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きんのまなざし ぎんのささやき

愛しい嘘つき

今日は「エイプリルフール」ですね。

じゃあ、「嘘」にまつわるお話でも妄想しようかな~ と、ぼんやり浮かんだ
ことを活字にしてみたところ、「エイプリルフール」とは全く関係ないものが
出来上がってしまいました。 (苦笑)

…というわけで、「エイプリルフール」ということは忘れてくださいね。
お頼み申します~



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  カオルが俺に嘘をつく…

    …優しく笑って嘘をつく


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この頃のカオルは画家として自分の足で歩きつつあった。
御月カオルに… という仕事の依頼も徐々に来ているようなのだ。

「仕事」と名がつくからには、必ずしも描きたいものが描けるわけでもなく、
描きたいときに描けるわけでもない。
ほんの少しでも描きたくなるようなモチーフを手探りで探し続け、微かな
手掛かりにすがりつき、引き寄せ、なんとか形にしようと模索する日々が
続いていた。
カオルにとってそれは「苦しい」ことであるのは間違いなかったが、
そんな状況でも瞳は輝きを失わず、視線は前を向いていた。

そんな彼女を、俺は眩しく思っていた…



輝き溢れるような彼女を見るとき、何の前触れもなく、ふと蘇る暗い記憶が
あった。

ホラー、アングレイとの闘いの場に、たまたま居合わせたカオルが
ホラーの返り血を浴びたあの日のこと。
そして、その悪しき血に引き寄せられるホラーからカオルが狙われ続けた
あの日々を。


最も狂おしく思う記憶がある。
それは、戸沼という狂気に憑かれた男を唆(そそのか)して、陸にあがる
ための身体を求めていたハルというホラーの最期の刻(とき)。
ホラーの血にまつわる忌まわしい事実を、嘲りながらぶちまけたときの
ことだ。

あのとき、全身全霊を傾けて、必死に俺の弁明を求めたカオル…
その彼女に何の言葉も… 何の態度も示してやれなかった自分…

今思い出しても、胸をキリキリと突き刺すあの感覚が、ふと甦る。



それまで、人界(じんかい)でごく普通に過ごしてきたカオルが、闇に
魅入られたかのような運命のせいで、魔戒騎士である自分と出会い、
こちらの世界に関わるようになってから、ずいぶん時が過ぎた。

ホラーの返り血を浄化し、メシアのゲートとしての陰我も断ち切った
今となっては、カオルをこちらの世界に縛るような闇は何もない。


だが、未だに彼女は俺の近くにいる。

もちろん、カオルを縛り付けることなど俺は望んでいない。

 「カオルが望む人生を歩んで行ってくれれば、それでいい」

それは本心でもあったが、そんな綺麗事の影に隠れて、彼女という光を
求めている自分がいる矛盾にも、俺は気付いていた。
普通のしあわせなど与えてやれないことを知りながら… だ。



彼女が自分の中に何を見出し、何に惹かれ、何故そばにいてくれるのかは
知る由もなかったが、そんなことはどうだっていい。

  「彼女が今日も笑っていること」

その一事が俺にとって大事だった。


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今日も元老院から指令が下った。

「ゴンザ、行ってくる…」

「はい、行ってらっしゃいませ」

冴島家に長く勤める執事のゴンザは、手早く、主にコートを着せかけて、
いつものように無事を祈りながらも見送る。

この日、「見せたいものがある」とスケッチブックを手に尋ねてきていた
カオルにとっても、それはこれまでに幾度となく見た光景であった。
だが、カオルは、ホラー狩りに出掛ける鋼牙を、ゴンザのように穏やかに
見送ることができなかった。
一拍おいて、ようやく言葉になる。

「…気を付けてね…」

やや硬い表情のカオルが鋼牙を見つめる。

「今夜は帰りが遅くなるかもしれない。
 見せたいと言っていたものは、今日は…」

すまなそうに切り出す鋼牙に、カオルは慌てて手を振って応える。

「いいの、いいの!
 今日じゃなくたって、いつだっていいんだから…  大丈夫だから…」

そう言うと、カオルは笑った。


  カオルが俺に嘘をつく…

    …優しく笑って嘘をつく


カオルがちっとも大丈夫ではないことを、俺は感じ取っている。
見せたかった絵を見せられなかったからじゃない… 何か… そう、何かが
「大丈夫じゃない」ことを。
けれど、それを慰める言葉は見つからない。

鋼牙がカオルを見つめる。
カオルは居心地が悪そうにもじもじする。

ふたりの様子に、ゴンザはそっとその場を離れていった。

そんなゴンザを目の端に認めてから、俺はカオルを引き寄せて、優しくきつく
抱きしめる。
何かを伝えたかった。

「ごめん」と「ありがとう」と「愛している」と、それから…



カオルの髪に鼻先を埋めて、伝われ、とばかりに念じるように思っている。
カオルは感じ取ってくれただろうか?
いや… 言わずに感じろとは、俺の甘えだな。
そう考え直して、もう一度言葉を探す。

「カオル…」


駄目だ、やはり思いつかない。


これからもカオルは嘘をつくかもしれない。
俺が嘘をつかせてしまうのかもしれない。
次第に嘘をつくのが上手くなり、カオルのつく哀しい嘘を、俺は、いずれ、
見抜けなくなってしまうのかもしれない。

カオルを、嘘の上手な、そんな女にさせたくはないというのに…



カオルの髪の香りに包まれているうちに、ふと、その言葉が下りてきた。

「カオル…  待っているか?」

ようやく言えた言葉が、あまりに殺風景で、俺は、自分で自分に嫌気がさした。
だが、カオルは俺の顔を覗き込み、一瞬嬉しそうな顔をしてから、試すような
顔でこう聞いた。

「待っていてほしい…  じゃないの?」

期待と不安が交互に入り混じるような瞳で見つめられた俺は、ふっと笑いが
漏れ、観念するように言った。

「あぁ、そうだな…

   待っていてくれ」

俺の返事に、カオルの瞳がさっと潤んだ。

「うん…」

小さくうなずいたカオルを腕の中にそっと閉じ込めて、カオルの額に
キスを落とした。


  今宵のふたりには、もう「嘘」は必要ない…



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


どうだったでしょう、「嘘」のお話は?

ホントに完全に「エイプリールフール」とは無関係だったでしょう?

期待されていたようなものとはかなり違って、みなさんがどう思われたのか、
かな~り心配ですが、「気ままな妄想」とは、まぁ、こんなもんです…
この妄想は鋼牙視点で書いてみたのですが、それがいいように作用していると
いいのですが。


さぁ、ここで、みなさんの妄想脳に質問です!
もし、あなたなら、嘘をつくカオルに対して、鋼牙になんと言わせたいですか?

拍手[51回]

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おおう…ッ
現在、届いたDVD・Boxを観まくって、MS三昧な茅です。

今回のお話は、妙に切なかったですね。
確かにカオルは、鋼牙に意図せず嘘をついているのですよね。
「大丈夫だよ」って言いながら…。うわ~んッ、切ないッ!

私の妄想脳は、カオルの嘘の内容によるな…と思ってます。
冗談っぽい明るい嘘なら、鋼牙は「何がしたいんだ」の様に軽いイラッと感を見せてくれるでしょう。
でもこのお話の様な、カオルが鋼牙を想うがあまりの嘘に関しては、鋼牙はきっと何も言えないような気もしてます。
カオルが何故そんな嘘をつくのか、解ってるとしたら、なおの事…です。

ううう、うお~ん!(涙)
URL 2013/04/02(Tue)11:28:29 編集
Re:おおう…ッ
どっぷりMSに浸ってるわけですね、羨ましい~

そうなんですよぉ~
「嘘、嘘、…」とぼぉ~っと考えていたら、こんなものしか湧いてきませんでしたの。
カオルちゃんが「大丈夫」っていうたびに、いつも、
「そんなのウソじゃん。
 気づいてやってよぉ、鋼牙!」
って思っていたもので…

芽様の妄想脳は、「一期の鋼牙」ですよね。
すっごい解ります。

ここでは、MS以降の鋼牙なら、きっと気付いているはず… という願いを込めて書いてみましたよ。
そして、一言でいいから、不器用でいいから、カオルちゃんに「何か」を伝えてあげてほしいって思いました。
(いや、むしろ、「一言」で「不器用に」を熱望!
 解りますでしょ?  笑)

「気まま」な妄想に泣いていただけるなんて、とっても嬉しいです。
ありがとうございました!
【2013/04/02 20:14】
平凡ですが。。。
こんばんは、selfish様。
嘘をつくカオルさんに対して、鋼牙には「大丈夫だ。信じて待っていろ!」と言って欲しいな。
不器用で強気な鋼牙さんなので、「待っていろ」という命令形がミソでしょうか。:-)
カオルさんのは、相手を思いやっての嘘だから切ないです。だからといって、本音言ってしまうときっと自分自身の歯止めもなくしてしまい、却って不安が大きくなってしまうのではないでしょうか。
鋼牙さんには「時代」の時のようにしっかりカオルさんを抱きしめて、少しでも安心させてから、「行ってくる」と言葉すくなに出かけていって欲しいです。
で、帰ってきた時には、カオルさんが鋼牙さんの胸に飛び込んで「おかえり」というのに「ああ、ただいま」というのがいいです。*^^*
Mie 2013/04/05(Fri)01:30:45 編集
Re:平凡ですが。。。
Mie様のお好きな鋼牙は「不器用で強気」な鋼牙さんなのですね? (なるほど)
平凡と言われますが、魔戒騎士にとっては、それもまた難しいことなのかもしれませんね。
魔戒騎士を待つ人がいて、帰るところがある…
カオルちゃん、ちゃんと待っていてあげておくれ~ って切実に思います。

Mie様もぜひ自由気ままに妄想してください。
そして、こっそり教えてもらえると嬉しいです。
【2013/04/05 19:46】
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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