えられたんですが、 selfish には、そういう重たいのを
書く気力がなく… (苦笑)

カオルちゃんとレオくんと言えば、「秘密」ですね。
あれの前哨戦という形で、帰り道を送っていく、というシチュエーションに
しました。
レオくんが持ってたかもしれないな、というカオルちゃんへの先入観を
ちょっとだけ壊してあげて、でも、あまり仲良くなり過ぎない感じで。

まぁ、中途半端と言われたら、その通りなんですけどね。ははは。

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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